慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
工業経済論
担当教員名
三嶋 恒平
科目設置 経済学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 -
設置年度 2024 授業コード 62414

授業科目の内容

 本講義の主題は企業行動に即しながら、理論と歴史、実態の往復により工業経済を捉えることにある。そこで本講義では工業化に関連する諸理論を確認しながら、個別産業を取り上げることを通じて、工業化のありようとそこでの企業行動を検討していく。工業化に関係する理論、視角として、本講義は国際経営論と企業戦略論、開発経済論を踏まえていく。より具体的にいうならば、本講義では相対的後進性仮説、海外直接投資論、イノベーション論、新興国市場論、ダイナミック・ケイパビリティ論、能力構築競争論、戦略的提携論等を取り上げていく。あわせて本講義では個別産業として機械組立型の導入産業としてのオートバイ産業を取り上げ、その発展型としての自動車産業を中心とした産業一般へのインプリケーションも提示する。
 本講義の形式は担当者が一方的に講義するだけでなく、受講者側の発信を重視することによる双方向の学習を目指すことに1つの特徴がある。具体的には担当者が提示した課題について受講者同士の議論の場を設ける可能性や課題に対する受講者の回答に基づいた議論を行う予定である。ただし、こうした講義形式は受講者数や理解の程度により柔軟に対応していく予定である。
 本講義の到達目標は、経済学ではブラックボックスとして扱われることの多いイノベーションや生産関数の中身を具体的にイメージできるようになり、論理的に説明できるようになることにある。その結果、本講義の受講者は海外直接投資主導型工業化、中所得国の罠、自由化・グローバル化のなかでの工業化、製品イノベーションと漸進的なイノベーション、中国企業・インド企業・日本企業の異同といった概念、項目について具体的なイメージとともに論理的に説明できるようになると期待できる。

第1回講義内容
イントロダクション&歴史からみた工業化

第2回講義内容
海外直接投資論からみる工業化:スピルオーバー効果はフリーランチ?

第3回講義内容
通関統計からみる工業化:マクロデータから全体像を描く

第4回講義内容
海外直接投資からみる工業化:海外直接投資主導型のロールモデルであるタイの事例

第5回講義内容
イノベーションからみる工業化:がんばれば報われる?

第6回講義内容
企業行動からみる工業化:20世紀型工業化と21世紀型工業化のハイブリットモデルであるベトナムの事例

第7回講義内容
付加価値の源泉からみる工業化:能力構築と移転価格から探る(ブラジルの事例)

第8回講義内容
付加価値の源泉を探る

第9回講義内容
新興国市場からみる工業化:安ければ売れるのか

第10回講義内容
インドから工業化をみる:不思議な国インド、ではない

第11回講義内容
フィールドからみる工業化:21世紀に途上国はゼロから工業化できるのか(ミャンマーの異例)

第12回講義内容
総括

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

 本講義は(1)講義への参加程度、(2)講義中に示した課題への回答、(3)第12回に行う筆記試験、の3点から主に成績評価を行う。ただし、出席したからといって自動的に加点するわけではない。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

オンラインストレージ(Box)経由で資料(PDFファイル)を配布する。資料を格納するBoxのURLについては、事務局から周知する予定である。なお、紙媒体の印刷物は一切配布しない。

参考文献

講義中に適宜参考文献を案内する。

受講上の要望、または受講上の前提条件

 双方向の講義を目指していることから受講生には講義への主体的な参加が求められる。講義各回(第1回から第11回まで)において受講者は課題への回答提出が翌日朝までに求められる。講義資料はBoxからのダウンロード、講義課題への回答は電子メールあるいはGoogleフォームを予定しているため、受講生には最低限のPCリテラシーが求められる。