慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
哲学(専門)
担当教員名
高萩 智也/鴻 浩介
科目設置 経済学部専門教育科目 授業形態 夜間スクーリング
科目種別・類 単位 2
キャンパス 三田 共通開講学部 文学部専門教育科目:哲学(専門)
設置年度 2024 授業コード 52462

授業科目の内容

 私たちが人間としてより良い生を送るためには、さまざまな知識が欠かせません。では実際、私たちはこの世界と向き合うことを通じて何を、どれだけ知りうるのでしょうか。これは哲学にとって最も重要な問題の一つといえます。しかし同時に、そうして得られた知識を私たち人間はどのように伝え、受け取り、共有することができるのか、これもまた先の問題に劣らず重要といえます。一人だけの力で世界から引き出すことのできる知識など、ごく限られたものに過ぎないからです。
 本講義では、まず第1~4回(鴻担当分)において知識の哲学(=「認識論」)の基礎を概観し、知識とはそもそも何であるのか、知識はどのように得られるのか、知識の中にはどのような種類があるのか、といったことに関する基本事項を確認します。その上で、第5~11回(高萩担当分)において、他人とのコミュニケーション、すなわち証言から得られる知識に焦点を当てます。証言から得る知識とはそもそも何で、それはどのように得られるものなのでしょうか。また、証言から知識を得るという営みには他人が関わってくるため、そこには倫理的なよさ・悪さが存在することになります。倫理的によい仕方で証言から知識を得るために、私たちはどのようにふるまうべきでしょうか。証言をめぐる倫理的な問題にも踏み込んで考えていきたいと思います。

第1回講義内容
イントロダクション:認識論ことはじめ

第2回講義内容
「見て分かる」こととそうでないこと

第3回講義内容
「事実に関する」こととそうでないこと

第4回講義内容
知識には必ず根拠が必要か

第5回講義内容
証言とは何か

第6回講義内容
証言の認識論の歴史

第7回講義内容
証言の認識論におけるインターパーソナルビュー(IPV)とその含意

第8回講義内容
他人を信頼するとはどのようなことか

第9回講義内容
信頼を裏切る聞き方としての認識的不正義

第10回講義内容
証言を聞くとは結局何をすることなのか、また証言するとはどのようなことなのか

第11回講義内容
さまざまな人々の「証言」をどう聞くべきか

第12回講義内容
試験・総括

その他の学習内容
  ・課題・レポート
  ・小テスト

成績評価方法

授業内で毎回行う課題もしくは小テスト(内容は受講者数などに応じて調整)で、成績評価の55%を決定します。残り45%が試験による評価となります。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

参考文献

『知識とは何だろうか』/ダンカン・プリチャード 勁草書房 2022
『認識的不正義』/ミランダ・フリッカー 勁草書房 2023

受講上の要望、または受講上の前提条件

哲学についての予備知識はまったく前提しません。上記の参考文献を事前に読むことはもちろん授業理解度を深めるはずですが、読んでいなくともまった
く問題はありません。