慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
道徳教育論
担当教員名
山本 剛史
科目設置 教職科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 教職 単位 2
キャンパス 日吉 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード 82015
開講期間 I期 8/11~8/16 曜日・時間等 3~4限 14:15~18:00

授業科目の内容

〔授業の到達目標及びテーマ〕
 古来より哲学・倫理学が問うてきた道徳教育に関するいくつもの問題は,解消される類の問題ではない。道徳教育を実施するに当たっては,そのような問いに対して各教師が自覚的になったうえで教育目標や方法を設定する必要があると考えられる。各受講生が、その必要性を理解したうえで道徳教育に関する自分なりの具体像を描き出すきっかけづくりを目指す。
〔授業の概要〕
 中学校教育職員免許状取得を念頭に,「特別の教科 道徳」が中学校でも既に実施されていることを踏まえて、学校の教育活動全体を通じて行うものとされる道徳教育について、理論的考察と授業内での実践を往復しながら、とにかく批判的多面的に道徳教育を構想する能力の重要性の認識と当該能力の育成を目指す。

第1回講義内容
授業の概要説明+道徳の教科化について

第2回講義内容
教科化された道徳の現状と課題

第3回講義内容
日本道徳教育史(1)‐教育勅語

第4回講義内容
日本道徳教育史(2)-勅語以後の修身教育とその終焉

第5回講義内容
日本道徳教育史(3)‐全面主義道徳教育の概要と指導記録の検討

第6回講義内容
道徳性の発達をめぐる議論‐ルソーからピアジェへ

第7回講義内容
コールバーグ理論及び「価値の明確化」理論の実践および批判

第8回講義内容
読み物資料の活用・ICTの導入・子どもの哲学(P4C)

第9回講義内容
倫理学的考察(1)‐道徳教育における理性と感情,道徳の教授可能性

第10回講義内容
倫理学的考察(2)‐「自律」と「啓蒙」

第11回講義内容
倫理学的考察(3)‐「隣人愛」なら教え込みO.K?

第12回講義内容
授業内容の総括並びに課題レポート

その他の学習内容
  ・課題・レポート

成績評価方法

課題レポートにより評価する

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

映像資料に付随して、PDF等の資料も必要に応じて送信する。

参考文献

・宇佐美寛『「道徳」授業に何ができるか』(明治図書、1989年)
・松下良平『道徳教育はホントに道徳的か?』(日本図書センター、2011年)(市販書採用科目「新・道徳教育論」指定テキスト)
その他、発展的学習のための参考文献を以下に記す。
・パオロ・マッツァリーノ『みんなの道徳解体新書』(ちくまプリマー新書、2016年)
・越野章史『市民のための道徳教育 ‐ 民主主義を支える道徳の探求 ‐ 』(部落問題研究所、2016年)
・藤川大祐『道徳教育は「いじめ」をなくせるのか―教師が明日からできること』(NHK出版、2018年)
・藤川大祐『道徳授業の迷宮―ゲーミフィケーションで脱出せよ』(学事出版、2018年)
・勝村謙司、宮崎亮『こころの作文 綴り、読みあい、育ちあう子供たち』(かもがわ出版)2018年)
・木野正一郎『新発想!道徳のアクティブ・ラーニング型授業はこれだ』(みくに出版、2016年)
・堀越英美『不道徳お母さん講座: 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか』(河出書房新社、2018年)
・土屋陽介『僕らの世界を作りかえる哲学の授業』(青春新書、2019年)
・佟占新『戦後日本の道徳教育の成立』(六花出版、2019年)
・ローラント・ヴォルフガング・ヘンケ編集代表『ドイツの道徳教科書 5,6年実践哲学科の価値教育』(明石書店、2019年)
・プラトン『ラケス』(三島輝夫訳)(講談社学術文庫、1997年)
・浪本勝年ほか編『史料 道徳教育を考える(4改訂版)』(北樹出版、2017年)他多数。

受講上の要望、または受講上の前提条件

この講義は、道徳を自明のものとしその指導法のみに関心のある方には向いていません。
また、既存の教科書や教材にしばしば示されている道徳観の一面性や貧しさに違和感を覚えない方にも向いていません。
受講生の皆さんが、押し付け道徳とは異なる各々独自の道徳教育観を育む際の1つのステップになることを目指しています。

講師の実務経験※実務家としての経験があり、その知見が授業に反映されている場合に、「あり」と表示されます

あり