慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
哲学特殊
担当教員名
堤林 剣/梅澤 佑介/原田 健二朗
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 秋期メディア授業
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 法学部専門教育科目:政治思想論
設置年度 2020 授業コード M2077

授業科目の概要

本講義は3名の教員が共同担当し(堤林→梅澤→原田の順番で講義する)、政治思想の理論と歴史について多角的に考察することを目的とする。初回では政治思想(史)研究の方法論について検討するが、その際に3名の教員が各々の担当講義の主題と方法について説明する。第2回から第4回までは堤林が担当し、国家論の生成と展開の過程について論じる。第5回から第8回までは梅澤が担当し、シティズンシップ論の批判的継承の歴史について論じる。第9回から第12回までは原田が担当し、政治思想史における民族、文化、宗教・信仰といった問題の所在を考察する。

授業科目の内容

第1回講義内容
政治思想(史)の主題と方法について(堤林・梅澤・原田) 「政治的なもの」の特徴と「古典の読み方」について(堤林) 「市民」が「政治」について考えるということ(梅澤) 現代政治思想の位相(原田)

第2回講義内容
堤林担当 「死なない王」の誕生 13世紀から16世紀までの王権論に注目しつつ、国家論の基礎となる主権論の生成と展開について論じる。

第3回講義内容
堤林担当 「死なない国家」の誕生 主としてトマス・ホッブスの政治理論に注目しながら、国家の不死性を担保する理論がどのように形成されたかを明らかにする。

第4回講義内容
堤林担当 「死なない国家」の現在と未来 20世紀後半以降、国家が理論上のみならず事実上も消滅しなくなった理由について考える。また、国家の存立条件を明らかにすることによって、今後の国家の在り方について考えるためのヒントを模索する。

第5回講義内容
梅澤担当 「忠実な臣民」と「知的愛国者」 19世紀のイギリスにおいて、「抵抗の義務」論が登場することになった背景を概観する。特にその後のシティズンシップ論の出発点となったT・H・グリーンの思想史的意義と限界を明らかにする。

第6回講義内容
梅澤担当 自己統治のパラドックス ヴィクトリアニズムとグリーンの観念論を結合したバーナード・ボザンケのシティズンシップ論を紹介し、彼がいかなるロジックで国家による貧民救済に反対したのかを論じる。

第7回講義内容
梅澤担当 進歩の形而上学 ボザンケを真っ向から批判したL・T・ホブハウスの福祉国家論を取り上げ、シティズンシップ論の観点から、ホブハウスの歴史観に潜む問題を明らかにする。

第8回講義内容
梅澤担当 市民の義務としての反乱 ホブハウスのボザンケ批判を受容したハロルド・ラスキのシティズンシップ論の展開について論じる。特にグリーンの「抵抗の義務」論の批判的継承であるラスキの「反乱の義務」論に注目し、彼がホブハウスの「進歩の形而上学」をいかに乗り越えようとしたのかを見ることを通じて、「政治」と「歴史」の関係について考える。

第9回講義内容
原田担当 ネーションとナショナリズム nationという概念の歴史をたどった上で、近現代におけるナショナリズムをめぐる論点や思想について解説する。

第10回講義内容
原田担当 政治と文化――多文化主義をめぐって 人々の持つ文化的アイデンティティが政治に対して持つインパクトを歴史的に考察する。今日の西洋諸国における多文化主義政策についても概観する。

第11回講義内容
原田担当 政治と宗教――キリスト教を中心に 宗教という非政治的な要素が政治に対して及ぼすインパクトを考察する。政教関係の思想と制度に関する歴史的変遷をたどり、現代政治における宗教問題への理解を深める。

第12回講義内容
原田担当 戦争と平和――政治思想における国際関係 古代のポリスから近現代の国家にいたる政治共同体同士の関係のあり方に着目しつつ、戦争のあり方や戦争倫理に関する思想的変遷を歴史的にたどる。

成績評価方法

科目試験の結果、課題(レポート・小テスト)および授業の視聴状況による総合評価。

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

『市民の義務としての反乱――イギリス政治思想史におけるシティズンシップ論の系譜(仮)』/梅澤佑介 慶應義塾大学出版会 2020年5月刊行予定

参考文献

『ここから始める政治理論』/田村哲樹ほか 有斐閣 2017
『現代政治理論』新版/川崎修・杉田敦(編) 有斐閣 2012

授業期間中、授業支援システム(kcc-Track)上で担当者が資料やレジュメを適宜配布します。

受講上の要望、または受講上の前提条件

予習 配付資料や参考文献等の情報を必要に応じて予習してください(30分程度)。
復習 講義の内容をノートにまとめるなどして復習を行ってください(60分程度)。

課題(レポート・小テスト)

それぞれ1回ずつ実施。E-スクーリングの所定の画面にて、11月初旬と12月中旬に締切日と課題内容 をお知らせいたします。