慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
国際貿易論
担当教員名
田中 巌
科目設置 経済学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 法学部「国際貿易論」として開講
設置年度 2024 授業コード 62432

授業科目の内容

 この授業の目的は、国際貿易の理論を学習することで現実の様々な問題について批判的な検討(critical thinking)ができるようになることです。新型コロナウイルスによるパンデミックとロシアによるウクライナ侵攻の問題は、物流など国境を超える経済活動に大きく影響し、世界的な物価高につながりました。日本経済も円安・ドル高が大きく進み、国内の物価に影響を与えました。こうした中、経済のデジタル化は進展し続け、経済活動の在り方を変えていこうとしている様子が見られます。パンデミックが概ね収束のような状態になりつつあり国際的な経済活動が再開され始めた今、国際貿易を取り巻く環境はこれまでのトレンドに回帰していくのかどうか、私たちは理論的にも考察する必要のあるテーマがたくさんあります。
 2008年に発生した世界的な金融不信に端を発する世界同時不況と日本経済への影響について理解する上でも、国際貿易と海外投資、移民の拡大を通じて統合が進んでいる世界経済の特徴を知る必要がありました。こうした経済のグローバル化は自由貿易の利益を求めて展開され、RTA(地域貿易協定)の締結が増加して地域経済化を促進することにもなりました。一方で、自由貿易を主張したD.リカードの国でもあるイギリスはEU離脱を実現し、自由な国の象徴ともいえる米国の(前)トランプ大統領はTPP離脱とNAFTAの再交渉を要請するなど、自由貿易が最も望ましいとする価値観は必ずしも共有されなくなってきている面もあります。
 これまでの貿易拡大というトレンドは、自由貿易が望ましいという考え方によるところが大きくあります。自由貿易のメリットを再確認することは、保護主義的な傾向やパンデミック下の制約の大きい経済状況がどのようなものであったのかを考察する時に良いヒントを与えます。
 授業では、考察(批判的検討)の一助となるように比較優位と貿易利益という重要な理論概念の理解を重視し、統計データを見て世界貿易のパターンと歴史的な展開について確認し、貿易理論とその検証方法、また関税などの通商政策の目的と厚生効果について学習します。

第1回講義内容
イントロダクション、パンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻と国際貿易

第2回講義内容
第二次世界大戦後の世界貿易の成長と近年の特徴(成長率と開放度指数を用いて)、日本の経済成長と貿易

第3回講義内容
貿易理論とその検証①(ミクロ経済学の復習、貿易の基本モデル)

第4回講義内容
貿易理論とその検証②(リカードの比較優位理論)

第5回講義内容
貿易理論とその検証③(リカードの比較優位理論(続き))

第6回講義内容
貿易理論とその検証④(へクシャー=オーリンの要素比率モデル)

第7回講義内容
貿易理論とその検証⑤(マクドゥーガルの実験、レオンティエフ・パラドックス)

第8回講義内容
独占的競争に基づく貿易モデル

第9回講義内容
通商政策①(関税・非関税障壁と厚生分析)

第10回講義内容
通商政策②(地域貿易協定)

第11回講義内容
経済のグローバル化とその推進主体(多国籍企業と海外直接投資、経済格差)

第12回講義内容
試験・総括

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

100点満点で評価します。授業参加点が20点、宿題は20点、最終日に行う試験は60点です。90点以上がS、80点~89点がA、70点から79点がB、60点から69点がC(以上合格)、59点以下がD(不合格)となります。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

参考文献

International Economics,Ninth Edition(International Edition) Kindle版/Husted,Steven,and Michael Melvin Pearson Education,Inc. 2013
International Economics: Theory and Policy,12th Edition(Global Edition)/Krugman,Paul R.,Maurice Obstfeld,and Marc J. Melitz Pearson Education Limited 2022
ゼミナール国際経済入門〔改訂3版〕/伊藤元重 日本経済新聞出版社 2005

受講上の要望、または受講上の前提条件

経済原論のミクロ分野の知識を必要とし、抽象的なグラフと簡単な数式を用います。統計データを読むことに意欲的で、現実の国際経済問題を理解することに情熱を持っている履修者を歓迎します。