科目名 | |||
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医事法 | |||
担当教員名 | |||
平野 美紀 | |||
科目設置 | 法学部専門教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 甲類・乙類 | 単位 | 2 |
キャンパス | 日吉 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2024 | 授業コード | 72409 |
高度医療の発達と共に患者の自己決定権という意識への高まりを背景として、医療と法の学際領域は広がりを見せ、現在、さまざまな形で議論が活発化している。担当者は刑事法を専門としているので、本講義では、医療をめぐる法的諸問題の中でも特に刑事法が交錯するさまざまなテーマ、たとえば末期医療における患者の意思決定(安楽死や尊厳死)、精神科医療における患者の意思決定、触法精神障害者の処遇等について、法的問題とその背景を概説する。
第1回講義内容
イントロダクション(医事法と医療における医師と患者の法的位置づけ):医事法とはなにか、医療と法をめぐる総論的な問題について概説する。医療における医師と患者の関係として、医師に課された法律上の義務、患者の権利について概観する。
第2回講義内容
人権擁護と患者の自己決定権の尊重:ICや患者の自己決定権が重要とされるようになった背景や、患者の人権擁護の必要性について概観し、近年の臨床研究法における患者の自己決定権重視の方向性などについて学ぶ。一方で、自己決定能力が低下している場合や生命の終結に関する場合など一定の場合においては、本来尊重されるべき自己決定権が制限されなければ患者の人権を擁護できない場合があり、それらの問題について検討する。
第3回講義内容
生命の終期における患者の自己決定権①尊厳死と安楽死:生命の終期の問題として安楽死尊厳死の法的諸問題や厚労省のガイドライン、2020年の京都ALS患者の嘱託殺人事件とその判決について概観する。
第4回講義内容
生命の終期における患者の自己決定権②:日本における医師と患者の関係、医療をめぐる法律問題を比較するため、オランダにおける実際の安楽死事例のビデオを見て学ぶ。【小レポート①】
第5回講義内容
【小レポート①を提出】
生命の終期における患者の自己決定権③比較法の視座:終末期医療における患者の自己決定権の問題は、その国における法律、医療、社会福祉などの制度や国民性、さまざまな事情を背景に論じられる。【小レポート①の概説】も含めて、我が国の特徴を、比較法の視座を含めた視点で検討する。
第6回講義内容
生命の終期における患者の自己決定権④:脳死と臓器移植:生命の終期の問題として脳死の問題と臓器移植法(2010年改正法)を取り上げて概説する。さらに2022年以降問題となっている、海外での移植手術における臓器売買の問題や生体移植について検討する。
第7回講義内容
精神医療と患者の自己決定①:精神科医療においても患者の自己決定は尊重されなければならないが、患者の医療と保護のため、その権利を制限しなければならないときもある。障害者の権利擁護の法制度について学んだ上で、精神保健福祉法を中心に、患者の自己決定と強制入院制度を概説する。【小レポート②授業時間内に作成し提出】
第8回講義内容
精神医療と患者の自己決定②:精神医療における自己決定とのかねあいが問題となる場面として【小レポート②の概説】をしたうえで、共生社会と地域における精神障害者の課題を取り上げる。
第9回講義内容
精神障害者と刑事司法①:刑事司法における責任能力と刑罰の問題や、触法精神障害者の問題として医療観察法を概説する。
第10回講義内容
精神障害者と刑事司法②:刑務所における精神障害者等の処遇と出所者の社会復帰の困難さ等をとりあげ、共生社会のあり方についても検討する。
第11回講義内容
生命の始期と患者の自己決定権:法律における生命の始期、生殖医療技術をめぐる法的問題と法改正、人工妊娠中絶の問題、について取り上げる。
第12回講義内容
総括・最終試験・解説
その他の学習内容
・課題・レポート
小レポート2回(1回は自宅で作成し翌日提出、1回は授業時間内に作成し提出)、最終試験
プリントを適宜配布する
価値観が多様化する社会の中で明確な結論の出ないテーマも多く、法的知識を得たうえで、受講者それぞれが主体的に考察を深めていただきたいと思います。