慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
新・経済法(J)
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EC002005

講義要綱

 本講義は、経済法の中核をなし、その基本的秩序を形成する「独占禁止法」の法構造とその最新の論点を学習することを目的としている。独占禁止法は競争法とも呼ばれており、市場経済の中核をなす法律である。また独占禁止法は、企業法務においても、非常に重要な法分野となっている。カルテル・談合規制のみならず、再販売価格維持行為、優越的地位の濫用規制など日々のビジネスに密接に関係する法規制が多く、きわめて実務に直結した法分野である。他方、経済法(競争法)は、グローバルな色彩が強く、比較法的な視点からの分析が盛んであり、経済法を学ぶことによって、グローバルな法実務の現状を理解することもできる。この経済法に関して、その中核をなす競争法の法原理・法構造の理論的な理解を深め、判例・審決を中心とするケーススタディを通じて、応用可能な知識の習得を目指すよう主体的な学習を期待する。なお、教科書の範囲内において比較法的な分析についても必要となる。



 



 教科書の構成は以下の通りである。



 第1章 独占禁止法の目的・構成と手続



 第2章 私的独占の禁止



 第3章 共同行為の規制



 第4章 結合・集中の規制



 第5章 不公正な取引方法の規制



 第6章 知的財産権と独占禁止法



 第7章 政府規制と独占禁止法



 第8章 国際取引と独占禁止法

テキスト

岸井大太郎・大槻文俊・中川晶比兒・川島富士雄・稗貫俊文『経済法-独占禁止法と競争政策〔第9版補訂〕(有斐閣アルマ)』有斐閣、2022年
※本書〔第9版(2020年)〕で学習を進めている者はそれでもよい。

テキストの読み方

テキストを読む際には、理論的な説明とともに、事例について出来るだけ原文を参照するなどして、事例から考えることを意識してほしい。事例については、公正取引委員会のホームページに主要な判例や審決がデータベース化されているので簡単に閲覧することができる。また図書館で審決集や判例集を調べるという作業も併せて行ってほしい。

履修上の注意

履修に際し、他の特定の科目を事前に履修している必要はない。なお学生的な色彩が強く、特にミクロ経済学、産業組織論との関連性が深いので、講義において適宜、言及する場合がある。また、エネルギー・ガス、情報通信など事業法についても言及する場合がある。

関連科目

事前に履修を必須とする科目はない。ただし、経済法・独占禁止法は、一面において、事業者の経済活動を市場メカニズムの機能を有効に発揮させることによってコントロールするものである。人・法人の経済活動に関わる基本的な法制度(民法、商法、会社法)との関わりが強い。経済活動に対する公的な規制という観点からすれば、憲法や行政法との関係も深い。他方、各種事業法との関係も深い。また経済法の理論的前提のなかには、ミクロ経済学、産業組織論、最近ではゲーム理論の影響も見られる。このような法学分野以外の隣接領域も関連分野となる。

成績評価方法

科目試験による。 

参考文献

金井貴嗣編集『経済法判例・審決百選 第2版 (別冊Jurist)』有斐閣、2017年、ISBN:978-4641115347



小田切 宏之『産業組織論―理論・戦略・政策を学ぶ 』有斐閣、2019年、ISBN:978-4641165533

レポート作成上の注意

レポート作成に際しては、次の4点に注意して調査・執筆することを求める。第一に、課題の内容を十分に理解し、改題に対し適切な解答となるレポートを作成する必要がある。この点、レポートのなかには、課題と無関係な記載になっていて不合格となる場合があるので注意が必要である。第二に、課題は、教科書を読むだけでは執筆できない。調査が必要であり、参考文献や論文そして判例や審決について十分な調査を行っていなければレポートとして評価対象とならないので注意してほしい。第三に、引用のルールの厳守である。教科書や概説書をそのまま引用している場合や、判例の引用なのか、個人の意見なのか、混同している例が多く、疑わしい場合は、レポートの評価対象とならないだけでなく、不正なレポートなる場合があるので特に注意してほしい。第四に、レポートは、自分の意見(結論)とこれに対する理由付けが明確に記載されていなければならない。理由付けこそ法律論文の最大のポイントであるにもかかわらず、この点について無自覚なレポートが多いので注意されたい。