科目名 | |||
---|---|---|---|
芸術(美術) | |||
担当教員名 | |||
國本 学史 | |||
科目設置 | 総合教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 3分野科目/人文科学分野 | 単位 | 2 |
キャンパス | 三田 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2024 | 授業コード | 12407 |
[講義概要]
本講義は、通史的に日本美術を歴史的に概観しつつ、日本の色彩文化についても学ぶ。特に古代から近世に至る時代における日本美術を中心に、美術と色彩芸術に関わる歴史を辿る。日本は諸外地域の影響を受けつつも、独自の文化・芸術を発展させて行った歴史背景をもつ。東アジア的な観点から日本の美術や文化を概観するにあたり、日本文化・美術の歴史的な流れを追いつつ様々な芸術作品を見て行くことで、日本独特の美意識や文化の深層を探る端緒としたい。
[講義方法]
講義では画像を多く用いて、視覚的に分かりやすく解説する。対象は、絵画・彫刻・工芸・建築等、幅広い領域にわたり、多くの作品を歴史の流れに沿って考察する。
[到達目標・目的]
美術における表現・デザインを学ぶことで芸術が生成された背景を探り、履修者が知識・教養を会得して、即物的利益性や金銭を基準とした価値観とは異なる、「歴史・文化・芸術」的な価値とは何であるのか、という個々の見識を得られるような内容としたい。
◇各講義回の内容は、下記に記した通りである。12回の講義を通じて、日本の原初より近代頃までの時代における芸術・文化の展開を見て行く。その過程において、例えば諸外国からもたらされた要素や、独自に発展した要素、融合的に変化して行く要素、といった諸要素を文化史的に俯瞰する。芸術的な表現や造形が、どのような背景のもとで形成されるのかについて、歴史的な変化とともに芸術・文化の変容を見いだせるような内容を提示する予定である。講師の専門性を活かし、色彩文化と美術との関わりを元に講義内容を展開する。多くの人がなんとなく抱いているような「日本的」な美術や文化が、多層的・多様な性質を有するものであるのかについて、芸術に表れた色彩表現などを参照しつつ読み解いて行くこととしたい。
○講師は中国の複数の大学でも教鞭を執っており、国際シンポジウムや国際的研究フォーラム等でも講演を行っている。人文科学を含めて、視点の転換や学問的進展が著しい中国の研究動向や、色彩文化研究に関わる最新の研究動向等の情報についても、適宜伝えて行きたい。
○講師はこれまで、芸術(美術)に関わる展示企画や、美術作品資料の保存・整理・展示業務、美術作品や関連資料の選定と保存、史料のデジタル化に伴う言語・シソーラス分析やデジタルアーカイブ構築・データベース作成等、様々な実務的業務経験を有している。
こうした経験に基づき、企画・展示・調査等に関わる経験や情報についても具体例を示したい。
さらに、歴史・文化・芸術に関わる資料の活用方法について、美術作品・展示資料・モノの取り扱い方等についての事例説明なども行う。
また、芸術に関わるデジタルデータベースの構築や展開に際しての必要な情報の取り扱い、資料整理・分析における文言やキーワードの抽出や選択、デジタル化してWeb資料等として用いる際の分類方法、データベース分類に関する分類学的知見の活用例など、実務的な経験に基づいて得られた学術的アプローチの必要性について説明する。
受講者は当該の知見を講義を通じて学ぶことにより、資料・モノに依拠した考え方を学び、資料に付随する文字情報の分析を通じたメタ的データ分析の観点等を会得できる講義にしたい。芸術(美術)という、抽象的な価値判断がなされていると考えられがちな領域においても、こうした学術的・論理的な学問的アプローチや分析プロセスの有用性を示すことで、受講者の社会生活全般における視点の多様化に役立つものとなる。
第1回講義内容
はじめに、日本美術のあけぼの
本講における講義概要と全体の目的について説明する。また、歴史的な流れに基づいて美術や芸術を鑑賞・観察・分析するための手法・知見についての導入的な解説を行う
第2回講義内容
祭祀と美術
日本の美術・文化の歴史において、宗教的な要素が持つ表現の特徴は大きい。そうした諸要素について、祭祀との関わりの視点から、美術作例を分析して行く
第3回講義内容
仏教伝来と美術
祭祀的な表現と関連するものとして、仏教美術の要素を分析する。特に、日本の歴史において、仏教が果たした役割と、その影響のもとで発展して行く文化史的展開を考察する
第4回講義内容
国の形成と美術
国家的な制度の成立と、美術・文化の表現との関連性や、諸外国から流入した要素の展開を見る
第5回講義内容
国家事業と美術
国家事業のように、官制のシステムのもとで形成される美術・文化の造形やスタイルについて、歴史的な背景とともに分析する
第6回講義内容
海外交流と美術
日本が積極的に諸外国の文化を受容していた時代における美術作品の造形を見て行く
第7回講義内容
密教と美術
新しい要素としての宗教的要素とその影響、造形表現の後代への影響等について考察する
第8回講義内容
王朝文学と美術
いわゆる日本的な文化や芸術という漠然としたイメージで語られる諸要素について、その表現形式や文化的性質を分析する
第9回講義内容
極楽浄土と美術
仏教等の性質の変化と、それに伴う美術・文化的な変容について観察を加えて行く
第10回講義内容
武家社会と美術
いわゆる武家的なイメージと実際の美術作品との関連性について造形的な特徴・性質と比較しつつ分析する
第11回講義内容
文化の多様性と美術
今日的に考えるような、わびやさび、といった漠然とした文化的要素について、その形成過程と展開を見て行く
第12回講義内容
様々な担い手と美術、まとめ
古い・近い近世期のイメージとして考えている美術・文化の性質の実際について、様々な類例をもとに考察する
その他の学習内容
・小テスト
・◇開講期間中、3回程の小テストを実施する予定である
◇やむを得ず当該小テストを受けることができない場合等には、レポートの提出を求める(原則的には出席して小テストを受講する必要があるが、体調不良等のやむを得ない事情については、教員に相談されたい)
◇色彩についての話題もあるが、色覚に障がいのある受講者であっても、受講・小テストへの回答にあたって不利益がない内容を準備する
原則として、平常点、及び小テスト(合計3回程を予定)の成績等をもって評価する
プリントを適宜配布する
講義受講や今後の学習のために役立つものとして、参考となる文献をあげる。
辻惟雄監修『カラー版日本美術史〔増補新装版〕』
『日本美術全集』全24巻+別巻2巻 美術出版社 講談社、2003 1990~94年等
國本学史監修『色を表すことばの辞典』ナツメ社 2023年
上記の参考文献は、購入の必要はない。また、講義を通じて適宜参考となる文献を紹介する。
大学のメディアセンター等を活用し、必要に応じて文献を参照されたい。
[受講上の要望]
○準備学習(予習)
配布資料の該当回の内容について、できれば目を通しておくと講義の流れを把握し易い。
○準備学習(復習)
当日説明された内容を、配布資料と自らが作成したメモ・ノートとよく照らし合わせる。講義で紹介される、オンラインデータベース等を参照する。
※90分程度の準備学習の時間を要することが想定される。
[受講上の前提状況]
高等学校で履修する日本史の基礎知識があると、理解の手助けになる。ただし、当該の知識が十分になくとも、講義内容を理解できるような解説を行う。受講のための制限は設けない。
あり