慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
教育学
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第1類 単位 3
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード T0EA003302

講義要綱

いわゆる狭義の「教育」は人間形成の過程(学び)への意図的な介入として定義づけることができます。したがって「教育学」とは、こうした「教育」という視座に立つことによって、そこで生ずる実践上の様々な問題や理論的諸問題を解決しようとして成立した「術」であり、またその反省としての学問と考えることができます。つまり教育学とは「教育問題」の科学なのです。この科目ではこうした考え方すなわち「学問知」の成立や構造を理論的かつ歴史的に考察することが履修上の目標です。概念史的に見て「教育」という概念はいついかなる状況下で成立したのか、またその意味は何かを問うことの上で、その説明の仕方には歴史上様々のものがあり、それらはいくつかの類型に分類することができます。それらの説明の歴史と類型を踏まえて、さらに私たちは、この「教育」をどのように説明したらより適切な説明であるのか、その理論的提案を吟味します。さらに、この理解に立って、教育学上の主要問題のいくつかを分析・吟味することになります。
 以上のような趣旨を充分に理解された上で、とりわけ現代の教育に思想的にも現実的にも直接の繋がりのある、17、18世紀に成立したいわゆる「近代教育理論」の形成と過程と理論構造の検討がこの科目の焦点となることは言うまでもありません。この世紀こそ「教育の世紀」と呼ばれるほど、子どもへの関心そして新たな教育への関心が増大し、また質的な発展を見せた時期はありません。この時期に誕生を見た近代教育学は多くの新しい示唆と観方を生み出しましたが、その一方で今日の近代教育批判にかかわる多くの問題性を潜在的に持っていました。したがってこの講義の履修を希望される方にはテキストの記述を参考に自からロックやカント、ルソーやヘルバルトさらにはデューイなどの言説を、古典的テクストを熟読吟味することを介してこうした問題性を考慮しながら批判的に考察して頂けることを期待します。

テキストの読み方

テキストをただなぞって読むだけではなく、テキストで言及されている原典や参考書を参照しつつ、
テキストで書かれていることの意味を自分なりに解釈しつつ読むようにして欲しい。
テキストで学んだ内容や、参考文献を参照して得た事柄を自分なりに再構成し、ノートを
作成することも一案である。

履修上の注意

教育は誰もが何等かの形で経験を有しているため、自己の体験や経験、考え方を
安易に投影しやすい。教育学は日常化している教育をいったん鍵括弧の中に入れ、
哲学、思想、歴史、そして心理学などの学問的アプローチを利用しつつ「教育
とは何か」を科学的分析的に探究する学問である。履修者にはテキストやテキスト
で言及されている原典、参考文献を丁寧に読み解きながら「自分語り」に終始しない
レポートを作成していただきたい。

関連科目

「教育思想史」

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

田中智志・今井康雄編『キーワード 現代の教育学』東京大学出版会、2009年
中内敏夫『教育学第一歩』岩波書店、1988年
村井実『「善さ」の復興』東洋館出版社、1998年
*絶版本は図書館で借りるか、インターネットの古書サイトで入手可能。

レポート作成上の注意

まず、レポート課題は何を問うているかを正確に理解すること。
 次に、テキストを丹念に読み込んだ上でその正確な理解に立って課題の問いに応じた学習活動(参考文献の読み込みなど)を展開し、課題の問いに則してレポートを作成すること。レポートの冒頭にレポート課題を改めて記入することは不要。