慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
社会心理学
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2024 授業コード T0EA007003

講義要綱

テキストは大きく2部構成となっています。第1部は「社会を作り、その中で暮らす」をテーマに、配偶と家族、依頼と説得、利他と協力、リスク、キャリア形成、健康といったトピックについて扱っています。第2部は「影響しあい、よりよい社会を目指す」をテーマに、社会的勢力と認知、メディア、世論調査・ランキング、普及・流行、環境配慮、防災といったトピックについて扱っています。どちらかといえば第1部は社会における個人の意識や行動を扱い、第2部は社会からの影響や社会的課題を扱っていますが、この2つは相互に関連しあっています。社会における様々な現象や課題を本テキストがすべてカバーしている訳でなく、主なトピックを選んで社会心理学的に解説したものですが、全体を一通り読むことにより、社会現象の理解や課題の解決について社会心理学からどのようにアプローチしたらよいか学習できるようになっています。また、同じ理論が複数の章で何度も登場することがあります。このことから1つの理論が様々な現象の理解に役立つことも理解できるでしょう。テキストで扱われているトピックを起点として、各自が日常生活を送る中で関心をもつ様々な出来事(現象)について、テキストで説明されているのと同様に社会心理学の知見を用いて理解・考察することができるようにすることが、本科目の目的です。レポートもその学習成果を確認するように出題されています。

テキストの読み方

 テキストの序文および目次を読んだ上で、全12章を一通り読んでみてください。最初はあまり細部にはこだわらず、関心のある章から読んでいってもよいでしょう。全体を読み進めていくと、複数の章の間で同じ理論が出てくることもあるように、各章相互の関連性に気づけるはずです。ページをめくりながらトピック同士のつながりを意識し、社会心理学の理論で説明される様々な現象を各自の日常生活で経験する具体例に置き換えて考えてみてください。この時点で興味をもった参考書も活用し、現実の世界で起きている様々な出来事の原因や課題の解決方法について、先行研究(テキストや参考書で紹介されている理論や考え方)で考察できるようにすることを目指してください(レポート課題では、それが求められています)。理論を単に理論のまま理解しようとするのではなく、常に身の回りで起こっている出来事をイメージしながら、その理論でその出来事がどのように説明できるのかを考えてみてください。



 各章の内容を一通り学習したら、章末の演習問題を解いてみてください(実際に書いてみてください)。課題の内容は、本文で説明された内容の理解に関すること、本文の内容を現実の社会で起こっていることを通じて理解すること、の2つに大きく分けられます。うまく解答が思い浮かばないのであれば、もう一度、上記のテキストの読み方に従って、再度学習をしてください。



 

履修上の注意

テキスト以外に社会心理学関係の参考書を少なくとも1冊は選び、読んでみてください。参考文献に挙がっている以外の、入門・概論的なものでも、興味のある社会心理学の各論のものでも構いません。ただし、巻末に引用・参考文献が掲載されている学術書を選んでください。

関連科目

心理学A、心理学B

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

※この文献リストは、テキストの「引用文献」の様式(APAスタイル)に準拠して記載しています。本科目においては、レポートで引用文献・参考文献として挙げる際も同様の様式で記してください。第一著者のアルファベット順に並んでいます。


安藤香織・杉浦淳吉(2024) 新版 暮らしの中の社会心理学 ナカニシヤ出版

亀田達也・村田光二(著)(2010)複雑さに挑む社会心理学:適応エージェントとしての人間(改訂版)有斐閣
北村英哉・大坪庸介(2012)進化と感情から解き明かす社会心理学 有斐閣

廣中直行(2023)  心理学スタディメイト:「心」との新しい出会いのために 有斐閣  

池田謙一・唐沢穣・工藤恵理子・村本由紀子(2019)社会心理学(補訂版) 有斐閣.

スミス, J.R.・ハスラム, S.A.(編著)/樋口匡貴・藤島喜嗣(監訳)(2017)  社会心理学・再入門─ブレークスルーを生んだ12の研究 新曜社



他に、サイエンス社の「セレクション社会心理学」シリーズ、北大路書房の「21世紀の社会心理学」シリーズは、社会心理学が対象とする個別のトピックについての研究が詳しく紹介されています。



 

レポート作成上の注意




日常生活や社会でみられる様々な課題について、社会心理学によって説明できることを目標とします。したがって、日ごろから対人関係、集団や社会の問題について目をむけ、そうした問題がなぜ生じるのかを考えてみるようにしてください。そうした人々の行動は、とらえ方によって複数の見方ができます。複数の理論やモデル、効果で説明されるというのはある行動が多面的に捉えられるということです。レポートを作成する際は、「取り上げる事例の紹介」と「事例に関する社会心理学的解釈」は明確に区別できるようにしてください。また、社会心理学の理論で説明する際に、テキスト(あるいは参考書)で過去の研究内容が紹介されているとしても、その元々の研究を特定すること(つまり、誰が何年に発表した研究か)も設問上の重要な意図です。そのために設問は(1)、(2)そして(3)と設問を分けて設定してあります。設問(2)では、特定の章のみを学習して一つの理論等で説明することで課題を作成するのではなく、複数の章から理論等を引用し、複数(2つ以上)の観点から現象を説明してください。このことは各自が着目する事例を説明する概念を通じて、テキストの複数の章が関連していることを理解するという意図があります。(1)と(2)については、指定された文字数の範囲内で説明してください。(3)については、後述の引用文献の書き方をよく読んで、取り組んでください。

 

 テキストや参考書の中には、社会心理学の理論によって説明される具体例が掲載されていることもあります。そうした例を使用する際には、必ず引用箇所を明示し、それに類似した自分が経験した事例についても理論的に説明するようにしてください。インターネットで知識を得る場合も同様です。インターネットの活用も大事なことですが、出典を明示した上で引用は最小限にとどめ、必ず自分自身のコメントをつけるなど考察の材料となるようにしてください。この課題を考えるにあたり、社会心理学以外の参考書を用いることもできますが、その場合も社会心理学的な考察を必ず加えてください。中には、現実の社会的問題について、私見を述べるような内容も見受けられますが、私見を述べる場ではありません。あくまで社会心理学の知見を用いて説明することが課題の目的です。

 

 本文中で文献を引用する場合には,既述のように、本科目のテキスト『社会心理学』や参考書をオリジナルの研究の紹介として引用するのではなく、テキストにおいてどのように先行研究が引用されているのかを注意深く参照し(例えば,「フェスティンガーによれば(Festinger, 1957)」とか,「山岸(1990)は…」のように),テキスト本文の記載の仕方に倣って、レポートの本文中で先行研究を引用してください。

 

文献リストの書き方は様々な様式があります。その中でも、本科目の文献リストは心理学において世界的な標準スタイルである「APA(アメリカ心理学会)スタイル」を採用します。引用文献は、本文中で参照している文献を全て過不足なく掲載してください。参考文献(本文中で引用しておらず、単に参考した文献)があれば、引用文献とは別に記してください。もちろん、原典を読んで引用する分には、それを引用文献として挙げてください。

 

 本来ならば、テキスト等に紹介されているオリジナルの先行研究を引用する際には、その原典を実際に読むべきところですが、本レポートに限っては、(いわゆる「孫引き」でよいので)各文献の末尾に、それがテキスト(あるいは参考書の)何ページに説明されているかを示せばよいこととします。それは、本課題においては、引用する研究が、誰が何年に著したものかを特定することに重点をおいているからです。例えば、「認知的不協和理論」という1957年に発表された研究が2019年に刊行されたテキストに載っていても、それは2019年に発表された研究ではなく、1957年にFestingerによって著されたものであるということを理解しておかなければなりません。

 

 引用文献の書き方は、テキストの各章末にある引用文献の書き方に倣ってください。本文でどのように引用され、それが引用文献のリストにどのように記載されているのか、丁寧にみていくことも、社会心理学の学習の上で大事なことです。以下の記載例にあるように、引用文献のリストには,テキストのどこを参照したのかを付記した上で,オリジナルの研究を挙げるようにしてください。どんな研究者がいつ行った研究なのか、本文中でオリジナルの研究を参照することでレポートの読み手にとってそれが理解できるような書き方を身につけるようにしてください。適宜、参考書から同様に引用して構いません。

 

 

引用文献(記載例)

 

Festinger, L.  (1957)  A theory of cognitive dissonance. Row Peterson & Company. (末永俊郎監訳『認知的不協和の理論』誠心書房、1965) (テキスト『社会心理学』第12章 p.187より)

Ross, L. (1977) The intuitive psychologist and his shortcomings: Distortions in the Attribution Process. In Berkowitz, L. (Ed.) Advances in Experimental Social Psychology, Vol.10. NY: Academic Press. Pp.73-200.(テキスト『社会心理学』第6章 p.88より)

山岸俊男 (1990) 社会的ジレンマの仕組み-「自分1人ぐらいの心理」の招くもの サイエンス社(テキスト『社会心理学』第11章 p.173より)

 

※テキスト『社会心理学』の本文中で引用されている研究(上記の例でいえば、Ross(1977)の「根本的な帰属の誤り」)をレポートで引用したら、各章末にある引用文献のリストでその出典が何であるかを確認し、設問(3)の解答として、(上記のように)テキストの様式と同様に記載し、それが第何章の何ページかを付記してください。引用文献はアルファベット順で、各文献の2行目を字下げ(インデント)してください。