慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
日本史特殊
担当教員名
前田 廉孝
科目設置 経済学部専門教育科目 授業形態 夜間スクーリング
科目種別・類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 文学部専門教育科目:日本史特殊
設置年度 2023 授業コード 52331

授業科目の内容

本科目は「データから見る近代日本経済の歩み」をテーマとし,幕末開港期から高度経済成長期に至る近代日本経済の歴史を講義する。豊富な史料のほかに数量データの利用が可能な近代経済史研究では,定性分析(qualitative analysis)・定量分析(quantitative analysis)の併用と定性的史料の数量化が進展し,自然科学を含む多様なディシプリンから参入した研究者による国際的協業が進められている。それゆえに,近年では経済史学の領域における国際学術誌掲載論文のほぼ全てが計量経済学的手法をコアとした定量分析を利用し,定性分析のみに依拠した学術論文は消滅しつつある。日本国内の学術界は依然として定性分析を主とするが,本科目は上記の国際的な学術潮流を重視した内容で構成される。具体的には,マクロ経済統計のほかに財政・貿易・金融統計,さらには企業など個別経済主体のミクロ的な統計まで駆使し,数量データによって近代日本経済の歩みを描写する。こうした内容の講義より(1)商品・金融市場の規模的拡大・質的変化と政治体制及び政策の変遷を相互規定的に把握すること,(2)日本・諸外国間における政治・外交・経済面の連関を理解することが可能となろう。そして,近代日本における社会経済動向の推移を最新の研究成果及び豊富なデータ・史料より多面的な視座に基づいて観察できるようになるであろう。

第1回講義内容
近代日本のマクロ的動態

第2回講義内容
幕末開港と居留地貿易

第3回講義内容
明治政府の成立とアジア的国際関係

第4回講義内容
近代経済成長と政策的基盤

第5回講義内容
「帝国日本」の成立と対外関係

第6回講義内容
第1次大戦期の国際収支と重化学工業化

第7回講義内容
1920年代の政党政治と金解禁

第8回講義内容
昭和恐慌と「高橋財政」

第9回講義内容
戦間期の貿易と資本移動

第10回講義内容
戦時統制と戦後改革

第11回講義内容
高度経済成長と政府・企業

第12回講義内容
試験・総括

その他の学習内容
  ・小テスト
  ・講義最終回に実施する。

成績評価方法

試験100%

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

受講上の要望、または受講上の前提条件

 本科目は多様な数量データを利用し,ハンドアウトには膨大なグラフが示される。経済学・ファイナンス・数学・統計学の知識は必ずしも必須としないが,数字を苦手とする場合は履修の可否を慎重に判断されたい。
 本科目のハンドアウト(pdfファイル)は事前にオンラインストレージから配布し,講義時間中はスマートフォンを含むあらゆるデジタルデバイスの使用を許可する。したがって,講義時間中でも各自のデバイスからデータにアクセスでき,ハンドアウトのプリントアウトは必須ではない。原則として初回講義時までに全回のハンドアウトをアップロードし,予習に十分な時間を確保できるように配慮する。準備学習等は以下の要領で実施されたい。
【予習(各回60分程度)】
(1)ハンドアウトに示された全てのデータ(グラフ)を読み取り,データの特性と変動傾向を検討する。
(2)データの変動要因を事前に検討し,解釈を試みる。
【復習(各回90分程度)】
(1)講義内容を振り返り,講義で示されたデータの解釈を予習段階における自らの解釈と比較する。
(2)必要に応じ,各回ハンドアウト末尾記載の参考文献一覧を利用しながら疑問点の解消を目指す。