科目名 | |||
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教育心理学概論 | |||
担当教員名 | |||
安藤 寿康 | |||
科目設置 | 文学部専門教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 第1類 | 単位 | 2 |
キャンパス | 三田 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2022 | 授業コード | 52225 |
開講期間 | III期 8/22~8/27 | 曜日・時間等 | 1~2限 9:00~12:45 |
この講義では教育心理学のテキストにあげられた標準的な内容をできる限り網羅的に取り上げつつ、教育に対する新しいアプローチである生物学的教育学の姿を描く。
教育は思想や文化の影響を受ける以前に、まず生物学的な現象である。教育という学習形態-他者の学習のために特別な行動をすることでその他者の学習を促進するという社会的相互作用-には進化的基盤があることを示す数々の証拠が、ヒトの発達(模倣、心の理論、ナチュラル・ペダゴジー、ピアジェ、エリクソンの発達理論など)や学習(記憶の構造と機能、社会的学習など)、さらに考古学(石器・土器など道具使用の文化進化など)、文化人類学(狩猟採集民の文化的学習)、脳科学(ミラーニューロン・社会脳・自己制御など)などが提供している。教育は「よく生きる」ためではなく、ただ「生きる」ために必要な生物としての生存戦略なのである。
また学業成績をはじめ、その適性となる知能やパーソナリティには大きな個人差があり、少なからず遺伝の影響を受けていることを行動遺伝学のエビデンスが頑健に示している。どんな子でも努力やモチベーションや教え方次第で優秀になれるという「教育言説」は善意の妄想に過ぎない。しかし適性の個人差によって教育方法の効果や教育内容の向き不向きが異なる。顔が一人ひとり異なるように、一人ひとり異なる遺伝的資質を持って生まれた人間が、他者とともに生きるための知識を学ぶ機会をいかに作りあうかが教育の主要課題である。
このような新しい教育学のビジョンを通して、現代の教育のあり方を考えていきたい。
第1回講義内容
イントロダクションー教育の定義
第2回講義内容
動物の学習とヒトの教育①(学習のメカニズムの進化)
第3回講義内容
動物の学習とヒトの教育②(社会的学習、教育の考古学)
第4回講義内容
教育による学習の発達①(心の理論、社会性の発達)
第5回講義内容
教育による学習の発達②(ピアジェとエリクソンの発達理論)
第6回講義内容
教育における個人差(知能とパーソナリティ、心理測定)
第7回講義内容
個人差の遺伝的基盤(双生児研究と行動遺伝学)
第8回講義内容
適性と教育環境との交互作用(遺伝と環境、才能の発現、ATI)
第9回講義内容
学習の脳神経基盤(知識と脳機能、脳の発達)
第10回講義内容
教育の脳神経基盤(社会脳、メンタライゼーション)
第11回講義内容
教育の生物学からみた学校教育
第12回講義内容
総括
その他の学習内容
・課題・レポート
各回ごとのリアクションペーパーと期末テストで判断する。
プリントを適宜配布する
授業で用いたスライドをプリントまたは電子媒体で配布する
教育心理学/安藤寿康・鹿毛雅治 慶應義塾大学出版会 2013
なぜヒトは学ぶのかー教育を生物学的に考える/安藤寿康 講談社 2018
その他授業内で適宜紹介する
教育心理学は、あなたが通信教育課程という教育環境のなかでまさに行っている学習過程についての心理学的な説明と理解に寄与しなければなりません。自分自身の等身大の出来事を考えるきっかけとなる、身近な学問だと考えながら授業に臨んで下さい。
あり