
| 科目名 | |||
|---|---|---|---|
| 法制史特殊 | |||
| 担当教員名 | |||
| 呉 迪/出口 雄一/岩谷 十郎 | |||
| 科目設置 | 法学部専門教育科目 | 授業形態 | 夏期スクーリング |
| 科目種別・類 | 甲類・乙類 | 単位 | 2 |
| キャンパス | - | 共通開講学部 | 文学部「日本史特殊」として開講 |
| 設置年度 | 2026 | 授業コード | 72622 |
19世紀後半以降、東アジア諸地域は、西欧近代国家の形成過程において発展した憲法概念および立憲主義思想と本格的に接触することとなった。とりわけ日本における明治憲法の制定は、単に一国の立憲化にとどまらず、周辺地域を含む東アジア全体に対して、憲法・憲政という枠組みを媒介する重要な契機となった。
もっとも、近代憲法の受容は一様な制度移植として進行したわけではない。各地域において、既存の政治思想、統治倫理、国家形成の過程と結びつきながら、憲法概念は選択的に理解・再構成され、時に大きな交錯や変容を伴いながら制度化されていった。その過程を理解するためには、憲法典の条文のみならず、憲法解釈をめぐる学説、統治権の所在をめぐる議論、さらには憲法が構想された政治的・歴史的文脈を併せて検討することが不可欠である。
本講義では、まず近代憲法概念の成立と東アジアへの流入を概観し、日本における明治憲法の制定およびその解釈をめぐる主要な論点を整理する。その上で、中国における憲法成立の源流や、中華民国期の憲法制定過程において展開された統治権移転の構想を取り上げ、近代東アジアにおける憲政の多様な展開を検討する。さらに、旧満洲国における憲法構想や、第二次世界大戦後の占領管理体制下で形成された憲法秩序にも目を向け、戦前・戦後を貫く連続性と断絶の両面から東アジア憲法史を考察する。
以上を通じて、本講義は、近代東アジアにおいて「憲法」とは何であったのか、またそれはいかなる統治構造と結びついて理解・運用されてきたのかを、法制史的視点から総合的に理解することを目的とする。
第1回講義内容
近代憲法概念の成立と東アジアへの流入
第2回講義内容
イギリス式憲法、ドイツ式憲法、そして明治憲法の成立
第3回講義内容
明治憲法の解釈をめぐる天皇主権説と天皇機関説
第4回講義内容
近代中国における憲法成立の源流
第5回講義内容
統治権をめぐる受容と伝統中国の天命論
第6回講義内容
中華民国初期の憲法制定における統治権移転
第7回講義内容
中華民国憲法にある国体と政体
第8回講義内容
趙欣伯の日本憲法調査と旧満洲国の憲法制定
第9回講義内容
GHQによる占領管理体制と憲法秩序
第10回講義内容
いわゆる「八月革命」と日本国憲法の制定
第11回講義内容
二つの憲法を跨ぐ法学者:鈴木安藏と長谷川正安を中心に
第12回講義内容
総括
その他の学習内容
・小テスト
成績はS、A、B、C、Dの5段階評価で、試験(50%)および平常点(50%、毎回の授業におけるリアクションペーパーを中心とする)によって評価します。
プリントを適宜配布する
明治日本の法解釈と法律家/岩谷十郎 慶應義塾大学出版会 2012
戦後法制改革と占領管理体制/出口雄一 慶應義塾大学出版会 2017
近代東アジア憲法の歴史的交響:理論の継受と規範の形成/呉迪 慶應義塾大学出版会 2024
各回の最後にリアクションペーパーを提出してもらい、理解度の確認および次回講義内容の補足に活用する。必要に応じて、次回講義冒頭において前回内容の整理および補足説明を行う予定である。
本講義では、近代東アジアにおける憲法および憲政の形成過程を扱うため、日本近現代史および近代中国史を中心とする19世紀後半から20世紀前半までの大まかな歴史的流れについて、事前に基礎的な用語や出来事を確認しておくことが望ましい(約60分)。