慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
オリエント考古学
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第2類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2024 授業コード T0EA007603

講義要綱

 本科目では、石器時代から鉄器時代までの西アジア地域の考古学について、聖書考古学の視点から概観する。聖書の記された南レヴァント地域(現在のイスラエル国、パレスチナ自治区、ヨルダン・ハシミテ王国)は肥沃な三日月地帯の中央に位置し、メソポタミア文明とエジプト文明の中間にあったので、それらの文明との密接な関わりの中で文化が発達した。そのため、この地域の考古学を学ぶことは西アジア考古学の全体像を把握することにつながる。また、都市の発達、文字の発達、一神教の成立など、今日まで大きな影響を及ぼしている文明の諸要素について知り、検討することができる。






 聖書考古学の資料には、発掘調査によって出土した遺構や遺物、出土遺物中文字の書かれた粘土板文書やオストラコン等の銘文資料、文献史料としての旧約聖書の3つがある。聖書は西アジアの大きな文化の流れを背景として記された文書なので、膨大な情報を含んでおり重要であるが、元来宗教文書であり、現在の実証主義的歴史とは異なる歴史観、記述法に基づいていることに注意が必要である。一方、考古資料は思想的な前提なしに出土するが、当時の社会のすべてではなく、限定された側面を反映しているに過ぎない。ものを言わない考古資料を解釈するには、現在の研究者たちの思想も反映される。銘文資料も、当時の文書がすべて残っているわけではなく、その記録を残した者たちの意図が反映されている。このようにそれぞれの資料には限界があるが、それらを認識した上で、総合的に一貫性のある歴史記述を目指すことが肝要である。






 

テキスト

杉本智俊『図説 旧約聖書の考古学』河出書房新社、2021年。 正誤表もかならず確認すること。

テキストの読み方

指定教科書の構成は、大きく以下のようになっている。
1部 原初史(文明のはじまり)
第2部 イスラエル民族の成立(青銅器時代)
3部 イスラエル王国の成立(鉄器時代I期-IIA期)
4部 王国時代のイスラエル(鉄器時代IIA期-IIC期)
5部 再出発するイスラエル(新バビロニア期―アケメネス朝ペルシア期)
 まず細かいことにこだわらず全体像をつかむようにざっと読んでください。その上で、気になる点やよく理解できなかった点をじっくり読み直してください。その時、さまざまな説とその根拠は何なのかに留意してください。コラムに方法論の個所がありますが、そこは難しいので、全体を読み終えてから読み直してもよいです。

履修上の注意

 本科目では南レヴァント地域の古代史を通史的に理解することを目的とするが、レポート課題では、その中の一課題について特に掘り下げて学ぶことが期待されている。教科書はもとより、周辺地域の情報については参考書も積極的に活用してほしい。 






 

関連科目

 「西洋史特殊I」は、この後に続くヘレニズム時代からローマ時代を経てキリスト教が公認された宗教となるビザンツ時代までを扱う。どちらを先に取ってもよいが、関連性を強く意識して学んでほしい。

成績評価方法

科目試験

参考文献

 小川英雄著『古代オリエントの歴史』慶應義塾大学出版会

レポート作成上の注意

論理の流れを意識して記すこと。参考文献表を必ずつけること。