
| 科目名 | |||
|---|---|---|---|
| 比較文化論 | |||
| 担当教員名 | |||
| 若澤 佑典 | |||
| 科目設置 | 文学部専門教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
| 科目種別・類 | 第3類 | 単位 | 2 |
| キャンパス | - | 共通開講学部 | - |
| 設置年度 | 2026 | 授業コード | 52649 |
「学びの型」をめぐる比較文化論:日常の「あたりまえ」を「ことば」で意識化/主題化する
【授業概要】
私たちは日常生活の中で、お箸を使って食事をしたり、手を振って挨拶をしたり、歳末になると年賀状を準備したり、年明けには寺社仏閣へと初詣に出掛けたりと、さまざまな活動を実行し、その中で価値判断を行っています。私たち一人一人が、そういった日々の営みを「どうやって、あるいはどのように行うか」、さらには「それらの成果をどう評価し、何を感じるか」については、個人の背後に「さまざまな慣習の蓄積」や「本人自身も気づいていないかもしれない、暗黙のルール・コード」が存在します。これらの総体が「文化」と呼ばれるものです。
地域や組織、あるいは時代が異なれば、そこには違ったタイプの慣習が存在します。異なる集団の「日々の営み」と遭遇することで、自分、あるいは自分が所属する集団の「暗黙のルール・コード」が意識化されることがあります。何か違ったものと出会い、そこから自己、あるいは自己に帰属するものを了解する試みを「比較」と呼ぶことができます。比較文化論の射程は広く、その説明記述は時に難解ですが、扱える対象はお笑いやスポーツ、食事や音楽、ファッションや住居、お買い物から年間行事にいたるまで、学生のみなさんにとって馴染み深いものです。本授業では老若男女が経験する「学び」のプロセスに焦点を当て、例えば学校教育から習い事、クラブ活動、あるいは職場でのジョブトレーニングなど、思考や発想、あるいは振る舞いの「型」を習得し、実践することをケースとして、比較文化論の理論と実践について学びます。
【到達目標】
(1)「文化」や「暗黙知」、「身体性」や「型」など、比較文化論を実践する上でキーとなる用語を理解し、自分の言葉で説明できる。
(2)「比較」という知的行為の特性を理解し、自身の日常からその対象を見つけ、比較の実践を行うことができる。
(3)自身の日常を構成する「暗黙の前提」を意識化することができ、口頭でその内容について説明したり、文章で記述説明を行うことができる。
(4)比較文化論の関連文献や、比較文化論と隣接する学問諸領域について知り、図書館を活用して必要な書籍や知見を見つけることができる。
(5)自らの日常経験とは「隔たった場所・異なった集団・異質な思考」について興味関心を持ち、隣町から異国に到るまで「未知の世界へ飛び込む」第一歩を踏み出すことができる。
第1回講義内容
文化とは何か?:みんな暗黙の内に分かってはいるけど、それを言葉で説明するのは難しい。。。
*文化をめぐる暗黙知、文化という言葉を定義する試み、トップダウン的な思考とボトムアップ的な思考
第2回講義内容
適切な比較と、不適切な比較:ちゃんと学問的に「比べる」ことは、思っている以上に難しい。。。
*学問の方法論
第3回講義内容
学びのかたちいろいろ:スポーツや学校教育など、人によって、地域によって、そのかたちはさまざま。だからこそ、比較の余地が生まれ、文化を考える事例に
*ケーススタディの始め方
第4回講義内容
自身の学びを振り返る:自分の過去の経験や、日常生活のふとした中に、比較文化への入り口があるのです。。。
*比較文化の主体としての「自己」
第5回講義内容
思考のかたち① イギリス経験論:たくさん試して、その中からフォーマットを形作るんだ!!
*哲学/思想史からの比較文化研究:ベーコン、ヒューム、スミス
第6回講義内容
あなた自身とイギリス経験論の距離:身近に感じるか、あるいは異質なものと感じるか、あなたの感覚が思考の端緒になる!!
*自己と対象との距離のはかり方
第7回講義内容
思考のかたち② アメリカン・プラグマティズム:失敗することで、人は発見する!!
*哲学/思想史からの比較文化研究:パース、ジェームズ、デューイ、ローティ
第8回講義内容
あなたの異文化体験:旅行することで、比較文化への入り口が開く。。。
*一枚岩ではない、英米圏の文化
第9回講義内容
思考のかたち③ 不立文字:日本文化のもろもろから、学びの型の再発見へ!!
*伝統文化の中にある比較文化研究のリソース
第10回講義内容
思考のかたち④ マニュアル文化:現代社会においても、学びの型のケースはいろいろ!!
*現代生活の中にある比較文化研究のリソース
第11回講義内容
比較文化研究のためのキーワード:暗黙知、身体知、集合知
*認知科学や関連領域の知見
第12回講義内容
比較文化研究の理論から実践へ:記述と口述
*各自の1週間の学びを、どう言語化・文章化するか
その他の学習内容
・課題・レポート
・課外授業
・(1)授業外課題として、自身の身近にある「異文化」を発見し、文章化・口頭報告するアクティビティを課します。地方在住で、授業のために神奈川・東京で宿泊される方は、関東地域の探訪と組み合わせて、上記課題に取り組んでいただいてもかまいません。
(2)履修者のみなさんの学習背景を踏まえつつ、日吉メディアセンターで比較文化に関する書棚を探したり、どういった書籍があるのかをチェックするライブラリー・ワークショップを実施する予定です。
① 授業内における「学びのメモ」作成および口頭説明:30%
*いわゆる出席点というものはなく、毎回の授業で各自が何を考えたか、どんなことを連想したか、言語化した記述メモを継続的に提出してもらいます。またお題について口頭で説明・応答したり、グループワークのリードをすることも併せて評価の対象とします。
② 授業外課題の作成:30%
③ 最終課題への取り組み:40%
**授業の最終回までに、各自が学んだことの総括や、身についた研究手法を日常生活に応用したケーススタディを作成してもらい、A4一枚程度にまとめて提出してもらいます。
プリントを適宜配布する
授業の要点をまとめたパワーポイントスライドを教員側で準備します。また、お題について考えるヒントとなる文章を、適宜プリントで配布します。
プリントを適宜配布する
購入の必要はありませんが、授業テーマについて以下の書籍が参考になるでしょう。
① 樋口桂子『西洋のレッスン、日本の手習い:言語化しにくい身体感覚をめぐる比較文化論』青土社、2025年
② 渡邉雅子『論理的思考の文化的基盤:4つの思考表現スタイル』岩波書店、2023年
③ 諏訪正樹編『「間合い」とは何か:二人称的身体論』春秋社、2020年
④ 河野哲也『間合い:生態学的現象学の探究』東京大学出版会、2022年
また、授業担当者自身の「学びへのアプローチ」は以下の書籍で、概要が把握できます。
⑤ 若澤佑典『文芸共和国の歩き方:書棚を遊歩するためのキーワード集』慶應義塾大学出版会、2024年
⑥ 若澤佑典「創造・変容・総合:共に英文を読むことの原風景へ」、『三田評論』2025年5月号<特集:英語教育を考える>
https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/features/2025/05-4.html
https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/features/2025/05-4_2.html
講義型の授業ではありますが、受講生の方一人一人に「日々の体験や日常での発見」について伺いながら、教員と学生さんの応答関係の中で「共に考える」教室を作っていきたいと思っています。教員からの問いに即座に反応したり、当意即妙なレスポンスを必ずしも求めているわけではないので、じっくり考え、時には教室の全員で沈黙をかみしめ、思考を右往左往させながら協働的な学びを実践していきます。履修者の人数にもよりますが、授業内で何か話したり、書いたり、グループワークを行ったりと、アクティブな思考と学びが求められますので、慌てずゆっくり授業のスタイルになれていってくださればと思います。対話形式を重視し、対面でこそ可能な「集合知」(=一人ではできないことでも、みんなで一緒に考えると、解決の糸口をみつけることができる)を探究するクラスです。
*授業後に学びの成果をまとめたり、授業のキーワードで日常経験を捉え直したりと、各自毎回の準備学修に、1時間程度を割く必要があるかと思います。
**原則として、「AIを使って」自身のレスポンス文章や、授業メモの本体を作成するのは「禁止」です。手を動かし、頭を絞って思考し、表現するプロセスを一緒に体験いたしましょう。