科目名 | |||
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ドイツ文学研究 | |||
担当教員名 | |||
西尾 宇広 | |||
科目設置 | 文学部専門教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 単位 | 2 | |
キャンパス | 日吉 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2023 | 授業コード | 52353 |
文学とは、現実世界をいっとき離れてフィクションの世界に赴き、そこで羽をのばすための束の間の手段――というだけのものではありません。むしろ文学は、そこに描写された内容においても、それが作品として世の中に流通する形態においても、現実世界ときわめて密接に結びついており、現在あるいは過去の(場合によっては見知らぬ土地の)社会や文化を眺めるための、恰好のレンズとなるメディアです。
この授業では、主として18世紀と19世紀にドイツ語で書かれた文学を起点として、同時代の社会と文化にさまざまな角度から光をあてていきます。同時代の状況を知ることで可能になる文学の新しい読み方がある一方で、文学が現実世界の単純な反映物ではなく、作者や受容者の多彩な「願望」を取り込みながら成立するものであるからこそ、文学というレンズを通すことではじめて見えてくる同時代の相貌もあるはずです。「ドイツ」という国がまだ地図上には存在していなかった18世紀から、1871年のドイツ帝国成立にいたるまで、現在「ドイツ」と呼ばれている地域の文化と社会は急激かつ巨大な変化を経験してきました。一般に「近代化」と言われるその過程のなかで生み出されたさまざまな制度や価値観は、「ポストモダン」が叫ばれて久しい現代の私たちにとってもなお、決して無縁なものではなく、それどころか、気づかぬところでいまだに強く私たちの感覚や思考を規定し続けています。そうした「近代化」の渦中にあった当時の文学を読み解きながら、近代ドイツが辿った歴史の意味について、ひいては、現在にまで連綿と続く近代社会が抱える文化的構造について、考えていきたいと思います。
第1回講義内容
イントロダクション:ドイツ/文学とは何か?
第2回講義内容
国語と教育:文学の政治性をめぐって
第3回講義内容
市民社会とジェンダー(1):理論的・歴史的諸前提
第4回講義内容
市民社会とジェンダー(2):市民悲劇を中心に
第5回講義内容
市民社会とジェンダー(3):女性作家の系譜
第6回講義内容
市民社会と公共圏:「公共圏」とは何か?
第7回講義内容
市民社会と文芸的公共圏(1):サロン、読書革命
第8回講義内容
市民社会と文芸的公共圏(2):演劇
第9回講義内容
市民社会と政治的公共圏:ジャーナリズムと「世論」の誕生
第10回講義内容
文学とナショナリズム(1):フランス革命
第11回講義内容
文学とナショナリズム(2):ナポレオン戦争
第12回講義内容
文学とナショナリズム(3):「ユダヤ人問題」
その他の学習内容
・課題・レポート
複数回のレポートの内容で判断します。
プリントを適宜配布する
プリントを適宜配布する
授業中に適宜ご案内します。
授業時にところどころドイツ語表記が出てきますが、ドイツ語の知識は前提としていないので安心してください。「ドイツ」に関心がある方や「文学」に関心がある方はもちろん、そのいずれにも関心がなかったとしても、文化的な現象から政治的・社会的な問題を考えることに関心がある方の受講を歓迎します。