慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
古文書学
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第2類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード T0EA003401

講義要綱

古文書学とは、日本史研究の材料となる古文書について考える学問であり、日本史を学ぶ上での基盤となるものです。日本史に関する卒業論文の執筆を予定している学生は、是非とも履修してください。本テキストは文体が古風なため、読んで理解するにはいささか努力が必要かもしれませんが、古文書学の体系を要領よくまとめた名著として知られているものであり、別に示した参考書も積極的に活用しながら、学習を進めてください。

テキストの読み方

まず第一~三章にひととおり目を通した上で、このテキストの学習の中心となる第四・五章に進みます。第四章は古文書を主に形態学的観点から分析したもので、限られた紙数に要点がまとめられています。第五項については、佐藤進一『花押を読む』(平凡社)をあわせ読むと理解しやすいでしょう。第九項の中の「特殊用語」は、指定参考書として掲げた佐藤進一『新版古文書学入門』等に豊富に掲載された古文書の実例に即して見ると、頭に入りやすいと思います。第五章については、やはり『新版古文書学入門』の記述が詳しいので、適宜参照しながら学習を進めてください。

履修上の注意

日本史に関する一般常識がなくては、十分な学習が望めません。「歴史(日本史)」を既に履修していることが望ましい。

関連科目

歴史(日本史)、新・日本史概説I

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

古文書の種類については、佐藤進一『新版古文書学入門』(法政大学出版局、2003年)が詳しいので、是非とも参照してください。さらに進んで最先端の古文書学について知るには、2018年に国立歴史民俗博物館で開かれた企画展示の図録『日本の中世文書─機能と形と国際比較─』が、古文書の図版も豊富でお薦めできます。古文書を読む能力を養っていく上では、同図録のほか、『演習古文書選』全8冊(吉川弘文館)などの古文書写真集や各種史料集が有用です。史料の読解に用いる国語辞典としては『日本国語大辞典』(小学館)、漢和辞典としては『大漢和辞典』(大修館書店)、日本史辞典としては『国史大辞典』(吉川弘文館)が優れているので、近隣の図書館等で利用して下さい。くずし字辞典としては『五体字類』(西東書房)、『くずし字用例辞典』『くずし字解読辞典』(東京堂出版)などがあります。

レポート作成上の注意

古文書の実物は、各地の博物館に足を運んで探してみてください。東京・京都・奈良・九州(福岡県太宰府市)の各国立博物館や国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)・国立公文書館(東京都千代田区)、あるいは都道府県立の歴史博物館には常設で展示してある可能性が高いほか、市町村の博物館や寺社付設の資料館・宝物館にも古文書を所蔵・展示しているところがあります。また、毎年秋には奈良国立博物館で正倉院展、京都府総合資料館で東寺百合文書展が開かれ、鎌倉の建長寺・円覚寺では文化の日前後の風入れ(虫干し)期間に所蔵文書が数日公開されており、そのほか古代・中世の歴史に関わる特別展があれば普通は何か出陳されています。レポートの題材に取り上げた古文書の実物をどこで見たのか、レポートに必ず明記してください。
 古文書の様式については、前掲の『新版古文書学入門』を必ず参照してください。内容については、博物館等の図録だけでなく、古代・中世の歴史に関する通史(記述が詳しいものとしては講談社版『日本の歴史』や中央公論新社『日本の中世』など)や専門書、あるいは関係する地域の自治体が編纂した『~県史』『~市史』の類を探して、詳しく調べてください。
 レポート・試験ともに、学問の性格上、古文と漢文の読解力が要求されます。こまめに各種の辞典(国語・漢和・日本史・古文書など)を引くことで、そうした能力を身に付けてください。