授業科目の内容

この授業の到達目標及びテーマは次のように示される。
（1） 国語科における教育目標、育成を目指す資質・能力を指導案の作成と模擬授業に生かすことができる。
（2） 学習指導要領に示された国語科の学習内容をもとに学問領域と関連させた授業を構想できる。
（3） 様々な学習指導理論を踏まえて具体的な授業場面を想定した模擬授業を行うことができる。
　そのために本授業においては、求め深めている自身の国語教育観のもとで、テキスト科目で習得している知識や熟読している学習材を、実際の授業を想定しながら教材として生かすための身体的な感覚を涵養する。まず、国語教員としての知識である国語に関する知識および国語の授業を展開するための知識を、対面授業に居合わす学習者同士で検討し合い、本授業を担い合う関係作りを目指す。その上で、お互いに国語教育観の修正を試みながら、教授者として模擬授業を行ってみて、また学習者の側にもなってみて、知識・理論に実践的な深みを与える。最後に、それまでの学びのプロセスをリフレクションとして図解化し、またそれをレポートとしてまとめる。学習者を評価するには教授者自身が自己評価できなければならないということを体験を通して実感する。
　したがって、教科教育法のスクーリング授業では、学習者が「先生」になってみて、「生徒」にもなってみて、実際の教室と同じ体験をすることが求めらる。そのために授業は、お互いが授業作りに責任をもって取り組むために参画的でなければならない。お互いがその参画者となって、「国語」の成り立ち、教材研究、指導方法、評価の問題等々を協働して考え、実践する。また、教育実習を前提にした模擬授業を行うこともこの授業に求められている。履修者の人数によって時間配分は変わるが、計画―実践―リフレクションというサイクルを二回は経験できるようにする。模擬授業を行うために考えるべきことは、次のようになろう。
　①「教材選択」と「教材研究」のありかたを考え、
　②生徒が主体になるための「言語活動」を構想し、
　③「質問」と「発問」の違いを明確に見極め 、
　④ 「自己形成的評価」のためのテスト問題の作り方を体得し 、
　⑤ 学びの継続性と「自己啓発」につながる学びのあり方を常に目指していく。
　多年にわたる中学校・高等学校での国語教員としての実務経験をこの授業にも生かして、机上の空論ではない講義を心がけたい。

第1回講義内容
〔1日目〕　 国語教育の基盤としての言語行為の成り立ちを協働して考える 「話す・聞く」と「読む・書く」を展開させるラベルとラベルトークを体験する

第2回講義内容
〔1日目〕　 国語教育の基盤としての言語行為の成り立ちを協働して考える 自己形成的な国語力育成のための発問ありかたを検討する

第3回講義内容
〔2日目〕　 今を生きるための言葉はどうあるべきかについて共同的に検討する 「生きる力」と「PISA型学力」という話題の言葉について検討する

第4回講義内容
〔2日目〕　 今を生きるための言葉はどうあるべきかについて共同的に検討する 高大連携の時代における国語力について検討する

第5回講義内容
〔3日目〕　 現代文テキストに即して論理と共感とを取り結ぶための方法論を実践する 文学的な文章を学習材とした模擬授業を行う

第6回講義内容
〔3日目〕　 現代文テキストに即して論理と共感とを取り結ぶための方法論を実践する 論理的な文章を学習材とした模擬授業を行う

第7回講義内容
〔4日目〕　 「話す・聞く」の授業をICTを生かせるように構想し実践する 「インタビュー」と「スピーチ」の模擬授業を行う

第8回講義内容
〔4日目〕　 「話す・聞く」の授業をICTを生かせるように構想し実践する 「ポスターセッション」と「説明」の模擬授業を行う

第9回講義内容
〔5日目〕　 古典テキストへの共感をもとに風土に生かされているという認識を共有する 散文的な古典テキストでの模擬授業を行う

第10回講義内容
〔5日目〕　 古典テキストへの共感をもとに風土に生かされているという認識を共有する 韻文的な古典テキストでの模擬授業を行う

第11回講義内容
〔6日目〕　 授業を通して得られた“経験知”を形にする 「ラベル図考」を共同作製しながらこの授業の自己評価項目をつくる

第12回講義内容
〔6日目〕　 授業を通して得られた“経験知”を形にする 「学びのプロセス図解」と「自己評価レポート」を作成し、“私の変容”を形にする

その他の学習内容
　　・kcc-channel等で通知する事前課題を行った上で出席すること

成績評価方法

毎回の「ラベルワーク」への取り組みと模擬授業（教案作成も含む）の内容、および課題（「学びのプロセス図解」「自己評価レポート」の作成）を総合して評価する。

テキスト（教科書）※教科書は変更となる可能性がございます。

・林義樹(編)『ラベルワークで進める参画型教育―学び手の発想を活かすアクティブ・ラーニングの理論・方法・実践 』(ナカニシヤ出版、2015年)
※本書は出版社での在庫がないため、大学を通じての販売は行いません。受講を許可された人は、書店・Webや図書館等で事前に入手してください。入手が難しい場合、事務局分室「夏期スクーリングテキスト係」(TEL03-3454-0776)まで連絡してください。

参考文献

・町田守弘(編)『実践国語科教育法 第三版「楽しく、力のつく」授業の創造』(学文社、2019年)(市販書採用科目「国語科教育法I」指定テキスト)
・『中学校学習指導要領解説「国語編」』および『高等学校学習指導要領解説「国語編」』文部科学省(文部科学省のホームページからもダウンロードできる)
・文部科学省検定済教科書「中学校国語」「高等学校国語総合」(出版社は問わない)

受講上の要望、または受講上の前提条件

教科教育法という科目は、知識の蓄積・整理という側面と、授業実践という側面とがバランスよく配列・展開されなければならない。したがって個々人ではなく履修者全員で学び合うことになる。遠隔授業であっても参画的に学ぶこと（スクーリング）を、豊かな協同経験=言語経験に高めることが大切である。そのためには、授業への主体的な参画意欲がなければならない。また、週一回の授業であれば宿題は翌週までにこなせばよいが、6日連続1日105分×２時間の授業では、毎回連続で課題をこなさなくてはならない。体調を整え、集中して取り組んでほしい。授業はZOOMを用いてリアルタイムで双方向的、多方向的に行っていくので、アクティブに楽しく取り組める。また、授業参画のためにGoogleスプレッドの共同編集を用いた「ラベルワーク」を行う。

講師の実務経験※実務家としての経験があり、その知見が授業に反映されている場合に、「あり」と表示されます

あり