科目名 | |||
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哲学史 | |||
担当教員名 | |||
郷家 祐海/豊田 泰淳 | |||
科目設置 | 文学部専門教育科目 | 授業形態 | 夜間スクーリング |
科目種別・類 | 第1類 | 単位 | 2 |
キャンパス | 三田 | 共通開講学部 | 経済学部、法学部でも開講する。 |
設置年度 | 2023 | 授業コード | 52304 |
本講義は、イデア・形相という古代ギリシャ哲学由来の概念を取り扱う。プラトン的イデア及びアリストテレス的形相は、世界の成り立ちを説明する概念として哲学史上最重要といえる位置付けを与えられてきた。その一方で、経験則や実験からは導出することのできないイデア・形相の内実を巡っては、諸哲学者間の見解が一致を見ることは殆どなく、ときにその存在自体が独断的な構想の産物として拒絶される場合もあった。とりわけ、存在論的かつ客観的に世界を成立させる要因としてイデア・形相といった非物質的な要素を持ち出すことに対する直観的な違和感は、現代人の大多数にも共有されているかもしれない。しかしながら、哲学史上提出されてきた優れたアイディアを考慮に入れるとき、現代に生きる我々が理解している限りの非物質的な領域が、本来あるべき姿よりも矮小化された範囲を示しているという可能性もまた指摘されうるのである。哲学的説明においてイデア・形相を持ち出すことがどこまで有効性を有するかは、そうした概念自体の内実の再検討及びそれらに対する批判の妥当性を検証した上で取り組むべき未決の課題である。
こうした哲学史上の評価の揺らぎを前にして、それを異なる時代・文化圏が有する「常識」同士のズレとして処理をする、あるいは一方の「常識」へと還元するかたちで解釈するのではなく、あくまで当事者的な価値に即して再構成しつつ理解を試みることは重要な哲学的営為の一つである。哲学史を発展的に捉えるならば、古代ギリシャ哲学に淵源するこれらの概念は、既に論争の上で乗り越えられた「不要」な過去の遺物かもしれない。たしかに、そうした評価に抗し、イデア・形相的な発想の価値を再発見しつつ、現代的な仕方で蘇らせた偉業が存在することもまた事実である。しかしながら、そうした営みとは独立に、それらの概念を駆使して思索を深めた当事者たちの理解に我々が歩み寄るという道筋は常に残されていなければならないだろう。
本講義は、哲学史上の最重要概念であるイデア・形相というテーマを軸として、既に我々の「常識」の内部では理解しきれなくなった概念の理解に迫ることをねらいとする。その方途は、彼らが残したテクストを前にして、同じ目線で我々もまた思索を行うことでしかあり得ない。実際にイデアや形相を論じた哲学者たちのテクストを丹念に追うことで、それらの概念が持つ彼らにとっての内在的価値を発見することが本講義の目標である。
第1回~第6回にあたる前半(郷家担当)では、プラトンとアリストテレスを中心に、イデア・形相という概念が成立した哲学的文脈を中心的に取り扱う。
第7回~第12回にあたる前半(豊田担当)では、アリストテレス以後にイデア・形相という概念が辿った哲学史的発展の道筋を辿る。
第1回講義内容
前半への導入
第2回講義内容
プラトン(1)
第3回講義内容
プラトン(2)
第4回講義内容
アリストテレス(1)
第5回講義内容
アリストテレス(2)
第6回講義内容
総括
第7回講義内容
後半への導入
第8回講義内容
ストア派・エピクロス派
第9回講義内容
初期ペリパトス派
第10回講義内容
新プラトン主義
第11回講義内容
その後の展開(イスラーム、キリスト教圏)
第12回講義内容
総括
その他の学習内容
・必要に応じて、成績評価とは関わらないリアクションペーパーを配布することがある。
最終回授業時の授業内試験による。
プリントを適宜配布する
『ギリシア哲学史』/納富信留 筑摩書房 2021
『古代ギリシア・ローマの哲学 ケンブリッジ・コンパニオン』/D.セドレー編(内山勝利監訳) 京都大学学術出版会 2009
『ヘレニズム哲学 ストア派、エピクロス派、懐疑派』/A.A.ロング(金山弥平訳) 京都大学学術出版会 2003
『新プラトン主義を学ぶ人のために』/水地宗明/山口義久/堀江聡編 世界思想社 2014
受講にあたって特別な予備知識は必要としません。
配布資料や参考文献を適宜参照しつつ、毎回の授業内容を復習してください。