慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
法学概論(L)
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2024 授業コード T0EA099902

講義要綱

 「法学概論」は、文学部および経済学部の専門教育科目として開講されるが、学習の目的とするところは、法律学の基礎的事項についての知見を掌中にすることにある。今後の日常生活で法との接点を持たなければならない状況が生じた際、そこで得た知識を生かすこと、本講義を通じて法律学への興味が芽ばえ、さらに多くの法分野への取り組みを試みる「きっかけ」となる気持ちが生ずること、新たに修得した異なる分野に関する知識を、自らが専攻する文学・経済学・商学のより深い理解のための拠りどころとすること、いずれも本講義の目指す主旨に叶うものである。そうした意味で当該学科目の位置づけは、まさに「入門講座」の一語に尽きよう。

テキスト

永井和之・森光[編]『法学入門 第4版』中央経済社、2023年。

テキストの読み方

 さて、それがために、皆さんに提示するテキストは、平易な文章で綴られ丁寧な説明により要点の理解が可能であるよう心掛けて執筆されたものである。もちろん初学者にとっては、それでさえも目の前に広がる未知の世界が、得体の知れない茫漠たるものに映るのは、むしろ当然であろう。しかし、まず第一歩を踏み出さないことには、何も始まらない。そこで学習をする、つまりテキストを読み進むために二つの提案をしておきたいと思う。
 まず第一は、ひとたびテキストを読み始めたら、自分のできる範囲で分量・日程の予定を組み、冒頭から末尾までなるべく連続した期間のなかで、必ず順を逐って読み切ることを勧めたい。費やす期間はあまり長くないこと、毎日とはいわないまでも前回の記憶の途切れない程度の連続性が必要である。また、読み方は、多少乱暴な表現と受け取られるかも知れないが、とにかく「読破通読」を目標に遮二無二に読む、途中いささか理解に苦しむ箇所があっても、それはそれとして、決して章や一文の飛ばし読みをせず、最終ページにたどり着く姿勢が肝要である。
 第二は、テキストを読み進める際に、まずその内容の国語的理解に努めること、すなわち個々の項目についての専門性を主眼とする細密な理解は二次的なものとし、そこに書かれている「日本語」の内容を正確に読み解くことに力を注いで欲しい。用いられた漢字や比喩の意味、主語・述語や文章の構造への誤りない把握は、いかなるジャンルのものであれ日本語による著作を受容する第一歩である。そこで、テキスト読了に向けて日本文の文意文脈を正しく捉えるための道具として、常に国語辞典や漢和辞典を座右に置き、手間を厭わず活用して欲しい。確かに法律学の世界に特有の専門用語の意味が正しく捉えられていないと、入門書とはいえ理解に齟齬を生じる場合もおき得るリスクは否定しないが、そうした点については、テキストの中にも解決の糸口が示されており、「読破通読」の余慶に与ることが可能である。

履修上の注意

 法律学の学習に際しては、常に最新の法令集(いわゆる『六法』)を傍らに置くこと。いかなる分野であれ法を対象とする学習においては、最新の条文を参照する行動が必須である。その種類や選択を巡るヒントは、テキストに示されており、ここで屋上屋を架することはせず、上述の結論を述べるにとどめた。

成績評価方法

 科目試験による。

レポート作成上の注意

 上述の「遮二無二にテキストを読み切る」という作業は、一度のみならず繰り返しおこなうことが重要であり、回を重ね、併せて他者の著作を参照するなどの労を積むなかで、次第に理解に深みが増すと思う。こうした後に、初めてレポート課題取り組みへの途が開けることとなる。最初から課題の内容のみに注目してテキストの必要箇所を限定して学習を進めるなど、冒頭に述べた本講義の主旨のいずれにも合致しない。のみならず、体系への視野をもたない断片的かつ生半可な知識は、却って「百害あって一利なし」と言わざるを得ない。また、「まずレポートありき」の典型的なものとして、テキストや参照文献の丸写し・換骨奪胎による提出物(敢えてレポートとは表記しない)が散見されるが、これまた通信教育学習に取り組む本意の「はき違え」甚だしきものと断言しておきたい。いうまでもないが、参照文献については、もれなく書名・著者・刊行年・出版社名をレポートの最後に明記することが求められる。