科目名 | |||
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社会調査 | |||
科目設置 | 文学部専門教育科目 | 授業形態 | テキスト科目 |
科目種別・類 | 第1類 | 単位 | 2 |
キャンパス | - | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2024 | 授業コード | T0EA100601 |
この科目では社会調査のなかでも質的調査法、特にライフストーリー・インタビューの実践をテーマとします。質的調査法とは、記憶や感情のように量的には捉えにくい人間の質的な経験を対象とする調査の総称です。個人というミクロな存在に焦点を定めて、たとえばインタビュー調査のようにライフストーリーを分析・解釈することを通して社会の理解を目指します。従来の実証的な社会調査の実践をふまえて、近年では語り手と聞き手の相互行為としてインタビューを捉える手法が広まりをみせています。この調査法は、他者との対話をてがかりとする点に特徴があります。言うは易しの方法論に、個々の調査者はどのように取り組んできたのでしょうか。テキストと参考文献の解釈を通して学びます。
藤田結子・北村文(編)『現代エスノグラフィー 新しいフィールドワークの理論と実践』新曜社、2013年
この本には「新しいフィールドワークの理論と実践」というサブタイトルが付されています。本書で紹介される調査の認識論や方法論、個別的なテーマが、どのような意味で「新しい」のかを意識して読む必要があります。たとえば、第1部では「現代エスノグラフィーの展開」として「自己再帰性」「ポジショナリティ」「表象の政治」といった哲学の用語が紹介されています。これらは現代的な社会問題について調査をする上で共通して検討される概念です。こうした概念を学ぶことが、どうして「社会調査」を実践するうえで重要になるのかを考えながら読みましょう。具体的には他者の語りを聞くことと自己の成り立ちの関係というテーマが中心的な問題になります。また、各ページの下段には、関連する図書などが紹介されていますので、テキストの読解だけでは理解が追いつかない場合は参考文献とあわせて必要に応じて参照してください。
これまでの人生を生きてきた経験を振り返りなが読むことを推奨します。たとえば「ポジショナリティ」という用語の解説を読む時には、これまでの生活における差別や偏見にかかわる経験を重ね合わせてください。生活にねざした実感と感性にもとづいて専門的な用語を理解するようにこころがけ、専門用語を自分の言葉として使いこなせるように取り組んでください。この本は、社会調査の知識を習得するためのものではなく、質的調査の作品を読み解くためのガイドブックです。
社会的な出来事をテーマとする質的調査の実施をレポート課題とします。調査実施とレポート作成に際して、テキストの第四部「フィールドで出会う問題」を熟読し、調査倫理について十分に考慮すること。この点も含めて成績評価の対象になります。
社会学史、教育社会学、都市社会学、社会学(専門)、社会学特殊など。
レポートの合格を前提として科目試験によって評価する。
吉原直樹『震災復興の地域社会学 大熊町の10年』白水社、2021年
渡辺一枝『ふくしま ひとの物語』新日本出版社、2021年
高橋哲哉『犠牲のシステム』集英社新書、2012年
以下の点に注意してレポートを作成すること
・五感をつかって調査に取り組む。
・調査倫理についてテキストを熟読して十分に考慮する。
・文中でテキストや参考文献を引用する際は、出典(著者名、出版年、ページ数)を明記する。
・その際、テキストや参考文献の内容を要約するのではなく、内容を解釈して自分の言葉で論述する。
・字数は3600字以上、4000字以内。