慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
文学
科目設置 総合教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 3分野科目/人文科学分野 単位 4
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2020 授業コード T0AA000401

講義要綱

【中国文学関係】
 漢詩は、3000年近くという長い歴史を持つ、中国古典文学の中でももっとも中心的な位置を占め続けてきた文学ジャンルです。本講義を通じて、奥深い漢詩の世界に対する理解を深めてもらいたいと思います。
 なお中国の古典文学は、どのジャンルにおいても、いわゆる西欧の文学(literature)の概念とは異なる独自の在り方、発展・変化の過程を有しています。そうした状況を、中国の文化・歴史的な背景や中国語の特徴と関連づけて考え、また他国・他地域の文学と比較してとらえることは、自らの「文学観」を相対化し、中国文学に対して多角的で深い視座を持つために非常に重要であると考えられます。本講義を通じて、そのような視座を養ってもらいたいと希望します。

【日本文学関係】
 近代は、人口が都市に流入した時期でもあります。文学に携わる人の中にも、生まれた土地を離れ、高校や大学などに進学した人が多くいます。都市に特徴的な、交通網の発達、産業構造や家族の変化、商店やデパートの発達、見知らぬ人同士の出会い、複数の言語などは、文学の形式や内容の変化と大きくかかわっています。故郷や自然が再発見され、憧憬として描き出されていくのも、都市の認識との対照によるものだと言えます。また、日本人が海外を訪れ、風景や文化の違いに思索を深めることもあります。都市は、人に何を考えさせるのか、文学を通して学んでゆきます。

【フランス文学関係】
 フランス文学は、特に近現代において、小説、詩、演劇、批評、思想といった文学のあらゆるジャンルで、人類の芸術の歴史から見ても突出した創造を達成しました。それは人間の感性、世界観、思想をおおきく広げ、深化させました。皆さんは今回の学習を通して、いくつかの作品を読むことにより、その一端に触れることになります。学習に何よりも大切なのは、まず自分自身の感覚・知性を全開にし、読書をひとつの「経験」にまで深めることです。そして、もしその作品に興味を持ったら、作者の生涯、時代背景、あるいは文体などについて文献を探索し、さらに作品の理解を広げるようにしてください。
 さてフランスの首都パリほど頻繁に文学のテーマとなり、絵や版画に描かれ、映画の舞台となった都市はありません。フランス革命後の民主化と都市化にともなって、パリは劇的に変化し、その結果、パリは文学や芸術において特権的な都市になります。こうしてメルシエ、バルザック、フロベール、ボードレール、ゾラ、ブルトン、アラゴン、ジュリアン・グリーン、モディアノなど多くの作家がパリを語りました。なぜそれほどまでにパリは表象されたのか、について考えてみてください。

【演劇関係・ドイツ文学関係】
 ドイツ語圏の文学は、哲学や音楽、また自然科学とも複雑に関連し合って、大きな表現の世界を作り上げてきました。また、ヨーロッパの中央部に位置しながら、長らく統一国家が形成されなかったことも、ドイツ語圏の文化をより一層複雑なものとしています。多様性の中の総合性、変転の中の普遍性を見つめる視線をもって、ドイツ語圏の文学に取り組んでみていただきたいと思います。

【英米文学関係】
 文学作品には、それが書かれた時代と社会の姿が否応なく反映される。作者がそれらをいかに理解し自分自身の問題とした上で、作品としてどのように再構成・表現したかに注目して欲しい。必ずレポート課題で指定したテーマを中心に据えること。自分の興味に応じて時代、作品を選ぶことになるが、この段階でよく調べ考え抜くことが良いレポートを書く秘訣である。読んで面白かった作品を選び、その面白さ、自分の興味を喚起した点について論理的に考察すること。それにあたっては、参考文献を渉猟し、作品とその時代、そして作者への理解を深めることも重要である。

テキストの読み方

【中国文学関係】
 テキストに加え、下記参考文献の①~③を読んで、中国文学の特徴を各ジャンルごとに(特に漢詩を中心に)把握すること。
 さらに、④を読んでそれぞれの特徴や各作品を文学史の観点から整理し、前後の時代の特徴と比較すること。また、特に漢詩については、⑤~⑧を読んで知識・理解を深めること。加えて、各詩人および作品についてさらに深く考察し、先行研究を調査するために、⑨を利用すること。

【日本文学関係】
 紹介した参考文献は、複数の作品を横断する形で書かれていますので、その中から作品を選び、必ず自分で目を通した上で、自分ならどのように解釈するかを考えてください。都市の歴史や地理などの事実については、文学に限らず、研究書などを自分で調査していくことも必要です。参考書には、日本文学で扱われた外国都市についての書籍も加えました。

【フランス文学関係】
 取り上げた作品をレポートの課題にそくして、ていねいに読んでください。

【演劇関係・ドイツ文学関係】
 通信課程の教科書は、講義の代替となることを目指しているものです。通常の読書とは異なり、通り一遍の理解をするだけでは足りません。スクーリングなどで講義を受ける時と同様、ノートを取りながら読み、内容を自分でまとめなおすことができるくらいの深い、包括的な理解を目指してください。その上で、「理解する」だけでなく、「身につける」レベルに達しなければ、試験に合格することはできません。すなわち、理解し、自分でまとめなおした内容を、しっかりと記憶し、自分の思考の中で応用できるまで学びを深めてください。

【英米文学関係】
 

履修上の注意

【中国文学関係】
 まずは参考文献を読んで、中国文学の特徴、とりわけ他の国・地域の文学と比較して顕著な特徴について、特に漢詩のジャンルを中心によく理解すること。 
 次に、自分が選択した詩人や文学者、作品にそうした特徴がどのように表れているのかについて、他の詩人・文学者との比較を含めて注意深く分析し、先行研究も踏まえつつ論じること

【日本文学関係】
 

【フランス文学関係】
 特になし。

【演劇関係・ドイツ文学関係】
 テキスト『近代ドイツ演劇』や『近代ドイツ小説』も通読しておくことをおすすめします。

【英米文学関係】
 

関連科目

【フランス文学関係】
 テキスト『フランス文学概説』、『フランス文学史Ⅰ』、『フランス文学史Ⅱ』の学習も役立ちます。

【演劇関係・ドイツ文学関係】
 文学研究は、視点の置き方次第で、あらゆる学問領域に関連付けることが可能です。哲学、歴史学、社会学、心理学、自然科学まで、問題意識を大胆に広げてみてください。

成績評価方法

【中国文学関係】
 科目試験による。

【日本文学関係】
 科目試験による。

【フランス文学関係】
 科目試験による。

【演劇関係・ドイツ文学関係】
 科目試験による。

【英米文学関係】
 科目試験による。

参考文献

【中国文学関係】
 ①吉川幸次郎『中国文学入門』講談社学術文庫、1976年
②興膳宏編『中国文学を学ぶ人のために』世界思想社、1991年
③前野直彬『中国文学序説』東京大学出版会、1982年
④前野直彬編『中国文学史』東京大学出版会、1975年
⑤小川環樹『唐詩概説』岩波書店(岩波文庫)、2005年
⑥吉川幸次郎『宋詩概説』岩波書店(岩波文庫)、2006年
⑦吉川幸次郎『元明詩概説』岩波書店(岩波文庫)、2006年
⑧松浦友久『漢詩─美の在りか─』岩波書店(岩波新書)、2002年
⑨『中国古典文学案内』日外アソシエーツ、2004年



【日本文学関係】
 前田愛『都市空間のなかの文学』1992年、ちくま学芸文庫
東郷克美・吉田司雄『近代小説〈都市〉を読む』1999年、双文社出版
和田博文ほか『言語都市・上海』1999年、『言語都市・パリ』2002年、『言語都市・ベルリン』2006年、いずれも藤原書店
金井景子ほか『浅草文芸ハンドブック』2016年、勉誠出版



【フランス文学関係】
 饗庭孝男(編)『パリ 歴史の風景』、山川出版社、1997年
エリック・アザン『パリ大全』、以文社、2013年
石井洋二郎『パリ 都市の記憶を探る』、ちくま新書、1997年
小倉孝誠『19世紀フランス 夢と創造』、人文書院、1995年
小倉孝誠『「感情教育」歴史・パリ・恋愛』、みすず書房、2005年
小倉孝誠『パリとセーヌ川』、中公新書、2008年
小倉孝誠『写真家ナダール』、中央公論新社、2016年
小倉孝誠『ゾラと近代フランス 歴史から物語へ』、白水社、2017年
イヴァン・コンボー『パリの歴史』、小林茂訳、白水社、2002年
澤田肇ほか(編)『パリという首都風景の誕生』、上智大学出版、2014年
アルフレッド・フィエロ『パリ歴史事典』、白水社、2000年
本城靖久『十八世紀パリの明暗』、新潮社、1985年
松井道昭『フランス第二帝政下のパリ都市改造』、日本経済評論社、1997年
宮下志朗『パリ歴史探偵術』、講談社現代新書、2002年



【演劇関係・ドイツ文学関係】
 手塚富雄・神品芳夫『ドイツ文学案内』岩波文庫、1993年
柴田翔『はじめて学ぶドイツ文学史』ミネルヴァ書房、2003年
池内紀『ぼくのドイツ文学講義』岩波新書、1996年
ハインツ・シュラッファー『ドイツ文学の短い歴史』(和泉雅人+安川晴基訳)同学社、2008年



【英米文学関係】
 浦野郁ほか編著『よくわかるイギリス文学史』ミネルヴァ書房、2020年(時代背景や有名作品のあらすじ、作者、典型的な読み方などを要領よくまとめている。)

レポート作成上の注意

【中国文学関係】
 指定の字数内で、はっきりと読みやすく書くよう心がけること。引用文は自分の文章と区別できるようにし、出典と引用箇所を明記すること。また、レポート本文中で参考文献を引用したり使用する場合は、参考文献の書誌情報に加え、必ずその引用ページも明記すること。

【日本文学関係】
 必ず、レポートの書き方についての文献を参照してください。参考にした文献については、最後に文献を羅列するのでなく、どこに何を使用したかの対応関係がわかるように、注番号で示してください。また、文献をまとめただけに終わらないように、自分の考察・意見を重視してください。

【フランス文学関係】
 レポートを作成する際は、参照した文献にあった要素を単にまとめるのではなく、それらの要素をいったん消化したうえで、自分自身であらためて作品についてよく考え、それを記述するよう心がけてください。参考文献からの引用のモザイクにならないよう注意してください。あくまで「自分なり」の視点で論じることが重要です。

【演劇関係・ドイツ文学関係】
 自分の書きたいテーマが何であるのか、どのような「問い」に対して、どういう「答え」を述べようとしているのか、つねに鮮明に意識しつつ、全体の構成を見据えながらレポートを作成してください(実際に、論文・レポートの内容の見取り図を書いてみるとよろしいでしょう)。
書こうとしているにテーマにどのような先行研究があるのかも可能な限り調べて、論述の冒頭において簡潔に言及するようにしてください。参考文献に記されている「見解」と、自分のそれとが混同されないように気をつけて、明晰かつ多層的な論述を心がけてください。

【英米文学関係】
1.レポート冒頭で、作家名、作品名、翻訳を用いるなら訳者名、使った版の出版社名、出版年を明記すること。
2.レポートの内容・論旨を端的に示す独自のタイトルを付けること。
3.末尾には完備した文献一覧をつけること。
4.作品の「あらすじ」は不要。自分の論を展開する上で不可欠な場合のみ、必要に応じて部分的に導入すること。
5.自分の考えと参考文献等から得た知識とは明確に区別し、後者を引用する場合はもちろん、咀嚼し要約などして用いる場合でも、それぞれの箇所で注を施し、出典を明記すること。
6.その他の点については、『塾生ガイド』掲載の「レポート作成上の注意」に紹介されているような手引き書を参考にすること。