科目名 | |||
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社会科学特論 | |||
担当教員名 | |||
梅原 秀元 | |||
科目設置 | 総合教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 3分野科目/社会科学分野 | 単位 | 2 |
キャンパス | 日吉 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2024 | 授業コード | 12432 |
(講義形式について)
本講義は、教室で対面での講義で行う予定です。グループワークなどのディスカッションは行いません。受講生は授業をしっかり聞いき、ノートを取ったりあれこれ考えや思いを巡らせてください。
講義はパワーポイントを使って行います。ただし、この形式だと、ノートを取るのがほぼ不可能なので、パワーポイントで映し出される内容を極力プリントにしたものを作って、毎講義時に配布します。したがって、履修する皆さんは、映し出されるスライドの内容を逐一ノートする必要はないです。講師が話したことで何か気になることがあったら、それをプリントに書き込むと講義ノートが完成するというふうになっています。したがって、履修することになったら、まず、講義を聴くことに集中してください。
なお、毎講義時に紙の状態のものを配布予定です。
そして、講義のときには、自由に質問してください。私が話している途中でも構いません。講義の進行を妨げない範囲で、できるだけ質問には答えます。こんなこと質問してはいけないかなと思っても、遠慮なく質問して大丈夫です。
(講義の内容について)
本講義では、19世紀後半から20世紀前半にかけてのドイツの医療・公衆衛生の歴史からいくつかのトピックをとりあげ、それぞれがもつドイツ史研究および現在の私たちが直面している問題との関係性を検討します。
まず、第1回目と第2回目の講義でオリエンティールングを行うとともに、本講義が対象とする19世紀後半から20世紀前半のドイツの歴史を概観する。第3回目では、19世紀にヨーロッパを席巻したコレラ流行とそれに対するドイツにおける医療・衛生の対応を概観します。ここでは主に、実験衛生学と細菌学という二つのアプローチについて検討します。第4回目では、細菌学の限界に対して、1900年頃に提示された社会衛生学というコンセプトとそのアプローチを概観します。第5回から第7回では、第一次世界大戦を取り上げ、戦争と医療・医学との関係を議論します。第8回では、ドイツにおける人口論について検討し、とくに人種衛生学(ドイツの優生学)について概観します。そして第9回から第11回にかけて、ナチス期に精神疾患の患者を主な対象として行われた強制断種と「安楽死」(大量殺害)について検討し、第12回目に全体の総括をおこないます。
このように、本講義では、具体的な事例(近代ドイツにおける医学・衛生学)を通して科学と社会の相互関係について検討するとともに、これらの事例に関係すると思われる現在の問題-たとえば生命倫理上の問題や障害者問題など-について考えるヒントを見つけることを課題としています。
第1回講義内容
オリエンティールングと講義内容の概観;19世紀~20世紀のドイツ史概観
第2回講義内容
オリエンティールングと講義内容の概観;19世紀~20世紀のドイツ史概観
第3回講義内容
コレラをめぐって-19世紀のドイツにおける公衆衛生の成立と展開
第4回講義内容
社会衛生学の登場-公衆衛生・社会福祉ネットワークの確立
第5回講義内容
第一次世界大戦と医学-戦争と医学(1)
第6回講義内容
第一次世界大戦と医学-戦争と医学(2)
第7回講義内容
第一次世界大戦と医学-戦争と医学(3)
第8回講義内容
1900年前後のドイツにおける人口論をめぐって
第9回講義内容
治療と絶滅 ナチスドイツと医学(1)
第10回講義内容
治療と絶滅 ナチスドイツと医学(2)
第11回講義内容
治療と絶滅 ナチスドイツと医学(3)
第12回講義内容
総括
その他の学習内容
・課題・レポート
・講義の他の形態の学習ありません。
グループディスカッションの予定はありません。
履修した皆さんは、まずは、講義を集中して聞いてください。そのうえで、講義要綱や毎回の講義で紹介されている参考文献を手に取って読んでみてください。
レポートによります。レポートの内容については、講義内で指示します。
プリントを適宜配布する
ほぼ毎時間、講義内容に沿ったプリントを配布する予定です。講義が進むにつれてプリントが溜まることになるので、多少荷物が重くなります。
とくになし。
プリントを適宜配布する
下記に挙げる文献は、必ずしも購入の必要はないです(もちろん購入していただいてもよいです。購入を強制しないということです)。しかし、もし公立図書館などでの閲覧・貸出によって手に取ることができれば、本講義の理解にプラスとなるでしょう。
1 )本講義が対象とする時期のドイツ史の基本的な概観として、
・矢野久/アンゼルム・ファウスト『ドイツ社会史』(有斐閣コンパクト、2001年)。
・木村靖二『ドイツ史』(上下巻)(山川出版社 2022年)
・若尾祐司 / 井上茂子『近代ドイツの歴史 18世紀から現代まで』(ミネルヴァ書房 2005年)
特にナチ期に関して
・石田勇治『ヒトラーとナチス・ドイツ』(講談社現代新書 2015年)
・ウルリヒ・ヘルベルト『第三帝国』(小野寺拓也訳)(角川新書 2021年)
2 ) 19世紀から20世紀のヨーロッパにおける医学・衛生学の展開について、
・ Willian Bynum『医学の歴史』(鈴木晃仁・鈴木実佳訳)(丸善出版(サイエンス・パレットシリーズ)、2015年)がコンパクトかつ的確に示しています。
3)ドイツの精神医学・医療の概観
・ブルクハルト・ブリュックナー『入門 精神医療史』(村井俊哉訳)(日本評論社 2023年)
ナチ期の強制断種と「安楽死」殺害に精神医療・医学が深くかかわっており、ドイツの精神医療・医学の歴史を知りたい場合によいです。
4) 第一次世界大戦以降のドイツの傷痍軍人とその支援について
・北村陽子『戦争障害者の社会史 20世紀ドイツの経験と福祉国家』(名古屋大学出版会 2021年)
5)とくにナチス期のドイツの医学・衛生学について
・中野智世他『「価値を否定された人々」ナチス・ドイツの強制断種と「安楽死」』(新評論 2021年)
は、最新の研究に基づく概観で、価格もさほど高くないです。このテーマを学ぶ上での導入としてよいものです。慶應義塾大学の図書館に所蔵されており、また、履修予定のみなさんがお住まいの地域や働いている地域の公立図書館で所蔵している場合もあるので、借りて読んでみるといいでしょう。
・カール=ビンディング/アルフレート=ホッヘ『「生きるに値しない命」とは誰のことか:ナチス安楽死思想の原典を読む』(森下直貴・佐野誠訳)(中公選書 2020年)
は、ナチスの「安楽死」を基礎づけた本の翻訳で、絶版になっていたものが近年復刊したもので、比較的安価で入手しやすいです。
・アレキサンダー・ミッチャーリッヒ/フレート・ミールケ編『人間性なき医学:ナチスと人体実験』(金森誠也・安藤勉訳)(星雲社 2001年)
は、ナチ期の医学犯罪を裁いたニュルンベルク医師裁判の記録です。絶版なので購入は難しいですが、慶應義塾大学の図書館に所蔵されており、また、履修予定のみなさんがお住まいの地域や働いている地域の公立図書館で所蔵している場合もあるので、借りて読んでみてください。
ナチス期のドイツの医学・衛生学についてのほかの日本語の書籍については。価格が非常に高いか、絶版になっており、購入は極めて難しいです。したがって、慶應義塾大学の図書館や公立の図書館などでの利用を強くすすめます。
・エルンスト・クレー『第三帝国と安楽死:生きるに値しない生命の抹殺』(松下正明監訳)(批評社 1999年)
・ Ch. ブロス/ G. アリ編『人間の価値 1918年から1945年までのドイツの医学』(林功三訳)(風行社 1993年)
・ベンノ・ミュラー=ヒル『ホロコーストの科学:ナチの精神科医たち』(南光進一郎監訳)(岩波書店 1993年)
とくに必要とされる前提条件は無いです。ただし、ドイツの19世紀末から20世紀にかけての歴史を題材とするので、これについて多少なりとも知識があるとよいです。履修者は、たとえば、高校の世界史の教科書などでいいので、19~20世紀のヨーロッパ史についてみておくとよいです。また、参考文献で紹介した本を読んでみるのもよいです。
レポートは、講義内容に即したものになるので、受講する学生はまず講義に耳を傾けてほしいです。また、わからない部分があれば、講義の途中で遠慮なく質問してください。質問は大歓迎です。
講義は休み時間をはさんでの2コマ通しとなります。真夏なので水分補給など、健康に十分気を付けて受講してください。