科目名 | |||
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社会思想史 | |||
担当教員名 | |||
壽里 竜 | |||
科目設置 | 経済学部専門教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 単位 | 2 | |
キャンパス | 三田 | 共通開講学部 | 文学部「哲学特殊」として開講、法学部「社会思想史」として開講 |
設置年度 | 2024 | 授業コード | 62409 |
経済学を中心とする社会科学全体の思想的・哲学的基礎を探り、現代社会の諸課題を長期の歴史的なスパンで理解しようとするならば、社会思想史の学習は不可欠である。学問の専門分化と社会の機能分化が進み、全体像が把握しにくくなった現代においては、社会の様々な領域を俯瞰し総合的な視座を養うために思想の歴史を振り返ることはとりわけ有益である。また、近現代社会の大きな特徴である経済活動の拡大の歴史的背景を把握するためには、古代思想をも包含する社会思想の歴史を学ぶことが求められる。本授業では、坂本達哉『社会思想の歴史』を主な参考書として用いつつ、古代思想・キリスト教という、近代以前に影響力を持った思想の概観からスタートし、多様な近代思想が登場する過程をそれぞれの時代背景を踏まえつつ追跡していく。加えて、さまざまな新しい思想が近代現代社会の基礎を形成しつつも、その内部に生じた(生じている)対立にも注意を向けていく。
第1回講義内容
イントロダクション・講義全体の見取り図:本講義では、以下の講義の前提として、「社会思想史」という学問と基礎知識としての西洋の歴史を概観する。
第2回講義内容
古代の思想とキリスト教からルネサンスへ:本講義では、近代以前に大きな影響力を持った思想として、古代の思想(主に共和主義とストア派)とキリスト教を概観する。これら近代以前の思想を知ることで、近代思想の新しさを理解することができるようになる(ただし、古代思想の遺産とキリスト教は近代以降においても完全に影響力を失うわけではない)。
第3回講義内容
グロチウスの自然法思想とホッブズの社会契約論:本講義では、近代的な法学・政治学的思考を代表するものとして、グロチウスの自然法学とホッブズの社会契約論を紹介する。両者はしばしば、それぞれ近代自然法思想の父、近代政治思想の父と見なされているが、どのような意味で「近代的」なのかを理解することが本講義の狙いである。
第4回講義内容
ロックの社会契約論と経済思想:社会契約論の系譜で論じられることの多いロックの思想は、キリスト教の影響を色濃く残しつつも、当時勃興しつつあった商業社会と国際貿易・植民地主義を反映した経済(学)的視点も見られる。近年の研究成果を踏まえて、ロックの社会契約論と経済思想を接合することが本講義の目的である。
第5回講義内容
奢侈論争(マンデヴィル、ヒュームとルソー):本講義では、18世紀の思想家を中心に、新たに形成された「商業社会」をめぐる言説を、奢侈論争を通じて概観していく。多くの思想家が加わったこの論争を通じて、経済活動を肯定的に捉える思想の新しさと、近代以前の思想の持続的な影響力の強さとを同時に理解してもらいたい。
第6回講義内容
アダム・スミスの思想:近年のスミス研究を踏まえつつ、スミスの『道徳感情論』と『国富論』の主要なポイントを概観する。さらに、スミスの思想形成に影響を与えたともされるルソーの思想との対比・関連も踏まえて経済学の父と呼ばれるスミス思想を再考する。
第7回講義内容
バークとベンサム:フランス革命に前後する時期に活躍したバークとベンサムの思想を概観しつつ、両者がそれぞれ異なる形で近代思想の形成において重要な役割を果たしていることを明らかにする。
第8回講義内容
ドイツの思想(カントからヘーゲルへ):英国でバークやベンサムが活躍する一方、19世紀の思想界を牽引することになるドイツ思想について、特にカント(18世紀後半)、ヘルダー(18世紀末)、ヘーゲル(19世紀前半)に焦点を当てて解説する。ドイツ近代思想は一般に抽象度が高く、難解とされているが、当時の時代背景と具体例を交えることによって、その意義を身近なものとして理解してもらいたい。
第9回講義内容
J・S・ミルとマルクス:本講義では、第7・8回講義で扱った思想家たちの次の世代として、19世紀半ばに活躍した英国のミルとドイツ出身のマルクスを取り上げる。それぞれが経済学の伝統に与えた影響とともに、社会改革に向けた両者のスタンスの違いにも目を向けていく。
第10回講義内容
リベラリズム、リバタリアニズム:本講義では、20世紀以降の代表的な思想として、ロールズを中心とするリベラリズムと、ノージックらが唱えたリバタリアニズムを概観する。両者は21世紀の政治問題にも影響を与えていることを理解する必要がある。
第11回講義内容
リベラル・コミュニタリアン論争:本講義では、リベラリズム(とリバタリアニズム)を批判する形で現れたコミュニタリアニズム(共同体主義)について概観しつつ、これまで学習してきた思想と現代社会が直面するさまざまな社会問題との関連について論じる。近代思想と言われるものが一枚岩ではないことを理解するのと同時に、近代思想の陥穽を克服するための思想的取り組みについての理解を深めることが本講義の目的である。
第12回講義内容
総括および試験
その他の学習内容
・予習と復習が必須だが、特に予習には(個人差はあるものの)最低でも60分以上の学習時間が求められる。授業スライドを一読するだけではなく、馴染みのない概念・人名・歴史的事実について、事典類や高校世界史教科書・資料集などを活用して下調べしておくことが必要。インターネット検索だけではなく、参考文献に記載した事典類を積極的に活用すること。
期末テスト(80%)、および各日(偶数回の講義ごと)に提出してもらうコメント(20%)により判断する。
プリントを適宜配布する
授業スライドを中心に進めていく。授業で用いる資料やパワーポイントの授業スライドについては、PDFに変換したものを事前に学生向けポータルサイト(kcc-channel)を通じて配布する。
社会思想の歴史:マキアヴェリからロールズまで/坂本達哉 名古屋大学出版会 2014
啓蒙思想の百科事典/日本18世紀学会 丸善出版 2023
社会思想史事典/社会思想史学会 丸善出版 2019
プリントを適宜配布する
本科目は経済学部の専門科目としては対象とする範囲が幅広く、狭義の経済学はもちろん、哲学、思想、歴史、文化、芸術など、関連諸分野への興味・関心が求められる。ただし、特定の科目を履修の必須要件とはしない。関連科目としては、総合教育科目では、哲学、歴史(西洋史)、政治学、社会学などが関連深く、経済学部専門科目では、経済原論(ミクロ経済学)、経済原論(マクロ経済学)、経済史、西洋経済史(近世)などが挙げられる。授業で使用するパワーポイントをPDFに変換したファイルは事前に学生向けポータルサイト(kcc-channel)を通じて配布する(授業内で出すクイズなど、一部のスライドは事前配布のファイルに含まれない)。
ファイルを印刷したものを若干数、配布するが、これは事前にオンラインを通じてファイルを入手・プリントアウトすることが難しい学生のためのものなので、可能なかぎり各自でファイルを事前にダウンロード・プリントアウトしておくことが望ましい(その方が各自でレイアウトや大きさを調整できる)。
授業中、ノートをとる手段としてパソコンやタブレットを用いても問題ない(キーボードを叩く音が大きくなり過ぎないようにするなど、他の履修者に配慮すること)。