科目名 | |||
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刑事政策学 | |||
担当教員名 | |||
太田 達也 | |||
科目設置 | 法学部専門教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 甲類・乙類 | 単位 | 2 |
キャンパス | 三田 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2024 | 授業コード | 72410 |
刑事政策は,犯罪の少ない安全な社会を創るための対策を追求する分野であり,刑事制裁論,犯罪者処遇論,犯罪予防論,被害者支援論の領域がある。
本講義では,刑事制裁論として,死刑制度と2022年の刑法改正により新たに導入された拘禁刑制度(2025年から施行)について解説する。犯罪者処遇論としては,拘禁刑の執行に伴う刑事施設における矯正処遇と保護観察について概観した後,犯罪少年,外国人犯罪者,高齢犯罪者,薬物犯罪者,触法精神障害者といった各種犯罪類型毎の対策と処遇制度について解説する。
講義の後半では,被害者学として,犯罪被害者に対する様々な支援制度について考察する。現在,政府では,犯罪被害者に対する経済的支援と損害回復について制度改革に向けた検討を行っていることから,特に犯罪被害者の経済的支援について集中的に講義をする。
教科書は,拙著『犯罪被害者への賠償をどう実現するか』(慶應義塾大学出版会)を用いる(2024年4月25日発売)。これは,犯罪被害者の損害回復について解説したものであるが,その前提となる,拘禁刑,矯正処遇,仮釈放,保護観察,死刑,少年司法についても解説してあり,講義の前半の刑事制裁論や犯罪者処遇論の部分でも役に立つと思われる。講義の内容毎に教科書の該当箇所を記してあるので,できれば講義前に(だめでも講義後に)読んでおくこと。
さらに,講義では,パワーポイントで作成したレジュメを用いる。レジュメの入手方法については,夏前に事務局から案内するが,基本的には各自でWebサイトからダウンロードする方法による。
講義で触れたテーマについて更に考察を深めたい人は,各講義内容に示した参考文献を読むことを勧める。
第1回講義内容
刑事政策の基本的理念・原則/死刑 刑事政策の基本的理念と原則を概説した後,刑罰制度としての死刑制度について考察する。特に,近年,海外で一般的となりつつある薬物注射による死刑執行のほか,死刑の執行方法上の問題を検討する。また,被害者感情から見た死刑制度についても言及したい。
教科書:補遺Ⅳ(死刑確定者による損害賠償)を読んでおくこと。
参考文献:井田良=太田達也編著『いま死刑制度を考える』慶應義塾大学出版会(2014)。
第2回講義内容
自由刑/矯正処遇/仮釈放/保護観察 自由刑の刑種や刑期(無期刑を含む)を説明し,自由刑の執行過程における受刑者の処遇内容について解説する。また,自由刑において認められている仮釈放の意義とその後の保護観察の問題を考察する。
教科書:第3部第8章(仮釈放と損害賠償)の仮釈放要件の部分と第10章(刑務所釈放後の保護観察)を読んでおくこと。
参考文献:太田達也『仮釈放の理論―矯正・保護の連携と再犯防止』慶應義塾大学出版会(2017)。
第3回講義内容
少年犯罪者と少年司法制度 我が国の少年法に基づく少年司法制度の特色と非行少年に対する処遇制度について解説する。
第4回講義内容
外国人犯罪者に対する刑事政策/高齢犯罪者に対する刑事政策 外国人の出入国・在留管理制度(退去強制を含む)を説明したうえで,我が国における外国人犯罪の状況と外国人に対する刑事政策的対応について考察する。国際刑法としての受刑者移送についても説明する。後半の高齢犯罪者の刑事政策では,近年の高齢犯罪者の増加と高齢者に対する刑事処分の状況とあり方について検討する。
第5回講義内容
薬物犯罪者に対する刑事政策 日本で濫用が問題になっている違法薬物の概要と濫用の状況を概観したあと,薬物犯罪者に対する刑事政策と再濫用防止のための施策について解説する。また,2023年12月に行われた大麻関連法の改正の概況についても触れる。
参考文献:太田達也「刑事政策の新動向第11回 薬物犯罪」法学教室461号(2019)133頁以下。
太田達也「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正について」罪と罰61巻2号(2024)86頁以下。
第6回講義内容
触法精神障害者に対する刑事政策 次の3点について講義する。①精神障害者に対する精神保健福祉法上(行政手続上)の通報制度と措置入院制度,②触法精神障害者に対する訴追や刑罰の適用,③心神喪失者等医療観察法に基づく入院や通院の制度。
教科書:補遺Ⅲ(触法精神障害者による損害賠償)を読んでおくこと。
第7回講義内容
犯罪被害の実態 第7回以降は,被害者学について講義する。まず最初の第7回は,犯罪被害の実態について見ていく。犯罪被害者が犯罪によって如何に大きな被害を被り,且つ理不尽な状況に置かれているかを理解することが目的である。
教科書:序章(特に,ⅠからⅤ)
第8回講義内容
被害者の経済的支援,損害回復 犯罪被害者に対し国が給付金を支給する犯罪被害給付制度のほか,犯罪被害者が犯罪者から損害賠償を得るための制度について解説する。また,犯罪被害者が損害賠償判決や命令を得ても,殆どの犯罪者は全く支払いを行っていないことから,この問題をどう解決するかについて考察する。これは,現在,政府が検討している最も重要な課題であり,今年の刑事政策の夏期スクーリングの一番の焦点である。
教科書:第1部第1章(犯罪被害給付制度と損害賠償),第5章(刑務作業報奨金と損害賠償)。できれば,第9章(保護観察における損害賠償)も。
第9回講義内容
刑事手続における被害者参加 公訴段階における不起訴決定に対する被害者の不服申立としての検察審査会制度,公判段階における被害者参加制度について解説する。
教科書:補遺Ⅴ(訴追されない犯罪者による損害賠償)
参考書:太田達也「起訴猶予と再犯防止措置―積極的活用と条件付起訴猶予の導入に向けて―」法律時報89巻4号(2017)6頁以下。
第10回講義内容
刑の執行段階における被害者参加 刑や保護処分(少年院送致)における被害者心情聴取・伝達制度,仮釈放意見聴取制度,保護観察における心情聴取・伝達制度について解説する。
教科書:第2部第4章(被害者の心情聴取と受刑者への伝達),第8章(仮釈放と損害賠償。特にⅢ),第9章(保護観察における損害賠償。特に,Ⅱ)
第11回講義内容
地方公共団体と被害者支援 地方公共団体が制定する犯罪被害者支援条例や犯罪被害者基本計画の概況と課題について解説する。
教科書:第1部第2章(犯罪被害者支援条例と損害賠償)
第12回講義内容
総括 講義を総括し,刑事政策と被害者支援の今後を展望する。
その他の学習内容
・予め,講義のレジュメと教科書の該当箇所を読んでくること。
最終回にペーパーテストを実施する。試験範囲は,講義で話した内容とする(講義で配布したレジュメと教科書の該当箇所も含まれる)。
犯罪被害者への賠償をどう実現するか/太田達也 慶應義塾大学出版会 2024
プリントを適宜配布する
パワーポイントのハードコピーをレジュメとして配布する(所定の方法でオンラインでダウンロードできるようにする)。
いま死刑制度を考える/井田良=太田達也編著 慶應義塾大学出版会 2014
仮釈放の理論―矯正・保護の連携と再犯防止/太田達也 慶應義塾大学出版会 2017
講義で触れたテーマについて更に考察を深めたい人は,各講義内容に示した参考文献を読むことを勧める。