慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
マス・コミュニケーション論
担当教員名
山口 仁
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 夜間スクーリング
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 文学部「マス・コミュニケーション論」として開講、経済学部「マス・コミュニケーション論」として開講
設置年度 2024 授業コード 72426

授業科目の内容

 社会は人と人とのつながりで成り立っています。しかし大きな集団や社会ではそれを構成する人々も多様な利害・関心を持っていて、しばしば対立・紛争が生じます。そうした紛争を「解決」し「秩序」を形成することを“政治”と言い、ルール(例えば法律)をつくってそれに基づいて活動することも政治の一つの役割です。
 さて、こうした政治の過程において影響力を持っている主体は何でしょうか。もちろん法制度で規定されている国会、内閣、裁判所は代表的な政治主体です。しかし制度的に規定されていなくても、そうした過程で実質的に影響力を持っている存在があります。その一つと考えらえているのが(マス・)メディア、そして(メディア・コミュニケーションの一種の)マス・コミュニケーションです。法学部で「マス・コミュニケーション論」を学ぶ理由がここにあります。
 この授業では、(マス・)メディアやマス・コミュニケーションに関する様々な概念や理論の理解を深めることを目的としています。学期前半はコミュニケーションや政治社会に関する基本的な考え方を、後半はマス・コミュニケーションに関する理論や研究アプローチに関する解説を行っていきます。そのうえで、政治コミュニケーションやジャーナリズムについても解説していきたいと思います。

第1回講義内容
コミュニケーションの基礎概念①:コミュニケーションがつくる「つながり(社会関係)」。政治社会学的な観点からコミュニケーション研究の必要性を説明しながら、社会的相互作用の一種としてコミュニケーションを論じる。

第2回講義内容
コミュニケーションの基礎概念②:コミュニケーション研究が想定するもの。コミュニケーション研究の展開を概観しながら、当該分野の研究が何を対象としてきたのかを説明する。

第3回講義内容
コミュニケーションの基礎概念③:イメージ・現実を社会的に構築するメディア。擬似環境論、社会的構築主義(現実の社会的構成)の議論をもとに、コミュニケーション研究の広がりを説明する。

第4回講義内容
コミュニケーションを規定するもの(社会関係・情報装置と文化・社会構造):コミュニケーションを社会関係や社会構造との観点から説明品しながら、コミュニケーションと社会変動の関係を説明する。

第5回講義内容
社会の近代化とマス・コミュニケーションの発達とその変容。近代化論に依拠しながらマス・メディアの登場とマス・コミュニケーションの発達の相互関係について説明する。

第6回講義内容
マス・コミュニケーションの効果・影響モデルの変遷①:弾丸効果モデルと限定効果モデルについて説明する。

第7回講義内容
マス・コミュニケーションの効果・影響モデルの変遷②:弾丸効果モデルと限界効果モデルを批判しながら強力効果モデル(新効果論)の特徴について説明する。

第8回講義内容
マス・コミュニケーションの効果・影響モデルの変遷③:強力影響・機能モデルの有する「社会の中のメディア」という視点に依拠しながら、効果研究との差異を説明する。

第9回講義内容
政治とコミュニケーション:権力概念の再検討、そして多次元的権力観に依拠しながらコミュニケーション過程を権力行使過程として説明する。

第10回講義内容
マス・コミュニケーション論とジャーナリズム論①:「プレスの自由に関する四理論」を中心にジャーナリズムに関する規範的議論を説明する。

第11回講義内容
マス・コミュニケーション論とジャーナリズム論②:規範論とは別の観点からジャーナリズムを社会的行為として説明する。

第12回講義内容
総括と解説

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

期末試験で評価する。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

『コミュニケーション論』/大石裕 通信テキスト 2022年、法学部Ⅲ年度②配本

プリントを適宜配布する
テキストをもとに授業をしますが、補足的にプリントを配布します。

参考文献

『メディアがつくる現実、メディアをめぐる現実』/山口仁 勁草書房 2018年
『対立と分断の中のメディア政治』/山腰修三(編) 慶應義塾大学出版会 2022年

受講上の要望、または受講上の前提条件

指定した「テキスト(教科書)」の予習・復習を欠かさないでください。