慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
西洋美術史
担当教員名
細野 喜代
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス 日吉 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード 52009
開講期間 I期 8/11~8/16 曜日・時間等 1~2限 9:00~12:45

授業科目の内容

本講義ではヴェネツィア美術史を扱います。今日ヴェネツィアは、イタリア共和国の北東部に位置する小都市で、観光地として名高く、世界遺産にも登録されています。昨年11月、ラグーナの上に築かれたこの人工都市が、記録的なアクア・アルタに見舞われ、町全体が浸水被害に遭ったことを覚えている人も多いでしょう。また、今年2月には、新型コロナ・ウイルスの影響で、途中でカーニヴァルが中止されてしまいました。しかし、かつてヴェネツィアは広大な領土を支配する共和国で、1787年にナポレオンによって滅ぼされるまで、1100年間も独立を保った歴史上希有な国家でした。観光客が必ず訪れるサン・マルコ広場は、ヴェネツィア共和国時代の政治、宗教、司法、財務、文化の中心地でした。ヴェネツィア政府は有名な芸術家たちを総動員してサン・マルコ広場周辺を整備し、今日見られるような美しい都市景観を作り出すとともに、比類ない文化都市を築き上げました。そこで、本講義では、まずヴェネツィア政府の注文でサン・マルコ広場周辺に作られた建築、モザイク、彫刻、絵画などを見ていきます。そうすることによって、各作品の魅力を感取するとともに、各時代や各芸術家の様式、作品の制作された歴史的背景、作品の有していた意味内容を理解し、図像学の知識を得ること目的とします。技法についても解説します。また、ヴェネツィアの祝祭についても言及します。

第1回講義内容
ヴェネツィア共和国(697-1797年)の地理とその中心のサン・マルコ広場

第2回講義内容
ヴェネツィア共和国の歴史、神話、政治

第3回講義内容
サン・マルコ大聖堂の歴史とファサード(西正面)の装飾

第4回講義内容
サン・マルコ大聖堂 西ナルテックス(玄関間)のモザイク装飾

第5回講義内容
サン・マルコ大聖堂 北ナルテックス(玄関間)のモザイク装飾

第6回講義内容
サン・マルコ大聖堂内部のモザイク装飾、パーラ・ドーロ(黄金の祭壇衝立)、カンパニーレ(鐘楼)

第7回講義内容
センサ(キリストの昇天の祝日)の祭り、「海との結婚」の儀式、ブチントーロ(統領の御座船)、アルセナーレ(国営造船所)

第8回講義内容
パラッツォ・ドゥカーレ(統領宮殿)の概観

第9回講義内容
パラッツォ・ドゥカーレ(統領宮殿)の歴史、構造、各部屋の機能

第10回講義内容
パラッツォ・ドゥカーレ(統領宮殿)コッレージョの間の装飾プログラム

第11回講義内容
パラッツォ・ドゥカーレ(統領宮殿) 大評議会の間の装飾プログラム

第12回講義内容
総括、試験

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

課題・レポートによって評価します。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

通信教育過程生用システム「kcc-Track(講義室)」に資料を掲載します。

参考文献

佐々木英也監修『世界美術大全集 西洋編』、全28巻、小学館、1992-2001年。
ジェームズ・ホール著『西洋美術解読事典 絵画・彫刻における主題と象徴』、高階秀爾監修、河出書房新社、2004年。
中平希著『ヴェネツィアの歴史 海と陸の共和国』創元社、2018年。
アルヴィーゼ・ゾルジ著『ヴェネツィア歴史図鑑』、金原由紀子、松下真記、米倉立子訳、東洋書林、2005年。
ロドヴィーコ・ドルチェ著『アレティーノまたは絵画問答―ヴェネツィア・ルネサンスの絵画論―』、森田義之、越川倫明訳、中央公論美術出版、2006年。
ローナ・ゴッフェン著『ヴェネツィアのパトロネージ ベッリーニ、ティツィアーノの絵画とフランチェスコ修道会』、石井元章、木村太郎訳、三元社、2009年。
渡辺真弓著『パラーディオ時代のヴェネツィア』、中央公論美術出版、2009年。
ピーター・ハンフリー著『ルネサンス・ヴェネツィア絵画』、高橋朋子訳、白水社、2010年。
ローナ・ゴッフェン著『ティツィアーノの女性たち』、塚本博、二階堂充訳、三元社、2014年。
ステファノ・ズッフィ著『ティツィアーノ 聖愛と俗愛』、森田義之、細野喜代訳、西村書店、2015年。
『日伊国交樹立150周年特別展 アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』、越川倫明監修、国立新美術館、TBS、2016年。
『日伊国交樹立150周年記念 ティツィアーノとヴェネツィア派展』、ジョヴァンニ・カルロ・フェデリコ・ヴィッラ、小林明子責任編集、東京都美術館、NHK、2016年。

受講上の要望、または受講上の前提条件

参考文献や資料を必要に応じて予習すること、復習として、その日に学んだ内容をノートや教材などをもとにまとめておくこと、それぞれ90分程度かかることが想定される。