慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
工業経済論
担当教員名
渋井 康弘
科目設置 経済学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード 62214
開講期間 III期 8/22~8/27 曜日・時間等 3~4限 13:45~17:30

授業科目の内容

 工業が国民経済・世界経済の中で持つ意味を確認し、今日のグローバリゼーションの下で起こっている諸変化の本質を解明します。
 工業が持つ意味を理解するためには、産業革命以来の資本主義経済の展開を踏まえなければなりません。またグローバリゼーションの下での工業部門の諸変化を理解するためには、米国主導の金融自由化や冷戦解体といった歴史的背景も理解しておかねばなりません。それ故、講義の内容は狭い意味での「工業」に特化したものではなく、資本主義経済の歴史的展開を念頭におきながら、その中に工業を位置づけるというものになります。
 

第1回講義内容
「産業革命と工業部門の台頭」  産業革命が資本主義を本格的に確立させたことを論証する。

第2回講義内容
「機械・装置と大量生産」  道具の機械への転化と大量生産の普及との関係を解明する。

第3回講義内容
「資本制生産における労働編成(1)」  単純協業とマニュファクチュア的分業の展開を解明する。

第4回講義内容
「資本制生産における労働編成(2)」  機械制大工業における分業の展開を解明する。

第5回講義内容
「資本主義的蓄積の一般的傾向」  資本の集積・集中と中小資本の残存・新生が両立することを論証する。

第6回講義内容
「産業部門構成の歴史的変化」  農工間の不均等発展と重化学工業化の傾向を、資本主義的蓄積の法則から解明する。

第7回講義内容
「独占的市場構造の成立」  競争の展開が独占を必然化し、独占的市場構造を確立することを論証する。

第8回講義内容
「フォード・システムの技術史的意義」  マニュファクチュア的要素に依存している点にフォード・システムの特徴を見る。

第9回講義内容
「資本蓄積の停滞基調と技術革新(1)」  資本蓄積の停滞を打破しようとする技術革新が、しばしば軍事と結合することを論証する。

第10回講義内容
「資本蓄積の停滞基調と技術革新(2)」  第二次世界大戦が生み出した原子力技術と情報技術が、戦後世界を規定してきたことを解明する。

第11回講義内容
「ME・情報技術と新しい労働編成」  情報技術の工業への利用が、工程別分業を機能別分業に変えつつあることを論証する。

第12回講義内容
「グローバルな独占と21世紀の資本蓄積」  グローバル化の下でグローバルな独占(GAFAなど)が成立しつつあることを概観し、全体を総括する。

その他の学習内容
  ・課外授業

成績評価方法

最終日にレポートを提出してもらいます(レポート100%)。レポートの課題は、皆さんの理解度を確認した上で発表します。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する
 初回の授業で全講義分のプリントを配布します。

参考文献

資本論体系10 現代資本主義/北原勇・鶴田満彦・本間要一郎 有斐閣 2001

受講上の要望、または受講上の前提条件

 講義の性格上、基礎的な経済史の知識を身に付けておくと良いでしょう。
 何よりも大切なのは、現実の経済に関心を持ち、その中に潜む諸問題に目を向けておくことです。新聞記事の背後にある経済の動きを読み込む習慣を身に付け、世界に目を向けていてください。
 提出されたレポートを採点した後に全体講評を行います。