慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
哲学(専門)
担当教員名
高谷  遼平/天本  貴之
科目設置 経済学部専門教育科目 授業形態 秋期週末スクーリング
科目種別・類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 文学部専門教育科目:哲学(専門)
設置年度 2022 授業コード 52261
開講期間 2022年10月15日~10月30日 曜日・時間等 第1週10/15・16、第2週10/22・23、第3週10/29・30、土曜日13:30~17:15、日曜日9:00~12:45

授業科目の内容

 「ことば」は私たちの日常生活においてもっとも身近な存在の一つであり、古来より哲学においても議論されてきた最重要トピックです。本講義では、ことばの「意味」とその「使用」との関係に焦点をあて、私たちが日々無意識に用いていることばの概念の哲学的な広がりを展望し理解することをめざします。
 特に今年度は「日常的な場面でのことば」をテーマに講義します。これまでの言語哲学では、言語やコミュニケーションをある種「理想的な」対象や行為として扱ってきました。しかし、私たちは学校で教えられるような、小綺麗で教科書的な形でのみことばを使うわけではありません。私たちはことばを使うことで、ときには嘘をついて聞き手をだましたり、ときにはでたらめなことを言ったり、また、ときには相手を傷つけてしまうこともあるのです。このようなことは褒められることではないかもしれませんが、ありふれた言語使用でしょう(たとえ自覚的でなかっとしても)。しかし、たとえば「嘘をつくこと」とは実際にはどのようなことなのか、私たちの実感に反してあまり判然としません。「嘘をつくこと」はたんに「正しいことを言わないこと」なのでしょうか?間違っていることを言っていても、嘘をついてはいないこともあるのでしょうか?「嘘をつくこと」や「でたらめを言うこと」、「悪口を言うこと」など、ある意味で非常に身近な「ことば」にまつわる哲学的な問題を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
 第1~4回では、導入的な観点から、ことばの意味に関する言語哲学の標準的な見解を確認します。また、会話やコミュニケーションとはどのようなものだと考えられてきたのかについても概説を行います。それらを踏まえたうえで、第5〜第12回ではより専門的で発展的な内容を扱います。言語哲学のみならず言語学分野の研究も参考にしながら講義をする予定です。

第1回講義内容
導入

第2回講義内容
会話における意味1:ことばの意味、文の意味

第3回講義内容
会話における意味2:会話の前提

第4回講義内容
会話における意味3:言外の意味

第5回講義内容
嘘をつくこと1:本当のことを言わないこと

第6回講義内容
嘘をつくこと2:嘘とミスリード

第7回講義内容
でたらめを言うこと:知ったかぶり、テキトーな発言

第8回講義内容
悪口:罵り、侮蔑、中傷

第9回講義内容
総称文:「政治家は嘘つきだ」ってどんな意味?

第10回講義内容
言語行為1:「約束するよ」で約束してる

第11回講義内容
言語行為2:ことばによって「圧」をかけること

第12回講義内容
総括及び試験

その他の学習内容
  ・課題・レポート
  ・小テスト
  ・小テスト 理解度を確認するため、最終回の試験とは別に2回の授業内小テストを行う予定です。

成績評価方法

2回の小テスト、そして最終回の試験によって総合的に評価します。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

参考文献

悪い言語哲学入門/和泉悠 筑摩書房 2022
言語哲学入門/服部裕幸 勁草書房 2003
言語哲学:入門から中級まで/W.G.ライカン(荒磯・川口・鈴木・峯島訳) 勁草書房 2005
言葉はいかに人を欺くか:嘘、ミスリード、犬笛を読み解く/ジェニファー・M・ソール(小野純一訳) 慶應大学出版会 2021

受講上の要望、または受講上の前提条件

哲学の予備知識は特に必要ありません。また、あらかじめ上記参考文献を読んでおく必要もありません(当然ながら、参考資料に目を通しておくことで理解が深まるということはあるでしょう)。ただし、現代の言語哲学に関する専門的な議論も登場するので、どうしても理解できなかった箇所がある場合は、授業後配布資料などをもとにもう一度よく考え、その後質問することをお勧めします。