科目名 | |||
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歴史(西洋史) | |||
担当教員名 | |||
舟橋 倫子 | |||
科目設置 | 総合教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 3分野科目/人文科学分野 | 単位 | 2 |
キャンパス | 日吉 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2024 | 授業コード | 12412 |
この授業は、現代社会の諸問題(戦争・疫病・環境・グローバリゼーション・社会の分断・格差・貧困等)と向き合うための力を、ヨーロッパの歴史(古代~近世)を学ぶことで鍛えることを目標としています。
歴史を学ぶことは単に過去の出来事を覚えることではありません。それは、現代の私たちの生きているリアルな世界の成り立ちを考える作業なのです。新型コロナウイルスやガザ、ウクライナ等の戦争は私たちの世界を大きく変えつつあります。社会に内包されてきた諸問題の相互関連が急速な悪循環によって沸点に達し、一気に目に見える形で爆発したといえるでしょう。歴史を学ぶとは、そのような諸問題の総体を考えることなのです
人々は様々な危機と共存してきました。ヨーロッパ内には古代から常に地域紛争が存在し、12世紀には外部へと拡大して多数の人々に甚大な損害と影響を及ぼすようになってゆきます。コロナ危機は、古代末期から近世までヨーロッパを何度も襲ったペストの大流行が、人々の価値観と社会・経済構造に根本的な変革を引き起こしたことを想起させます。また、深刻化してゆく食料・エネルギー問題は、古代末期から産業革命期までの長い間、ヨーロッパの人々が支配階級も含めて常に飢餓と共に暮らしてきたことを思い起こさせます。この間ヨーロッパにおける平均寿命は40歳に満たず、「お腹一杯食べること」が人々の望みでした。しかし、その希望がかなうことは難しく、人々は飢餓と飢饉と共にあり、それらをなんとか飼いならし、折り合いをつけるために食料生産と再分配のシステムの開発とアップデートという不断の努力を重ねてきました。恒常的な飢餓と様々に形を変える危機的状況に適応することが生きることだったのです。
グローバリゼーションの進む現代社会においては全世界を視野に入れた検討を行うのが理想的ですが、本講義では問題を深く掘り下げてゆくために、共通の土台をもつヨーロッパという地域に的を絞って検証をすすめてゆきます。ヨーロッパという舞台では、異なる諸要素の相互作用と緊張関係が活力がもたらし、対立や矛盾から新たなモデルが生み出されてゆきます。ヨーロッパ社会は気候変動・飢饉・疫病・戦争によって何度も物理的・精神的な「危機的状況」に陥ってきました。それらの危機を「変動」・「転換」と捉え、社会の変化を分析する契機として考えてみたいと思っています。
第1回講義内容
地中海世界:ローマの世界 文化的重層性と寛容
第2回講義内容
ローマ帝国とキリスト教:内的分裂と統合への新たな試み
第3回講義内容
ローマ人とゲルマン人:移民(受け入れか排除か)・他者との共存
第4回講義内容
中世社会の形成:中世初期・フランク王国の形成:キリスト教と国家
第5回講義内容
中世盛期・農村の世界:共同体形成と封建社会
第6回講義内容
中世盛期・都市の世界:新たな社会秩序と流通経済の発展
第7回講義内容
経済発展のダイナミズム:格差と闘争
第8回講義内容
中世末期の危機:飢饉と疫病
第9回講義内容
宗教改革のエネルギー
第10回講義内容
植民地:ヨーロッパの拡大と矛盾
第11回講義内容
ヨーロッパの多様性と統合:総括
第12回講義内容
総括
その他の学習内容
・課題・レポート
・毎回の授業の感想や質問をリアクションペーパーとして提出してください。これが平常点となります。成績の3割とします。
最終授業において、授業内試験を行います。持ち込み可で記述式の試験です。これが7割の成績評価となりますので、最終試験を受けない場合は単位がでません。
プリントを適宜配布する
大学で学ぶ西洋史「古代・中世」/服部良久、南川高志、山辺規子編著 ミネルヴァ書房 2006
大学で学ぶ西洋史「近現代」/小山哲、上垣豊、山田史郎、杉本淑彦編著 ミネルヴァ書房 2011
西洋史概説Ⅰ/神崎忠昭 通信テキスト 2015
食の歴史/J-L.フランドラン、M.モンタナーリ編、宮原信・北代美和子監訳 藤原書店 2006
高等学校で履修する程度の世界史の知識(ヨーロッパの古代から近代まで)があることを前提として講義を進めます。不安がある場合は、高校世界史の教科書レベルの参考書を利用して自身の基礎を固めておいてください。『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』山崎圭一、といった一般書でかまいません。