慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
英語(リーディング)C
担当教員名
伊藤 尽
科目設置 総合教育科目 授業形態 秋期週末スクーリング
科目種別・類 外国語科目/英語 単位 1
キャンパス 三田 共通開講学部 -
設置年度 2025 授業コード 22525

授業科目の内容

2012年から2014年にかけて映画三部作となった、J. R. R. トールキン原作のThe Hobbit (邦題『ホビットの冒険』)を講読します。
授業担当者は、この映画三部作の字幕/吹替翻訳の監修を行った三人の監修者の一人です。監修を行ったことで、原作の更なる理解に繋がったと言えます。
オクスフォード大学の英語教授を二つも歴任したトールキンの学究的な知識や考察が溢れる英語表現に触れることで、大学での英語講読の基礎から発展までを短期集中で体験しましょう。

第1回講義内容
オリエンテーション。辞書の紹介、英語文法の核心的な理解を日本人が行うための導入を行います。映画でも触れられた「ホビット」という種族について紹介も含めます。Chapter 1 の冒頭も講読を始め、第2回講義の先取りをします。

第2回講義内容
Chapter 1 ‘An Unexpected Party’(邦題「思いがけないお客たち」)を講読します。理解するためには①「物語」としての文体、②英語自体の「意味」と「日本語訳」の違い、③北欧神話の背景知識などが欠かせません。大学での講読を「味わう」最初の経験になるでしょう。

第3回講義内容
Chapter 2 ‘Roast Mutton’ (邦題「ヒツジのあぶり肉)を講読します。rustic styleと呼ぶべき英語の口語体の綴り、発音、意味を味わいます。また、英語のtrollという外来語の単語が表す生き物について、その背景に、トールキンを教えたW. A. クレーギー教授の学識があることも解説します。

第4回講義内容
Chapter 3 ‘Short Rest’(邦題「ちょっとひと息」)を講読します。Chapter 1に出て来た地図の読み方を復習しながら、地図や謎めいた表現を理解する鍵を探します。

第5回講義内容
Chapter 5 ‘Riddles in the Dark’ (邦題「くらやみでなぞなぞ問答」)を講読します。物語前半のクライマックスであると同時に、続編となる『指輪物語』に繋がる重要なエピソードです。また、古期英語に遡り、現代のNursery Rhymes (Mother Goose Rhymes)や『ハリー・ポッター』にも繋がるRiddleという文化について学びます。

第6回講義内容
中間回の授業で、ここまでの遅れを回復し、ポイントの復習を行います。

第7回講義内容
Chapter 8 ‘Flies and Spiders’(邦題「ハエとクモ」)の後半第43段落(After lying and listening for a while,から始まるパラグラフ)から講読します。主人公ビルボ・バギンズが、わたしたちのような一般人のようでありながら、ここではまるでファンタジーの主人公の勇者のような振る舞いをする場面を理解します。

第8回講義内容
Chapter 10 ‘Warm Welcome’ (邦題「心からの大かんげい」)を講読します。口誦伝承とはどのようなものか。またその意味するところを、現代人はどのように解釈/理解するべきかを考える契機とします。

第9回講義内容
Chapter 11 ‘On the Doorstep’ (邦題「入口の階段に腰かけて」)を講読します。章の終りに、第4回の授業で読んだ記述と関連する、とても大事な描写がありますので、そこまで速読します。

第10回講義内容
Chapter 12 ‘Inside Information’(邦題「中に入ってたしかめる」)を講読します。この物語の源泉となった古英語英雄叙事詩『ベーオウルフ』の中の簡潔な叙述と比べて如何に精密な状景描写かを考えることで、現代英語の「物語」を理解する楽しみを味わいましょう。

第11回講義内容
Chapter 18 ‘The Return Journey’ (邦題「帰りの旅」)を講読します。13章から14章までは邦訳でしっかり確認しましょう。その上で、BilboとThorinの会話を読むこととします。

第12回講義内容
まとめの総括を行います。もし補講を行う場合は、第9回・第10回の授業と第11回・第12回の授業を入れ替えます。 総括のあとは質問を受け付けます。Chapter 18 ‘The Return Journey’の一部と映画版『ホビット:決戦のゆくえ』の一部と比較します。

その他の学習内容
  ・課題・レポート
  ・小テスト

成績評価方法

・2回毎の授業後に課題を提出して戴きます。その内容を総合的に全体で50%に換算します。
・小テストを1回行います。その成績は全体の中の50%に換算します。
・両者を総合的に合算して成績とします。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

The Hobbit: There and Back Again/J. R. R. Tolkien HarperCollins 2014

参考文献

ホビットの冒険(岩波少年文庫、上・下巻)/J. R. R. トールキン、瀬田貞二訳 岩波書店 2000
世紀の作家:J. R. R. トールキン/トム・シッピー、沼田香穂里訳、伊藤盡監修 評論社 2015

プリントを適宜配布する
授業に合わせて解説用のプリントも配布します

受講上の要望、または受講上の前提条件

受講上の注意点:邦訳を必ず入手し、授業で扱わない部分については、自分で予め読んでおくことが必要となります。物語の内容を理解した上での受講を勧めます。

講師の実務経験※実務家としての経験があり、その知見が授業に反映されている場合に、「あり」と表示されます

あり