慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
倫理学特殊
担当教員名
山内 志朗
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 夜間スクーリング
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード 52207
開講期間 10月7日(金)~1月6日(金) 曜日・時間等 金曜日、18:20~20:05

授業科目の内容

現在様々な場面で共感(エンパシー)が話題になっている。同情(シンパシー)は「かわいそうだ」という上から目線の感情的反応であるのに対し、共感(エンパシー)は認知的な反応であり、感情的反応とは異なるという論調の場合が多い。共感は高く評価される場合が多いという風潮に対して、批判的な議論を展開ししたのが、ポール・ブルームの『反共感論』(Against Empathy, 2016)である。邦訳が2017年に刊行されている。この講義では、同情(シンパシー)という概念の思想史的展開を踏まえた上で、20世紀尾初頭に登場した共感(エンパシー)という概念が、短期間に倫理学的重要概念に変容し、その代わりに同情概念の評価が下落していった背景を考えながら、「共感」という概念の功罪について考察したい。

第1回講義内容
ブレイディみかこ氏の『ボクはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)に、簡潔にして要を得たエンパシーの整理が書かれている。その内容を確認し、共感についての一般的理解と問題点を概観する。

第2回講義内容
共感(エンパシー)と同情(シンパシーの違いに考察する。なぜ共感が好意的に評価され、同情の評判が悪いのかを考察する。

第3回講義内容
同情(シンパシー)の歴史について考察する。16世紀に同情(シンパシー)という概念が登場してきて、それがイギリスの道徳学者において展開されていく。その概要を知る。

第4回講義内容
前回の続講。同情(シンパシー)の歴史について考察する。16世紀に同情(シンパシー)という概念が登場してきて、それがイギリスの道徳学者において展開されていく。その概要を知る。今回はヒュームの共感論をアダム・スミスの共感論と対比しながら考察する。

第5回講義内容
ブルームの『反共感論』を章ごとに検討していく。第1章「他者の立場に身を置く」

第6回講義内容
ブルームの『反共感論』を章ごとに検討していく。第2章「共感を解剖する」」

第7回講義内容
ブルームの『反共感論』を章ごとに検討していく。第3章「善きことをなす」

第8回講義内容
ブルームの『反共感論』を章ごとに検討していく。第4章「プライベートな領域」

第9回講義内容
ブルームの『反共感論』を章ごとに検討していく。第5章「暴力と残虐性」

第10回講義内容
ブルームの『反共感論』を章ごとに検討していく。第6章「理性の時代」

第11回講義内容
ブルームの『反共感論』の全体を総括して、マイケル・スロートなど現代の他の倫理学者の共感論との対比を行う。 現代における共感論が、ケアの倫理などにおいてどのように機能するのかなど、様々な観点から考察していきたい。

第12回講義内容
総括

その他の学習内容
  ・課題・レポート
  ・小テスト

成績評価方法

課題・レポートと試験を踏まえる。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

反共感論/ポール・ブルーム 白揚社 2018

参考文献

小さな倫理学入門/山内志朗 慶應義塾大学出版会 2015

受講上の要望、または受講上の前提条件

具体的な問題と直結する話題なので、聴講者による話題提供、ディスカッションも交えていく。積極的に聴講にのぞんでほしい。