慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
日本政治史
担当教員名
玉木 寛輝
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 夜間スクーリング
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 文学部「日本史特殊」として開講、経済学部「日本政治史」として開講
設置年度 2024 授業コード 72438

授業科目の内容

本授業では昭和史を中心にしつつ、明治時代から太平洋戦争敗戦後までの日本近現代史を通史的に見ていきます。第二次世界大戦という未曾有の惨禍を経験したこともあって、現代でも多くの方が日本の近現代史への関心をもっているように思われます。それゆえ、昭和史に関する書物やTV番組は巷間にあふれ返っています。しかし一方で、一般に流布している歴史の議論はややもすれば単純化されて提示されがちです。そこで本授業では当時の人々が記した日記や手紙、公文書などの史料を用いることによって、あるいは回によっては「外国から見た日本」という「グローバルヒストリー」の視座を導入することによって、単純な図式ではとらえきれない日本の近現代史の内奥を提示していくことを目指します。「グローバルヒストリー」とは「世界史」・「日本史」の枠組みを取り払い、日本史のなかに世界史の視座も取り入れようとする試みです。歴史とは複雑かつ重層的な人間の営みですが、以上の試みにより、複雑な昭和期日本の「空気」を感じて頂ければ幸いです。もっとも、必ずしも日本政治史に関する細かい知識は必要ありません。むしろマクロな視点から見ることによって、日本が歩んできた時代の感覚をつかむことができるでしょう。日本近現代史初学者の方もお気軽にご受講下さい。

第1回講義内容
大日本帝国憲法は近代日本にいかなる政治体制をもたらしたのか ――帝国憲法の制定から政党政治の時代へ

第2回講義内容
人種主義と戦前日本 ――アメリカの人種政策のなかに日本を位置づける

第3回講義内容
1930年代クーデターと暗殺の時代と陸軍 ――なぜ政党政治は凋落し、陸軍はなぜクーデターや暗殺に走ったのか?

第4回講義内容
国際協調の1920年代から満州事変へ ――国際連盟からの脱退は孤立への道か?

第5回講義内容
1930年代のドイツ・アメリカ・日本を比較する ――民主主義陣営と全体主義陣営という分類は有効なのか?

第6回講義内容
日中戦争への突入と日独伊三国同盟への道 ――なぜ日中の衝突は英米との対立と独伊との同盟を招いたのか

第7回講義内容
太平洋戦争への道 ――日本はなぜ米国との戦争に突入したのか?太平洋戦争は米国との戦争だったのだろうか?

第8回講義内容
太平洋戦争における日本と連合国の降伏をめぐるせめぎあい ――なぜ太平洋戦争は4年にもわたる戦争となったのか

第9回講義内容
総力戦の国際比較 ――戦争がもたらすのは「負」の側面のみか――

第10回講義内容
昭和期日本の政治と軍事の関係 ――理想的な政軍関係をめざして

第11回講義内容
アメリカの占領政策を展望する ――戦後は戦前からの断絶か

第12回講義内容
歴史の見方・考え方

その他の学習内容
  ・課題・レポート
  ・小テスト

成績評価方法

授業確認小テスト(50%)+期末レポート(授業確認テストを含む)(50%)
第1回の授業に参加できない方は必ずshimoina@keio.jpまでご連絡下さい。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する
特定のテキストは用いません。毎回レジュメを配布します。授業内ではその時代の「空気」を理解するためにしばしば当時の一次史料(当時の文書)も適宜用います。その他、理解を深めるのに有用と思われる文献があればこちらで御案内します。

参考文献

・瀧井一博『文明史のなかの明治憲法』(講談社、2013年)
・佐々木隆『日本の歴史21 明治人の力量』(講談社、2010年)
・北岡伸一『日本の近代5 政党から軍部へ 1924~1941』(中央公論新社、2013年)
・有馬学『日本の歴史23 帝国の昭和』(講談社、2010年)
・北岡伸一『日本政治史 外交と権力 増補版』(有斐閣、2017年)
・筒井清忠編『昭和史講義 最新研究で見る戦争への道』(筑摩書房、2015)
・筒井清忠編『昭和史講義2 最新研究で見る戦争への道』(筑摩書房、2015年)
・竹山道雄『昭和の精神史』(講談社、1985年)

受講上の要望、または受講上の前提条件

日本近現代史の初学者の方も歓迎いたします。細部に入り込んだ授業ではなく、マクロな視点から日本近現代史を考えられるようになる授業を心掛けます。お気軽にご受講下さい。