慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
アメリカ文学研究Ⅱ
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第3類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード T0EA006301

講義要綱

〔授業の到達目標及びテーマ〕
 二十世紀アメリカ文学の古典的作品を原文で精読し、それらを学術的に論じる上で必要な研究手法を理解する。
〔授業の概要〕
 本科目では、実際にいくつかの事例研究を行い、テクストの内容、形式、意義、影響などに注目しながらどのように論じたらよいのかを学ぶ。登場人物の性格描写や物語設定、表現上の特質など、原文に即して作品中の具体的な証拠を集め(=テクストの精読)、それらを作品外の様々な事象と関連づけ(コンテクストの補充、歴史化)、文学研究の論文を書くための技術を体得する。
〔授業計画〕
 実際の作品を丹念に読むことなしに文学研究は成立しない。本科目では、二十世紀アメリカ文学の中から、異なる背景を持つ著者による短編、中編作品を取り上げ、作品解釈の技術を向上させつつ、二十世紀アメリカ文学がどのような主題や技法を重視してきたのかを検討し、他のアメリカ文学の作品を研究する上での土台を作る。指定教科書の構成は以下の通りである。
 第一章 Sherwood Anderson, “The Egg”
 第二章 Albert Maltz, “The Happiest Man on Earth”
 第三章 Flannery O’Connor, “Everything That Rises Must Converge”
 第四章 Saul Bellow, ”Seize the Day”

テキストの読み方

文学作品を「論じる」という行為の基本中の基本は、構成・技法・形式上の特質、登場人物の性格描写や人物造形、主題、文学史的価値などについて、作中の具体的な証拠(舞台設定や表現など)に基づいて論理的に説明し、自らの解釈を提示すること(=精読)である。作者は何を訴えようとしたのか、そのためにどのような工夫をしているのかを分析しながらテキストを読み進むこと。

履修上の注意

英語で書かれた作品の解釈を行うのであるから、英語の必要単位が全て取得済であることは、当科目の履修の条件として当然のことである。まとまった量の英語の読解に自信のない者には履修を勧めない。

成績評価方法

レポートの合格を前提として科目修得試験によって評価する。

参考文献

『アカデミック・スキルズ(第2版)――大学生のための知的技法入門』(慶應義塾大学出版会、2012)
『学生による学生のためのダメレポート脱出法 (アカデミック・スキルズ)』(慶應義塾大学出版会、2014)

レポート作成上の注意

「テキストの読み方」で強調した精読に加えて、これまでの先行研究を踏まえてテクストとコンテクストの両面から持論を展開すること(先行研究は漫然と引用するものではない。それをどのように応用するのか、批判するのか、補足するのか明確な意図を持って先行研究を活用すること。また、これ以上ない卓抜とした表現以外は先行研究の議論を自分の言葉で簡潔にまとめ、その書誌情報をMLAなどの引用スタイルに従い明記すること)。あらすじ紹介、感想文に終始しているレポート、歴史的な背景を羅列しただけのレポートやパラグラフ・ライティングができていない箇条書きのレポートなども、「論じる」という次元に達していないものとして、全て不合格とする。つまり、当科目のレポートを作成するに当たっては、原文を丹念に読み、そこに書かれた時代背景や作者の文学史的位置、作者が書いた他のテクストや他の作家との比較などを先行研究を駆使して行い、課題テクストの意義・特徴を具体的な証拠を提示しながら論理的に説明できていなければならない(「学術的レポート」は、執筆者の人生論や哲学を独白する場ではないことに注意!)。なお、科目試験の受験に当たっては、このレポート作成に求められるのと同様の勉強を教科書に掲載された他の全てのテクストについても行った上で臨むこと。