慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
英語(リーディング)I
担当教員名
若澤 佑典
科目設置 総合教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 外国語科目/英語 単位 1
キャンパス 日吉 共通開講学部 -
設置年度 2023 授業コード 22305

授業科目の内容

【授業テーマ】
英文リーディングは、未知の世界への扉:
私たちは英語の文章を媒介として、違った時空間へと旅立ち、そこに生きる人々の「ざわめき」に耳を傾けることができます。いわば英文の読者とは、「辞書という地図」を片手にした「旅人」なのです。本授業では歴史ドキュメンタリー/科学文化史のテクストを使って、イギリス18世紀へと足を運び、その賑やかな「ことばの世界」に遊んでみたいと思います。

【到達目標】
①英文の構造的理解
与えられた英文を「とりあえず日本語訳してみるのだけど、なんだか意味が判然としない」とか、「文法構造は説明できるのだけど、要約や注釈となると、途端に頭がフリーズしてしまう」といった、もどかしさを感じている学生さんは多いでしょう。英語の文章は、始めから終わりまで「均質なトーン」で書かれているわけではありません。ポップ・ミュージックやドラマと同じように、文章にもそれぞれ「山場/クライマックス」があり、全体を通底する「サビ」のパート、あるいは「キー・フレーズ」が存在します。したがって、英文を漫然と機械的に和訳するのではなく、各文の機能(「当該箇所は文章全体の中で、どんな役割を担っているのか?」)を考えながら読み進め、全体のコアとなる文を探索し、コアとなる文とそれ以外の文の関係を分析することで、リーディングの精度は格段に向上します。各々の文、それぞれの段落の役割に注目し、文章全体の論理的構造、そして語りの骨組みを見抜いていく、「英文の構造的理解」能力を涵養します。

②能動的なリーディング体験
リーディング活動というと、与えられた文章の「情報整理」だったり、教員に「指示された箇所の訳出」だったりと、受動的なものがイメージされがちです。しかし、英文リーディングの最もおもしろいところは、「この英文を通じて、こんなことを思った/連想した/考えた」と、読み手の一人一人が「創造的な思考」や新たな「言語表現・発信」へと誘われるところでしょう。ペア・ワークやグループ・アクティヴィティを通じて、読むことの「協働性」にフォーカスした「学びの場」をつくっていきます。

第1回講義内容
リーディングをめぐる理論と実践 その1:英文にもそれぞれ個性/特徴/表情がある

第2回講義内容
リーディングをめぐる理論と実践 その2:読み手の「わたし」と書き手の「あなた」、その間に橋をかける

第3回講義内容
英文の世界を「歴史」と紐づける:イギリス18世紀とはどんなところか?

第4回講義内容
英文のエレメントたち:タイトルから考える・想像する+登場人物たちの関係を図表化する

第5回講義内容
英文の世界を「地理」と紐づける:バーミンガムってどこ?

第6回講義内容
英文のエレメントたち:文章も自己紹介も「語り始め」が肝心

第7回講義内容
英文の世界を「美術」と紐づける:光と闇のイギリス18世紀絵画

第8回講義内容
英文のエレメントたち:目次は「文章の骨格」だ

第9回講義内容
英文の世界を「体育」と紐づける:18世紀の人々は散歩がお好き

第10回講義内容
英文のエレメントたち:とにもかくにも、英文の最後にたどり着け、そして冒頭に戻って振り返るんだ

第11回講義内容
英文の世界を「図画工作」と紐づける:アイディアを「モノ」として形にすること

第12回講義内容
総括 総合知としての「文」学、日常生活へと投げ入れられた「読む」行為 (履修学生によるプロジェクト報告・創作発表を含む)

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

①授業内アクティヴィティへの取り組み 50%
②授業に関する事前/事後課題(の提出状況および内容的パフォーマンス) 50%
*本授業は「最終回に筆記試験の一発勝負」で成績評価を行うのではなく、毎回こまめにリーディング課題を出し、その内容について授業内で報告やアクティヴィティを行ってもらうことで、リーディング能力の涵養を目指し、そのプロセスと成果を成績評価の対象とします。事前および事後学習の課題は、本文要約や語彙のマッピング、英文サイトの探索といったオーソドックスなものから、英文から連想するテーマの自由作文(日本語)や、本文内容の挿絵/映像化を考えてみるといった創作的内容・企画発案といった「あたまの体操」も含みます。さまざまな思考プロセス、表現回路、日常生活のなかの手がかりを使いながら、読むという行為が持つポテンシャリティを顕在化させ、学生のみなさん一人一人に身に付けてもらいます。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する
Jenny Uglow, The Lunar Men: The Friends Who Made the Future (2002)より、通信教育課程の英語授業に適した箇所を抜粋し、コピーを配布します。教科書購入の必要はありません。また、テクスト理解に必要な歴史・文化背景については、担当講師が授業内で解説するので、事前予習で英文内容が理解できなくても不安に思わず、授業にお越しください。

参考文献

プリントを適宜配布する
履修者の興味関心や英語の学習状況に併せて、補助教材を配ったり、参考資料となるものを提示します。イギリス18世紀の人々に興味を持ったら、関連する英語圏の博物館・ギャラリーのウェブサイトを訪れるのもいいでしょう。
①イギリス文化、とりわけデザインやモノの展示が充実したVictoria and Albert Museum
http://www.vam.ac.uk/page/0-9/18th-century/
②イギリス史を彩る人々の肖像画が見られるNational Portrait Gallery
https://www.npg.org.uk/collections/

受講上の要望、または受講上の前提条件

①英語のことば一つ一つに、それぞれ歴史があり、それを使う人々の「生活の息づかい」が隠れています。英文を単なる情報の総体として扱うのではなく、その言葉が躍動する文化・社会と関連付けながら、5~10頁程度のまとまりをもった文章を読み解き、さらには言語表現や創造的応答といったアウトプットへと接続する授業です。おおむね授業前の予習に1~2時間程度、授業後の復習に1~2時間程度が必要になると思われます。また、英文世界の探検には「辞書」が欠かせません。学習時、および授業参加時には、電子辞書(あるいは好みにあわせて紙の辞書)をご持参・ご活用ください。
②せっかく未知の英文を一緒に読むのだから、そこで生まれた感情や思考を「かたちにする」プロセスも、「読むことの一部」なのだと、ぜひ実感してもらいたいです。一方的に教員側で講義をするのではなく、教員と学生、そして履修者同士の相互応答を重視したクラス運営を行います。ペア・ワークやグループ・アクティヴィティを毎回取り入れるので、ぜひ楽しみつつ、クラスメイトとの相互理解を深めながら英文を読んでいきましょう。「こんなことも英語の授業でやるんだ」とビックリされるかもしれませんが、「総合知としての英文リーディング」の名のもとに、さまざまなトピック/活動を「英文読解」に関連付けていきます。
③アウトプット機会が多い授業ですが、みんなの前で発言する際の「とまどい」や、意見が上手くまとまらない際の「沈黙」などを、「創造的な瞬間」として大事にしていきます。必ずしも流暢に話したり、明瞭なプレゼンテーションができなくとも、落ち込まなくて大丈夫です。むしろ、コミュニケーションが苦手な学生さんたちが、自分なりの表現回路、クラスメイトとの協働方法を確立する場になればと思っています。失敗や混沌は、新たな創造に向かうための素材になります。ぜひ臆せず、どんどん、能産的な失敗をして、そこから学んでください。