慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
近代日本と福澤諭吉
担当教員名
西澤 直子
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 春期メディア授業
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 経済学部専門教育科目:近代日本と福澤諭吉
設置年度 2020 授業コード M2063

授業科目の概要

 福澤諭吉が日本の近代化に最も大きな刺激を与えた思想家の一人であることに異論を唱える者は少ない。しかしそれにもかかわらず、福澤が唱えた人間や社会の在り方は、その後の日本社会で必ずしも実現したわけではない。むしろ、その多くは未完のまま現代にまで残っている。福澤が提起した諸問題にどう答えるかは、実は現代のわれわれの課題と言ってもよい。
 その福澤諭吉の人と思想を、本講義では多面的に考察する。近代において人間はいかなる存在であるべきか。この点は、福澤の家庭教育観や教育思想に強く現れている。近代精神の根本に自然科学的な知性を見ていたことも、福澤の近代人観を考える上で無視できない。また、社会を形成する原点として近世社会の変革は必須であり、新たな男女や家族の在り方など近代社会における人間の在るべき姿を説き続けた。
 さらに、そのような人間観や社会観を基礎として、現実の政治に対しても発言をつづけた。あるいは、近代社会における法とは何かを示そうとした。人間が独立するための極めて重要な領域として経済についても論じた。また、経済活動の中心として近代経営を紹介し、経営の在るべき姿をも説いた。
 本講義は、通信教育部経済学部の講義であるが、上記したように多領域にわたる福澤の思想を、経済をも含めて総合的に考察する。専門化が進み、時として知性の蛸壺に陥りかねない今日、本講義が諸科学や諸思想の関連性を認識する一助となることを願っている。
本講義は、経済学部に設置されるが、その内容は、文学部や法学部の学生諸君にも開かれたものである。
 

授業科目の内容

第1回講義内容
総論:福澤諭吉の生涯と「独立自尊」小室正紀(経済学部名誉教授)

第2回講義内容
福澤諭吉の士族観 西澤直子(福澤研究センター教授)

第3回講義内容
福澤諭吉の女性論・家族論  同 上

第4回講義内容
福澤諭吉の教育思想(1) 米山光儀(教職課程センター教授)

第5回講義内容
福澤諭吉の教育思想(2)  同 上

第6回講義内容
福澤諭吉の家庭教育 山内慶太(看護医療学部教授)

第7回講義内容
福澤諭吉と医学  同 上

第8回講義内容
福澤諭吉の内政論 都倉武之(福澤研究センター准教授)

第9回講義内容
福澤諭吉の外交論  同 上

第10回講義内容
福澤諭吉と法文化(1) 岩谷十郎(法学部教授)

第11回講義内容
福澤諭吉と法文化(2)  同 上

第12回講義内容
福澤諭吉の経済論 小室正紀(経済学部名誉教授)

第13回講義内容
福澤諭吉の経営思想・近代企業論 平野 隆(商学部教授)

第14回講義内容
福澤諭吉と福澤山脈の経営者  同 上

成績評価方法

・試験の結果による評価
・課題(レポート)による評価
・小テストの結果による評価
・授業の視聴状況

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

近代日本と福澤諭吉/小室正紀編著 慶應義塾大学出版会 2013

参考文献

(全 章)『福澤諭吉著作集』慶應義塾大学出版会、2002~2003年
慶應義塾編『福澤諭吉事典』慶應義塾大学出版会、2010年
(第1 章)福澤諭吉『福翁自伝』(著作集・第12巻)慶應義塾大学出版会、2003年
(第2 章)小川原正道著『福澤諭吉の政治思想』慶應義塾大学出版会、2012年
(第3 章)西澤直子『福澤諭吉と女性』慶應義塾大学出版会、2011年
(第4 章)・(第5 章)
山住正己編『福沢諭吉教育論集』岩波文庫、1991年
山住正己校注『日本近代思想大系6  教育の体系』岩波書店、1990年
(第6 章)渡辺徳三郎『福澤諭吉 家庭教育のすすめ』慶應義塾大学出版会、2010年
(第7 章)『東京人(特集「日本細菌学の父 北里柴三郎」)』2012年7 月増刊
(第8 章)丸山真男『福沢諭吉の哲学』岩波書店、2001年
(第9 章)青木功一『福澤諭吉のアジア』慶應義塾大学出版会、2011年
(第10章)・(第11章)
安西敏三・岩谷十郎・森征一『福澤諭吉の法思想』慶應義塾大学出版会、2002年
(第12章)藤原昭夫『福沢諭吉の日本経済論』日本経済評論社、1998年
(第13章)福澤諭吉『民間経済録・実業論』(著作集・第6 巻)慶應義塾大学出版会、2003年
(第14章)宮本又郎『企業家たちの挑戦』(日本の近代11)中央公論社、1999年

受講上の要望、または受講上の前提条件

レポート提出までには、各自『福翁自伝』(参考文献にあがっている慶應義塾大学出版会のものでなくても可)を読むこと。

課題(レポート・小テスト)

 レポート1 回と小テスト1 回を実施。E-スクーリングの所定の画面にて、レポートについては4 月下旬、小テストについては5 月下旬に課題と締切日をお知らせします。