慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
刑法総論
科目設置 法学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 甲類・乙類 単位 3
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード T0EC000803

講義要綱

本科目では、主として犯罪論、すなわち、因果関係、故意・過失、未遂、共犯といった、あらゆる犯罪に共通する犯罪の一般的な成立要件に関する議論に関して学びます。判例を参照しつつ、自らの力で事例問題を解決する力を身に付けることを目的とします。
 第1章 刑法の存在理由と機能
 第2章 刑法の基本原則
 第3章 刑法、刑法典、刑罰法規
 第4章 犯罪論の基礎理論
 第5章 構成要件
 第6章 結果と因果関係
 第7章 不作為犯
 第8章 故意
 第9章 錯誤論
 第10章 過失犯
 第11章 結果的加重犯
 第12章 違法性と違法性阻却事由
 第13章 正当行為
 第14章 正当防衛
 第15章 緊急避難およびその他の緊急行為
 第16章 自己決定に基づく違法性阻却事由
 第17章 過失犯と違法性阻却事由
 第18章 違法性阻却事由の錯誤
 第19章 責任論の基礎
 第20章 責任要素
 第21章 未遂犯と実行の着手
 第22章 不能犯
 第23章 中止犯
 第24章 正犯と共犯
 第25章 共同正犯
 第26章 教唆犯と幇助犯
 第27章 共犯(広義)をめぐる諸問題
 第28章 犯罪の個数および競合
 第29章 刑罰とその種類
 第30章 刑罰の適用および刑罰の執行

テキスト

井田良『講義刑法学・総論』有斐閣、第2版、2018年

テキストの読み方

刑法総論は高度に体系的な学問であるため、全体像が理解できないと教科書の最初の方に書いてあることも十分に理解できないということが起こります。そのため、少なくとも、第20章までは石にかじりつく気持ちで通読してください。テキストを読んで難しすぎると感じた場合、下記の参考書を一度通読した後に再びチャレンジしてください。

履修上の注意

刑法総論と各論は密接な関連性を有しますから、レポート課題を解くにあたっては、刑法各論の知識も不可欠となります。

関連科目

刑法各論、刑事訴訟法、刑事政策学

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

井田良『入門刑法学・総論』(有斐閣、第2版、2018年)
成瀬幸典・安田拓人編『判例プラクティス刑法Ⅰ 総論』(信山社、第2版、2020年)

レポート作成上の注意

事例問題を解くにあたっては、まず課題のストーリーを読み、六法をめくりながら、刑法典の条文に該当しそうな事実を抽出しなくてはなりません。これにより、何罪の成否が問題となるかを明らかにします(刑法総論のレポート課題の場合、この作業はあまり難しくはありません)。
 次に、その罪の成否との関係でどのような法的論点が生じるのかを示します。課題には、刑法総論上の論点が複数隠れています。
 続いて、論点ごとに判例・学説を調査してその内容を要約し、それらのうちのどの考え方を支持するかを提示します。その際、当然、論拠を示すことが必要になります。
 最後に、自分の見解を課題の事例にあてはめ、何罪が成立するのかを明らかにします(まったく犯罪が成立しないケースもあるかもしれません)。
 以上のことを簡単にまとめると以下のようになります。
第1のステップ:事実の抽出
第2のステップ:問題提起
第3のステップ:既存の判例・学説の要約
第4のステップ:私見の提示・あてはめ
(以上の作業を論点ごとに行い、最終結論を出す)
 なお、刑法のレポート作成の際の文章作法については、井田良ほか『法を学ぶ人のための文章作法』(有斐閣、2016年)187頁以下が参考になります。