科目名 | |||
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英語(リーディング)I | |||
担当教員名 | |||
若澤 佑典 | |||
科目設置 | 総合教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
科目種別・類 | 外国語科目/英語 | 単位 | 1 |
キャンパス | 日吉 | 共通開講学部 | - |
設置年度 | 2025 | 授業コード | 22505 |
「時空間旅行」としての英文リーディング:
英語の文章は「イマ・ココ」に生きる私たちを、「今ではない時、此処ではない場所」へと連れ出してくれます。文を読むという行為は、スーツケースを持って出掛ける、休暇中のお出かけと似ています。本授業では英文読解を「ことばをめぐる旅の技法」と読み替えて、履修者のみなさんと、古代ギリシャの賑やかな文芸世界へと飛び込んでみます。英語学習、あるいは英文リーディングと言うと、とかく情報処理やテンプレートの習得がイメージされがちですが、外国語に触れる・文章を読む体験の根本には、異なるものと遭遇する驚き、新たなことと出会う悦びがあります。せっかく夏休み中の一週間を、同じ教室で過ごすのですから、クラスの仲間たちと一緒に話し、考え、発想を共有する「賑やかな思考の場」を、教員と学生さんで共につくっていきたいと思います。
六つの授業指針
(1)足のつま先から頭のてっぺんまで、全身を使って、五感をフル活用して英文を読む。
(2)読む行為は「情報を処理する」という作業以上のものであり、推理やアレンジ、ツッコミなどを含む「創造的/想像的」な行為である。
(3)いろんな「読書」のかたちがあり、英文の特徴によって、あるいはあなたの目的や状況によって、「読みのスタイル」を変えていくことができる。
(4)リーディングとは、書き手と読み手の間、異なった時空間に橋をかけ、日々の生活の中にある「隠れたつながり」を発見していく行為である。
(5)いい英語の文章は、読者自身に何かを「書こう」と思わせたり、そのトピックについて「誰かと話そう」と誘ったり、次の一手へとつなげていく。
(6)英文を通じて異なるものと出会い、これを理解する行為は、あなたの日常生活(にある小さな悦び)を再発見し、あなた自身を見つけることです。
第1回講義内容
第1回:はじめが肝心!
まずは実際に、イギリス人筆者によって書かれた本文/本書を「手に取って」みましょう。日本語の書籍、日本人向けに書かれた英語教科書とは「かたち」や「流れ」など、見た目からして違いを感じるはずです。頭で英文を理解する前に、手や目を使って「五感」で読みの世界に入っていく練習をしてみます。
第2回講義内容
第2回:タイトルはあなたを導き、時に愉快に裏切る...
英文読解の経験は、探偵の事件解決に似ています。名探偵のホームズ先生は、現場に残されたヒントから、これまでにあったこと、これから起こる事件を推理します。英文の読解者も、目の前にある「思考の手かがり」を使って、これから広がる問題系/異世界の風景をイメージします。ここで重要になってくるのが、英文のタイトルです。本文一行目を読む前から、リーディング行為はすでに始まっていることを、みなさんに実感してもらいます。
第3回講義内容
第3回:英文の背後には人がいる
どんなドライに見える英文でも、AIが執筆していない限り、その背後には必ず筆者=人がいます。教科書の表紙にデカデカと登場する「サイモン・クリッチリー」という名前、この人がどんな人なのか、まずは自由に想像(あるいは妄想?)し、つぎに著者紹介の英文や出版リストを通じて、その実像に迫っていきましょう。
第4回講義内容
第4回:目次は英文の骨格である
人体は頭や足、指といったように、いろんなパーツに分かれており、それぞれ固有の役割/機能を持っています。これは英文も同じで、各パートにはそれぞれ導入や例示、呼びかけ、議論展開、休止点の提供など、さまざまな役割が割り振られています。その概要を、人体の解剖図ならぬ「英文の解剖図」にあたる目次から読み解いていきます。
第5回講義内容
第5回:一冊の本の背後には何冊もの本が隠れている
筆者は執筆という過程で、自分の発想をかたちにする際、いろんな本を参照しています。一本の英文とは、絶海の孤島のように「単独で存在」しているわけではありません。一つの文章は、他の文章と何かしらの関係性を持ちながら、群島のようにプカプカと浮いています。読みの過程で思考を、書物を、アイデアをネットワーク化していく方法を学びます。
第6回講義内容
第6回:辞書は友だち、図書館は英文読者のオアシス
英文を前にして、徒手空拳で立ち向かっていくと「とてもじゃないが、どうにもならん」と絶望することもあるでしょう。そんな時、みなさんの味方となるのが、大学図書館という場です。大学という「学びの空間」を、どうフル活用して英文読解に立ち向かっていくか、考え方のポイントを整理し、実践してみたいと思います。
第7回講義内容
第7回:「分からない」を抱きしめる
日本で書かれた英文教科書と違い、実際の英語の文章には「?」ポイントが頻出します。プロが何人か集まっても、解決しないことがしばしば。しかし、「謎が詰まっている」ことこそ、英文の本質的な価値とも言えます。こうした「?」と愉快につきあう方法を、みんなで模索してみたいと思います。
第8回講義内容
第8回:時には休むことも必要だ
マラソンには給水ポイントがあります。文章読解においても、ペース配分は重要です。ここら辺でそろそろ、夏休みの勢いもエネルギー切れしてくるはずです。少し立ち止まって、これまでの読解技法、英文理解のポイントをおさらいしてみることとしましょう。
第9回講義内容
第9回:英文のトピックは、英米文化に留まらない
日本語の文章だって、ドイツやフランス、中国やインドについて扱ったものがあります。英語の文章だって然り。今回の授業テクストは、古代ギリシャを扱っていますが、現代の英語圏と古典地中海の関係って如何?英文の背後にある、文化圏同士のダイナミズムについて考えてみます。
第10回講義内容
第10回:世界にはあなたの知らない「学問の名前」がある
古代ギリシャ・ローマを扱う分野として、西洋古典学なる分野があります。イギリスでは比較的メジャーですが、日本ではあまり知られていません。違った言語文化圏に行くと、その土地や歴史に紐付いた「学問の区分けやジャンル」が存在します。イギリスの大学ウェブサイトを活用しながら、日本ではあまり見かけない「学科」や「学問分野」に英語で触れてみたいと思います。
第11回講義内容
第11回:「読む」は「書く」をうむ
せっかくなので、英文リーディング経験をもとに、日本語で(あるいは英語で)文章を書いてみましょう。
第12回講義内容
第12回:「読む」は「話す」をうむ
1週間お疲れ様でした。いよいよ最終回です!「読む」→「書く」ときたので、最後に読んだこと・書いたものについて、いろいろ「話し」てみましょう。勢いにのって、陽気な日本語歓談から英語のカンバセーションに突入する第一歩に踏み出しましょう!
その他の学習内容
・課題・レポート
・キャンパスでの学習体験を最大化するため、図書館を活用した授業外課題を課します。授業テクストやトピックと関連しそうな本を探したり、洋書コーナー、辞書コーナー、雑誌コーナーなどを探検して、その体験や発見を日本語文章にまとめてもらう予定です。
授業内応答/グループ活動の成果 60%
授業後の振り返りシート/持ち帰り課題の成果 40%
*授業教室で一緒に考え、考えたことをことばや文字にし、発言や文章というかたちで共有するプロセスに重きをおきます。英文読解の一般イメージに挑戦する授業なので、「いわゆる英語の授業」として想起されがちな「単語テスト」や「中高で一般的な筆記試験」といったペーパーテストの類いは、本授業では実施いたしません。なるべく「苦行としての英語学習」とは違った「英文読解」のイメージを、履修者のみなさんとつくっていきたいと思っています。
プリントを適宜配布する
以下の抜粋を、コピーで配布します。
担当教員が実物の本もお見せするので、ぜひ洋書の手触りも(場合によっては、異国の本の匂いも)楽しんでください!
Simon Critchley, Tragedy, the Greeks, and Us. New York: Vintage Books, 2019.
文芸共和国の歩き方:書棚を遊歩するためのキーワード集/若澤佑典 慶應義塾大学出版会 2024年
英語学習や英文読解と聞くと、中高時代(若き日?)の悪夢が蘇る方もいると思いますが、恐れず臆せず、まずは異文化・異言語の世界に飛び込んでみましょう。リーディングのやり方は一つではありませんし、学びの場のあり方もさまざまです。「こんな英語授業もあるんだ」と初回授業で思ってくれれば、しめたものです。担当教員(=若澤)にとって授業とは「教員がすでに知っていることを、一方的に教える場」ではなく、「教員もまだよく分かっていないことを、履修者のみなさんと右往左往しながら、一緒に探究していく機会」です。人生のように、英文理解にも100%の答えはなく、常に迷いが含まれます。せっかく右往左往するのであれば、楽しく「迷ったほうがいい」はずなので、ぜひ愉快にいきましょう!!履修者のみなさん一人一人と、教室でお目にかかれることを、毎夏楽しみにしております。ともかくも、一歩前に進む「ちょっとの勇気」と、あなたの英文読解を助ける「頼もしい英語辞書」(紙版でも電子版でも)を持って、初回授業にお越しください。