慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
倫理学(専門)
担当教員名
長門 裕介
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス 日吉 共通開講学部 文学部専門教育科目「倫理学(専門)」
設置年度 2020 授業コード 52005
開講期間 I期 8/11~8/16 曜日・時間等 3~4限 14:15~18:00

授業科目の内容

人間は「なぜ生きているのか」「死とはなにか」「自分は本当に幸福なのか」「なぜ道徳を気にかける必要があるのか」といった問いをもつことがあります。伝統的に、こうしたことは「倫理学」と呼ばれる学問が扱う領域とされてきました。もしかしたら、このような問題は純粋に個人的なものであって、学問的な議論の対象としたり、理論的に検討するのには相応しくないものと思われるかもしれません。しかし、問いを細かく切り分け、さまざまな角度から検討することによって「なんとなくそう思う」といった日常的感覚では理解できない側面があることが分かるはずです。
この講義では、(応用的な問題も含め)生や死、そして幸福に関係する諸問題に関する倫理学の議論を紹介し、それを検討することを通じて受講者が倫理学の方法について一定の理解を得ることを目指します。

第1回講義内容
利己主義:「人間のやることは結局利己的じゃん」と言われたらどう答えるか

第2回講義内容
自己欺瞞:どうして自分で自分を騙せるのか

第3回講義内容
道徳性:「なぜひとを殺してはいけないのか」を真面目に考える(1)

第4回講義内容
道徳性:「なぜひとを殺してはいけないのか」を真面目に考える(2)

第5回講義内容
死の害:死はどのような意味で私にとって害なのか

第6回講義内容
死の害:不死はどのような意味で私にとって害なのか

第7回講義内容
インターミッション:道徳や生について「論じる」とはどのようなことか

第8回講義内容
幸福:快楽のすごさ

第9回講義内容
幸福:成し遂げることそのものに価値はあるか

第10回講義内容
自由:私たちは本当に自由でありたいなんて思ってるだろうか

第11回講義内容
正しい制度:どのような制度のもとで生きたいか

第12回講義内容
総括:議論の振り返りと到達度の確認

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

授業内に提出するミニッツペーパー(15分程度で書くもの)と、最終レポートの内容から総合的に評価します。
最終レポートは授業の内容をもとに受講者自身が課題を解釈し、発展させるものです。字数は3000字~4000字程度を想定しています。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

参考文献

善と悪:倫理学への招待/大庭健 岩波新書 2006
倫理学の話/品川哲彦 ナカニシヤ出版 2015
倫理学の道具箱/ジュリアン・バジーニ/ピーター・フォスル 共立出版 2012

参考文献はあくまでおすすめの入門書であり、必ず入手しなければならないものではありませんが、興味のある方は事前に読んでおくことをお勧めします。
その他、授業中に紹介します。

受講上の要望、または受講上の前提条件

この授業では、思想家の業績や基礎的概念を理解するだけでなく、問題そのものの論点を整理し、主張を展開することを到達目標としています。講義を受けながら(1)なぜそのようなことがそもそも問題になるのか、(2)どういった理論的な対立があるか、(3)それぞれの論はどのような前提から成り立っているか、などに注目してみてください。もちろん、即座に理解できるようなことばかりではないでしょう。配布した資料や文献を読み返して復習することも重要になりますが、学習にあたっては遠慮なく講師を利用してください。オンライン授業であってもメールや配布資料上でのフィードバック、質問コアタイムでのZOOMなどを利用したリアルタイムのやりとりを通じて最大限フォローいたします。
また、倫理学の議論を消化するうえで、具体例を自分で思い浮かべながら学ぶことが重要になります。幅広い知的関心と主体性をもった受講者を歓迎します。倫理学そのものの知識は前提としません。