慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
法制史
担当教員名
原 禎嗣
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 甲類・乙類 単位 2
キャンパス 日吉 共通開講学部 文学部、経済学部でも開講する
設置年度 2020 授業コード 72020
開講期間 I期 8/11~8/16 曜日・時間等 3~4限 14:15~18:00

授業科目の内容

日本近代法制史に関する概論的講義を行う。
 我が国は、過去に何回か大規模な外国法継受を経験した。そこには、他国の法制度を受け入れることで、自国の法や社会を進歩に導くという内政上の要求を満たすことは勿論だが、母法国と共通する文化的基盤を有する「先進国」として振る舞い、その国との外交関係の維持発展に繋げたいとの思惑も確かに存在した。
 本講義では、近世末期に我が国が経験した西洋法との接触から、既存の東洋的法文化との相剋、西洋的近代法体制の樹立までを概観する。具体的には、江戸時代後期の法制度を概説した後、明治初年から新政府によってなされた制度の改変や立法例を読み解き、我が国の歴史上最大規模の法継受の跡を辿りたい。
 明治の立法事業は、治安維持と治外法権撤廃というふたつの目的のため、刑事法分野が最も先行した。その後、基本法たる憲法、関税自主権との関連で整備が急がれたものの、曲折を経て最後に完成した民事法という順番で進んだ。そこで本講義においてもこの順番で論を進め、それぞれ立法における継受のかたち、何を受け入れ、何を受け入れなかったのかについても考察を加えたい。
 思うに、明治維新という政変を境に、我が国の社会は大きな変化を遂げたように見える。法制度についても同様であり、少なくとも維新後、江戸期の法は悉く廃され西洋風の法体系に取って代わられた。しかしながら、社会を統べるルールは一朝にして改変しうるものではない。新たな法の背景に見え隠れする前時代的なるもの、言い換えるならば「法感覚」「法意識」といった日本的特性が、制度の大規模な変革を乗り越えて繋がっている、と考えるほうがより自然であることが多い。そしてそれら特性の検討からは、法制史学のみならず、現行法の解釈、運用にあたっても重要な示唆を得ることができると考える。
 

第1回講義内容
受講上の諸注意

第2回講義内容
江戸期幕府法制の概観(基本法)

第3回講義内容
江戸期幕府法制の概観(刑事・民事法)

第4回講義内容
明治の国家体制の変遷

第5回講義内容
刑法の編纂(仮刑律・新律綱領)

第6回講義内容
刑法の編纂(改定律例・旧刑法)

第7回講義内容
刑事訴訟法の編纂

第8回講義内容
憲法の編纂(憲法思想)

第9回講義内容
憲法の編纂(編纂過程)

第10回講義内容
民法の編纂

第11回講義内容
復習

第12回講義内容
総括

その他の学習内容
  ・テキスト及び関連書籍、資料等を精読すること。

成績評価方法

レポートにより評価する。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

日本法制史Ⅱ―中世・近世・近代―/霞信彦・原禎嗣他 通信テキスト、法学部Ⅲ年度①配本 2012

参考文献

・霞信彦『矩を踰えて―明治法制史断章』(慶應義塾
大学出版会、2007年)
その他、参考となる文献は講義中適宜紹介する。

受講上の要望、または受講上の前提条件

講義前は教科書を充分に読み込み、講義後は講義で解説した資料の確認、熟読と理解を心掛けて下さい。