慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
日米比較文化論(総論)
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第3類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード T0EA008802

講義要綱

〔授業の到達目標及びテーマ〕
 本科目では、日米関係の文化的側面について、とりわけ19世紀後半から20世紀半ばの最初の重要な変動期に注目し、日本とアメリカのあいだの異文化理解はいかにして始まったのか、その歴史的経緯を学びます。同時に、習得した背景知識に基づいて、日米文化交流のダイナミズムを多角的に考察する力を養います。
〔授業の概要〕
 南北戦争後のアメリカは、国内においては急速な工業化がすすみ、国外においては南アメリカや太平洋への進出を図っていました。この領土拡張の気運のうちにペリーによる日本遠征はありました。一方の日本は、江戸幕府鎖国政策の下ながら、海外情勢への関心も高まりつつあり、アメリカの日本遠征は、政治外交においても社会経済においても、そして文化活動の面でも大きなインパクトを持つものでした。変動する両国がどのようにして出会ったのか、日本遠征・開国にはどのような背景があるのかを、指定テキスト『黒船異聞──日本を開国したのは捕鯨船だ』に沿って理解します。そして、指定参考書『グレイト・ウェイヴ──日本とアメリカの求めたもの』を参考にしながら、日本とアメリカはどのように互いの文化を理解あるいは誤解し、体験していたのかを、さまざまな具体的な事例や作品に即して考察します。過去の事例研究から得た知見はさらに、現代の日米文化交流を検討するとともに、身近な異文化交流体験を咀嚼する土台となるでしょう。
〔授業計画〕
 19世紀後半から20世紀半ばにかけての日米文化交流についての歴史事実を確認すること、ならびに、その文化交流において、日本とアメリカがどのようにして相対したのか、異文化交流をとおしていかにして「日本らしさ」や「アメリカらしさ」は形成されたかについて考えることが重要です。日米文化交流を多層的に分析する指定テキストと指定参考書を丁寧に読み解くとともに、言及されている人物や事例および文献についても調べ、日米文化交流について複合的に考察する力を磨きます。指定テキストは以下のように構成されています。
 序曲 日本開国の原点
 第1章 たった一人の日本遠征──ジョン万次郎の決意
 第2章 ペリー、日本遠征の途に
 第3章 久里浜上陸
 第4章 応接村は横浜村に
 第5章 雛祭りの出来事──神奈川条約締結
 第6章 ペリーの横浜村散策
 第7章 下田村──日米異文化体験
 第8章 黒船艦隊、箱館へ向かう
 終曲 一発の砲弾を放つこともなく
 また、指定参考書『グレイト・ウェイヴ──日本とアメリカの求めたもの』の構成は次の通りです。
 序章 地図
 第1章 太平洋上の二人の漂流者──ハーマン・メルヴィルとジョン万次郎
 第2章 貝殻コレクター──エドワード・シルヴェスター・モース
 第3章 天心の“ボストン茶会事件”──岡倉覚三とイザベラ・ガードナー
 第4章 涅槃の季節──ヘンリー・アダムズとジョン・ラファージ(1)
 第5章 日光の滝──ヘンリー・アダムズとジョン・ラファージ(2)
 第6章 火星からのメッセージ──パーシヴァル・ローウェルとメイベル・トッド
 第7章 しゃれこうべの山──ラフカディオ・ハーンとアーネスト・フェノロサ
 第8章 大統領の柔道部屋──セオドア・ルーズヴェルトとスタージス・ビゲロウ
 終章 一九一三年──ひとつの時代の終焉
 その他、以上の指定テキストと指定参考書を十分に理解した上で、レポート課題に取り組んでいただきます。レポート課題では、19世紀から20世紀の文学作品や随想を分析するとともに、歴史から学んだ知見を活かして、授業外で行った実際の異文化交流体験について考察を行ないます。

テキスト

川澄哲夫『黒船異聞─日本を開国したのは捕鯨船だ』有隣堂、2004年

テキストの読み方

指定テキストおよび課題指定参考書は、日米の多様な文化的・文学的交錯を多層的に考察するものです。学習の際には、まず基本的な歴史事実を確認するようにしましょう。そのうえで、日米関係のなかで日本とアメリカはどのように相対したか、それぞれの「日本らしさ」や「アメリカらしさ」はどのように形成されたか、という二点にとくに留意して考察を深めてください。

履修上の注意

テキストや参考書を読むだけではなく、言及されている人物や事例について調べたり、原著やほかの関連文献にも触れたりするように心がけてください。

関連科目

アメリカ文学、日本文学、比較文学、地域研究

成績評価方法

レポートの合格を前提として科目修得試験によって評価する。

参考文献

Christopher Benfey. The Great Wave: Gilded Age Misfits, Japanese Eccentrics, and the Opening of the Old Japan. Random House, 2004. 大橋悦子訳『グレイト・ウェイヴ──日本とアメリカの求めたもの』(小学館、2007年)

レポート作成上の注意

テキストや参考書から学んだことがらと、ご自身が考えたことがらを、きちんと分けて書いてください。文献を参照・引用した場合には、ご自身の文章と引用文とをきちんと区別して書き(引用部にはかぎかっこを付し、出典頁を明記する)、レポートの最後には参考文献表を付けましょう。