慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
倫理学(専門)
担当教員名
吉田 修馬
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス 日吉 共通開講学部 文学部専門教育科目:倫理学(専門)
設置年度 2024 授業コード 52405

授業科目の内容

 「倫理」とは、もともとは、人間がよく生きる上で大切にすべき物事のことであり、人間が社会の中で守るべきルールのことです。倫理には、大ざっぱに言うと、「人間の理想の生き方」、「人間が社会で守るべきルール」、「善悪や正不正の判断基準」という三つの意味があります。「倫理学」とは、そのような倫理について論じる哲学の一分野です。「哲学」とは、物事(特に世界や人生)について自由に理性的に、根本的に考える学問です。端的には、哲学は物事をつきつめて考える学問です。そこで、さしあたり倫理学とは、人間の生き方、社会のあり方、善悪や正不正の判断基準について、つきつめて考える学問のことです(柘植尚則『プレップ倫理学 増補版』弘文堂、2021年、1-16頁を参照)。
 本講義では、(1) 倫理学的な問いの立て方や議論の進め方を「理解」すること、(2) 西洋倫理学史上の代表的な学説や理論の意義や難点について「比較・検討」すること、(3) それらの検討を通じて、倫理学的な問いについて自ら論理的に「思考」し、自分の考えとその理由や根拠を筋道を立てて「表現」すること、この三点を目標にして、西洋倫理学史における代表的な思想家が何を問い、その問いとどう向き合ってきたのかを概観していきます。
 私たちが人生や社会に関して直面している課題の中には、自分自身がかかわっているからこそ、気がつきにくいものや取り組みづらいものもあります。そういった課題を認識しそれに取り組む上で、倫理学史上の議論を手がかりにできることがあります。本講義では、倫理学史上の議論を、言わば私たちを映し出す鏡にすることで、人間や社会や道徳について、より幅広い視点から捉え、より根本的に考え、それに対する自分の見解をより明瞭に示すことができるようになることを目指します。
 なお、指定教科書は要点を絞って簡明に書かれていますので、授業では指定教科書をある程度まで理解していることを前提に、より専門的・発展的な内容も取り上げます。

第1回講義内容
イントロダクション

第2回講義内容
プラトンとアリストテレス

第3回講義内容
デカルトとホッブズ

第4回講義内容
ヒュームとスミス

第5回講義内容
モンテスキューとルソー

第6回講義内容
カントとヘーゲル

第7回講義内容
ミルとベルクソン

第8回講義内容
マルクスとニーチェ

第9回講義内容
サルトルとフーコー

第10回講義内容
ウェーバーとハーバーマス

第11回講義内容
ロールズとセン

第12回講義内容
総括

その他の学習内容
  ・課題・レポート
  ・各回、指定教科書の予習、授業内容の復習を行ってください。 第1-2回、第3-4回、第5-6回、第7-8回、第9-10回の内容に関する「小レポート」を、翌日の授業開始時に提出してください。

成績評価方法

・第12回の授業時間内に実施する「授業内試験」に、各回の「小レポート」の提出等の授業への参加度を加味して行います。
・「授業内試験」や「小レポート」では、設問に対する自分の見解とその理由や根拠を、授業内容を踏まえて筋道を立てて論じてください。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

入門・倫理学の歴史――24人の思想家(第1版)/柘植尚則編著 梓出版社 2016

プリントを適宜配布する
指定教科書を補うプリントを配布します。

受講上の要望、または受講上の前提条件

(1) 予習と復習、課題と講評
①予習(約60分程度)
・指定教科書『入門・倫理学の歴史』の各回に学習する該当箇所を事前に通読してください。各回の予習箇所は以下の通りです。
(1日目)第2回:第1章・第2章
(2日目)第3回:第5章・第6章、第4回:第8章・第10章
(3日目)第5回:第9章、第6回:第11章・第12章
(4日目)第7回:第13章・第16章、第8回:第14章・第15章
(5日目)第9回:第18章・第19章、第10回:第21章
(6日目)第11回:第23章・第24章

②復習(約60分程度)
・授業で扱った問いに応答したり、各回に学習した内容をまとめたりする、「小レポート」を作成してください。
・翌日の授業開始時に「小レポート」を提出してください。小レポートに関して、簡潔に復習・解説・講評を行います。
・第12回の「授業内試験」の実施後に、総合的な解説・講評を行います。

(2) 受講上の注意点
・受講者によるPCの持参を前提とする授業ではありません。
・他の受講者に迷惑をかける行為、講義を妨げる行為は厳禁です。悪質な場合は、退出を求めます。
・あなたにとって繊細な問題を扱うかもしれません。ご了承ください。
・倫理学に関心があり、主体的に学習するかたを歓迎します。人間や社会は多様で複雑ですから、それらをめぐる哲学・倫理学も単純明快というわけにいきません。また、哲学・倫理学は概念や論理を用いて丹念に思考する営みですので、安易な「わかりやすさ」を期待しないでください。「あまりにも簡単に理解できてしまう哲学は、さっぱり理解できない哲学と同じくらい、用心しなければならない」(ヴォルテール『哲学書簡』光文社古典新訳文庫、2017年、143頁)。
・様々な学説や議論を批判的に検討しますが、特定の価値や判断を強要したり、否定したりする意図はありません。ただし、趣味や価値観は「人それぞれ」ですが、倫理学は学問ですから「人間は多様ですね」では終わりません。単独で完璧な理論はありませんが、状況や場面によっては、何らかの理論がより有効になる場合があります。この科目では、倫理学における問いの立て方、議論の進め方を学び、様々な学説や理論の利点や欠点を比較検討することで、問題の背景や構造を見極める理解力・判断力と、長所や短所を踏まえて理論や概念を使いこなす思考力・表現力を養うことを目指します。
・倫理学の議論では、初等数学のように一義的な正解が決まるわけではありませんが、議論の正しさ・確からしさの程度には違いがあります。答えが簡単には見つからない問題について、「考え方や価値観は人それぞれだ」で終わるのではなく、粘り強く、かつ柔軟に考えることを厭わないかたの受講を期待します。授業担当者も、答えが簡単には見つからないことを前提に、それでも考えを進める手がかりとなる「枠組み」や「筋道」の材料を提供するように努めます。というのも、哲学において重要なのは、結論よりも、「問い」の鋭さ・深さ・広がりであり、結論に至るまでの「論証」の客観性や整合性や緻密さだからです。
・通学課程の文学部の専門教育科目と同程度の難易度や進度を想定して授業を行います。例年、学習状況の異なる多数の受講者が履修しますので、全員が満足するレベルや速さの授業を行うことはできません。授業の実施方法等に対する個人的なご要望のすべてに応じることができるわけではありませんので、ご了承の上で受講してください。また、授業の進め方等については、適宜、変更する可能性もありますので、ご承知おきください。
・大学や通信教育部の全体の方針は、各授業担当者が独自に決定しているわけではありません。各授業担当者は、大学や通信教育部の全体の方針にそぐわない授業を実施することはできません。大学や通信教育部へのご要望は、授業担当者ではなく、大学や通信教育部のしかるべき部署にお伝えください。