慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
哲学(専門)
担当教員名
石井 雅巳/斎藤  慶典
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス 日吉 共通開講学部 経済学部、法学部でも開講する。
設置年度 2022 授業コード 52201
開講期間 I期 8/8~8/13 曜日・時間等 1~2限 9:00~12:45

授業科目の内容

「東洋」哲学の根本問題 あるいは井筒俊彦

 上記タイトルと同名の拙著をテキストに、哲学の根本問題をめぐって受講者による報告と問題提起、ならびに講師を交えた全員によるディスカッションを以って授業を行ないます。
 参考まで、同書の目次を以下に掲げておきます。

序章  井筒「東洋」哲学
第Ⅰ章 表層/深層
 a) 表層から深層へ
 b) 深層から表層へ
 c) 大地と理性――ロシア的人間
第Ⅱ章 空/無
 a) 「空」の徹底
 b) 空と無
 c) 砂漠と死――ジャック・デリダ
第Ⅲ章 〈いま・ここで=現に〉
 a) 「本質(マーヒーヤ)」と「存在(フウィーヤ)」
 b) 〈いま・ここで=現に〉
 c) 「入鄽垂手(にってんすいしゅ)」

 イスラーム哲学研究の世界的権威である井筒俊彦(1914-1993)は、単にイスラームばかりでなく古代ギリシア、ユダヤ、インド、中国、ロシア、日本など世界的規模にわたる哲学・思想を原語で渉猟し、私たち人類が数千年来営々と積み重ねてきた思考のいわば元型に当たるものを、その「共時的構造化」の操作を通じて取り出し、提示してくれました。
 井筒のこの営為を叩き台に、現代に生きる私たちが取り組むべき新たな問題領域を切り拓こうとしたのが、本講義で取り上げるテキストです。このテキストを、受講者有志10名を募って分担し、まず各自の担当箇所について「報告と問題提起」を行なっていただきます(30分程度)。担当箇所の議論の概略を自らの理解に基づいて改めて提示するのが「報告」で、その箇所について自らの疑問や問題を提起して受講者全員によるディスカッションのための素材を提供するのが「問題提起」です。つづいて、この「報告と問題提起」をうけて、講師二人を交えた受講者全員によるディスカッションを行ないます(70分程度)。
 以上を一回の授業とし、これを毎回の授業で積み重ねてテキスト全編を読破します。
 最後の時間は、講師によるこれまでの議論の振り返りの後、残りの時間一杯を使って論述式の試験答案を作成していただきます。

第1回講義内容
 テキストの「序章 井筒「東洋」哲学」の部分をもとに、講師(斎藤)によるイントロダクションを行ないます(「序章」に先立つ「はじめに」の部分は、各自で目を通しておいてください)。  また、この時間に、「報告と問題提起」の担当者の募集と決定を行ないます。

第2回講義内容
 テキストの「第Ⅰ章 表層/深層」「a) 表層から深層へ」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます(この回の担当者は、事前に何らかの仕方で決めておきます)。

第3回講義内容
 テキストの「第Ⅰ章 表層/深層」「b) 深層から表層へ」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第4回講義内容
 テキストの「第Ⅰ章 表層/深層」「c) 大地と理性――ロシア的人間」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第5回講義内容
 テキストの「第Ⅱ章 空/無」「a) 「空」の徹底」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第6回講義内容
 テキストの「第Ⅱ章 空/無」「b) 空と無」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第7回講義内容
 テキストの「第Ⅱ章 空/無」「c) 砂漠と死――ジャック・デリダ」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第8回講義内容
 テキストの「第Ⅲ章 〈いま・ここで=現に〉」「a) 「本質(マーヒーヤ)」と「存在(フウィーヤ)」」(前半)について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第9回講義内容
 テキストの「第Ⅲ章 〈いま・ここで=現に〉」「a) 「本質(マーヒーヤ)」と「存在(フウィーヤ)」」(後半)について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第10回講義内容
 テキストの「第Ⅲ章 〈いま・ここで=現に〉」「b) 〈いま・ここで=現に〉」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第11回講義内容
 テキストの「第Ⅲ章 〈いま・ここで=現に〉」「c) 「入鄽垂手(にってんすいしゅ)」について、担当者による「報告と問題提起」を行なっていただき、引き続き、講師二人を交えた全員によるディスカッションを行ないます。

第12回講義内容
 講師による総括の後、残りの授業時間一杯を試験問題の論述に充てます。

その他の学習内容
  ・ 毎回の授業には十分な予習と復習をもって取り組む(後述の「受講上の要望」欄を参照)ほか、授業時間内のディスカッションに積極的に参加してください。

成績評価方法

 1) 最後の時間に行なう論述式試験の評価、2) 授業への出席(2/3以上の出席が必要です)、3) 授業への貢献(ディスカッションへの積極的な参加と「報告と問題提起」の担当を含む)の三点を総合して成績とします。
 なお、「報告と問題提起」を担当した諸君には、ボーナス点として10点満点中の2点を加算します。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

 『「東洋」哲学の根本問題 あるいは井筒俊彦』/ 斎藤慶典  講談社  2018

参考文献

 『意味の深みへ――東洋哲学の水位』/ 井筒俊彦  岩波書店  2019
 『意識と本質――精神的東洋を求めて』/ 井筒俊彦  岩波書店  1991
 『哲学がはじまるとき――思考は何/どこに向かうのか』/ 斎藤慶典  筑摩書房  2007
 『危機を生きる――哲学』/ 斎藤慶典  毎日新聞出版  2021

受講上の要望、または受講上の前提条件

 毎回の予習・復習が不可欠です。
 予習として、各日に学習するテキストの該当箇所を事前に読んでおくこと、
 復習として、その日に学んだことのポイントをノートやテキストをもとに整理しておくこと、
 それぞれに、少なくとも60分程度はかかるでしょう。