慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
フランス文学
担当教員名
西野 絢子
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 秋期メディア授業
科目種別・類 第3類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード M2215

授業科目の概要

ポール・クローデルと日本演劇
「劇、それは何事かの到来であり、能、それは何者かの到来である。」20世紀フランスの最大の劇詩人クローデルは、大使として大正期の日本に滞在し、その文化に深く親しみ、特に伝統演劇に魅了され、能について上のような名言を残しました。日本の仮面劇・能の本質を見抜いた詩人の鋭い霊感を反映する発言です。異国のカトリック詩人は、どのようにして、仏教の雰囲気が漂う日本の古典的舞台芸術を理解したのでしょうか。能だけではなく、歌舞伎、文楽にも興味を示した彼は、独創的な日本文化論『朝日の中の黒い鳥』にその印象を記しています。講義では、クローデルが日本演劇をどのように解釈し、なぜそのような解釈に至ったかを考察しつつ、また彼がどのようにして日本演劇を自分の創作活動に活かしたのかという問いについて、能の影響を中心に解明していきます。
 まず、来日前のクローデルの作品、次に日本演劇に関する記述、そして日本演劇の観客となった体験後に書かれた作品を分析していきます。西洋人による日本演劇の発見という歴史的コンテクストに位置付けることも試みますので、広い視点から演劇の普遍性について考察することも可能です。フランス文学だけでなく、日本の文化や演劇、そして日仏文化交流に関心のある方も、是非一緒に取り組んでいきましょう。

授業科目の内容

第1回講義内容
イントロダクション・クローデルの生涯と作品について

第2回講義内容
クローデルの文学とは―来日前の作品を中心に(『黄金の頭』、『真昼に分かつ』など)

第3回講義内容
クローデルと日本文化

第4回講義内容
クローデルと日本演劇1 歌舞伎・文楽

第5回講義内容
クローデルと日本演劇2 能①鑑賞日記の分析―『道成寺』『翁』『羽衣』『景清』『隅田川』

第6回講義内容
クローデルと日本演劇3 能②クローデルの能解釈―エッセイ「能」『朝日の中の黒い鳥』所収と10年後の記事

第7回講義内容
クローデルと日本演劇4 能③クローデルの能解釈・西洋における受容の歴史の中での独自性を考察 

第8回講義内容
日本滞在中のクローデル作品①『女と影』『埴輪の国』

第9回講義内容
日本滞在中のクローデル作品②『繻子の靴』

第10回講義内容
離日後のクローデル作品①『クリストファ・コロンブスの書物』

第11回講義内容
離日後のクローデル作品②『火刑台上のジャンヌ・ダルク』

第12回講義内容
離日後のクローデル作品③ 『智慧の饗宴』

第13回講義内容
クローデル演劇の魅力1

第14回講義内容
クローデル演劇の魅力2 

第15回講義内容
まとめ: 日本におけるクローデルの受容 (大正期の日本におけるクローデル)

成績評価方法

科目試験、小テスト、レポートから総合的に評価いたします。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

オンライン授業システム内で配布する

参考文献

『朝日の中の黒い鳥』(内藤高 訳) /ポール・クローデル 講談社学術文庫 講談社 1988年
『黄金の頭』(渡邊守章 訳)『今日のフランス演劇』第4巻/ポール・クローデル 白水社  1967年
『真昼に分かつ』(鈴木力衛・渡邊守章 訳)筑摩世界文学大系第56巻『クローデル・ヴァレリー』/ポール・クローデル 筑摩書房  1976年
『繻子の靴』上・下 (渡邊守章 訳)/ポール・クローデル 岩波文庫  2005年
『クリストファ・コロンブスの書物』(鈴木力衛・山本功 訳)筑摩世界文学大系第56巻『クローデル・ヴァレリー』/ポール・クローデル 筑摩書房  1976年
『火刑台上のジャンヌ・ダルク』(安藤信也・矢代秋雄 訳)『今日のフランス演劇』第4巻/ポール・クローデル 白水社  1967年
Œuvres en prose,/Paul Claudel Gallimard 1965
Théâtre, tome I et II/Paul Claudel Gallimard 2011
Paul Claudel, le nô et la synthèse des arts/Ayako Nishino Classiques Garnier 2013
『新版 能・狂言事典 』/西野 春雄 ・ 羽田 昶 (編集) 平凡社 2011年
『謡曲百番』 (新日本古典文学大系 57)/西野 春雄 (編集) 岩波書店 2017年

受講上の要望、または受講上の前提条件

フランス語の原典を参照することがありますが、フランス語の習得が必須ではありません。
シラバスは大体の目安になります。

課題(レポート・小テスト)

レポート1回、小テスト1回実施。Canvasにて、11月上旬に小テスト受講期間をお知らせし、11月中旬にレポートの課題と締切日をお知らせします。