慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
メディア社会心理学
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2024 授業コード T0EA100701

講義要綱

本講義は、様々なメディア(マスメディア、ソーシャルメディアなど)やメディアコンテンツ(映画、ドラマ、動画、広告、ニュース、ゲームなど)がもたらすポジティブな社会心理的影響について、豊富な実証例を挙げながら、関連する理論や概念について解説していく。メディアの影響に関してははこれまで、社会心理学の観点から、ジェンダーや人種的ステレオタイプの形成、攻撃性・物質主義の助長など、ネガティブな影響が注目されてきたが、本講義では、21世紀に入り、活性化し始めたメディアの「善良な」影響についての研究に焦点を当て、メディアの利用が個人のウェルビーイングや向社会的態度の向上、教育や訓練による自己啓発、社会問題への関与などをもたらすメカニズムや関連要因について学習していく。

指定教科書の構成は、以下のとおりである。

第1章 ポジティブメディア心理学はどういう学問か
第2章 メディア心理学の主要な理論と概念
第3章 ポジティブ心理学の主要な理論と概念
第4章 ヘドニックなエンターテインメント
第5章 有意義なエンターテインメント
第6章 自己超越的なエンターテインメント
第7章 ソーシャルメディア
第8章 デジタルゲームと仮想現実
第9章 ポジティブなニュースとノンフィクション
第10章 ナラティブ説得
第11章 子どものための教育的・向社会的メディア
第12章 個人差と文化差
第13章 デジタル時代のポジティブメディアリテラシー

テキスト

アーサー・A・レイニーほか著、李光鎬監訳(2023)『ポジティブメディア心理学入門』新曜社。

テキストの読み方

テキストは、基本的には第1章から章の順番にしたがって読み進んでいくことが望ましい。特に、第1章から第3章は、メディア心理学およびポジティブ心理学の基本的な考え方や研究方法、主な理論と概念について紹介しており、後の章で頻繁に参照されるので、他の章を読む前に読んでおく必要がある。第4章から第11章までは、興味のあるメディアコンテンツに関する内容を先に読んでも問題ない。第12章は、以前の章で紹介された研究の全体にかかわる議論であり、第13章も、以前の章の議論を踏まえたポジティブなメディア利用の実践に関する話なので、最後に読むことをお勧めする。
各章を読む際には、まず、その章の内容に関連した主要な概念と理論を十分に理解することに重点をおいてほしい。そして、各章で挙げられている実証例を参考に、そのような概念や理論を各自のメディア利用経験に適用した場合、どのようなことが説明でき、どのようなことが疑問として残るのかを意識しながら読み進めてもらいたい。そして最終的に、疑問として残った部分はどのように説明できるのか、自分なりの仮説を立てられるよう、社会心理学やメディア心理学の様々な理論を応用したり、まだ考えられていない新しい要因を検討して、レポートの作成に結びつけてもらいたい。

履修上の注意

本講義は、私たちの身近な日常におけるメディア利用を対象としているため、比較的取り組みやすい内容となっているが、心理学や社会心理学、社会学研究法や社会統計についての知識があれば、さらに理解しやすく、履修しやすいので、関連科目を先行および並行履修したほうが望ましい。

関連科目

社会心理学、社会調査、心理学、心理・教育統計学

成績評価方法

科目試験により評価する。

参考文献

李光鎬・渋谷明子 編著(2021). 『メディア・オーディエンスの社会心理学 改訂版』, 新曜社.

レポート作成上の注意

・内容を把握しやすいよう、適切に章・節(さらにはそれよりも下位の項目)を設け、それぞれの章や節などに適切な題目や見出しをつけること。
・参照した文献や資料の引用を徹底すること。
・引用の仕方については、日本社会心理学会の執筆要項に従うこと。
・レポートの文末に文字数を明記すること。