慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
東洋史概説Ⅱ
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第2類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2021 授業コード T0EA005703

講義要綱

 高度にグローバル化が進展した現代社会を理解するためには、現代社会の枠組みのもとになっている「近現代」という時期を理解することが不可欠です。そこで、本科目では近現代中国の歴史の歩みを扱います。近代以前の東アジアは、近代西洋国家とは異なる一定の合理性に基づく制度や理念(華夷秩序や朝貢・冊封体制など)が存在していました。しかし、19世紀後半以降の対外関係の変化が、国民国家やナショナリズムといった近代西洋の経験から生まれた価値観を中国にももたらすことになりました。これによって、中国も国家の枠組みを再構築していかなければならず、伝統的な王朝国家から近代的な「国民国家」への転換が試みられました。この時期は、中央集権化や国民統合のプロセスを通して、中国の持つ多様性と複雑性が白日の下にさらされることになりました。それとともに、統治者の側と民衆や社会の側の両ベクトルからのナショナリズムが形成・展開されていくことになりました。こうしたナショナリズムの台頭は、中国が国際関係のなかに組み込まれたことや清末民初以来の社会変動と連動しており、グローバル化する世界における中国の政治的なビジョン、文化的な背景、社会構造の変化などをそこから読み取ることができます。
 以上のような多角的な視野をもって、中国におけるナショナリズムの生成と展開の過程などにも注目しながら、近代中国の歴史の歩みについて分析・考察してください。

テキストの読み方

指定教科書の附編「研究の手引き」及び参考文献①や②を参照しながら、指定教科書を通読して、現代にいたるまでの中国史の概観を把握してください。その上で、参考文献の③〜⑦などの概説書を読み、近代中国がどのような時代であったか、世界の動きと合せて理解し、⑧〜⑫などの関連書で課題にそったテーマを掘り下げてください。その他の参考文献は、テキスト③〜⑫を手掛かりにして自分で探してください。参考文献で紹介したもの以外も積極的に読むことが望ましい。

履修上の注意

現在の東アジア世界の枠組みのもとになっている東アジアと中国の近現代についての関心が求められます。

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

①礪波護・岸本美緒・杉山正明編『中国歴史研究入門』名古屋大学出版会、2006年。
②岡本隆司・吉澤誠一郎編『近代中国研究入門』東京大学出版会、2012年。
③久保亨・土田哲夫・高田幸男・井上久士・中村元哉『現代中国の歴史 第2版』東京大学出版会、2019年。
④佐川英治・杉山清彦編『中国と東部ユーラシアの歴史』放送大学教育振興会、2020年。
⑤吉澤誠一郎『清朝と近代世界─19世紀』(シリーズ中国近現代史①)岩波新書、2010年。
⑥川島真『近代国家への模索─1894-1925』(シリーズ中国近現代史②)岩波新書、2010年。
⑦石川禎浩『革命とナショナリズム─1925-1945』(シリーズ中国近現代史③)岩波新書、2010年。
⑧吉澤誠一郎『愛国主義の創成:ナショナリズムから近代中国をみる』(世界歴史選書)岩波書店2003年。
⑨坂元ひろ子『中国民族主義の神話:人種・身体・ジェンダー』岩波書店2004年。
⑩小野寺史郎『国旗・国歌・国慶:ナショナリズムとシンボルの中国近代史』東京大学出版会2011年。
⑪小野寺史郎『中国ナショナリズム:民族と愛国の近現代史』中公新書2017年。
⑫光田剛編『現代中国入門』(ちくま新書)、筑摩書房、2017年。

 

レポート作成上の注意

参考文献を手掛かりに、出来るだけ多くの文献を読んだうえで、自分の言葉で見解をまとめてください(参考文献で紹介したもの以外の文献も積極的に参照されることが望ましい)。その際に、どこからどこまでが他人の説(見解、考え)で、どこからどこまでが自分の見解(考え)なのかがはっきりわかるような書き方をしてください。一次・二次資料やWEBページを参考にした場合は、その都度、必ず註をつけて、文末に出典(著者、題名、出版社、出版年、頁数など)及び引用ページ(閲覧日時も必ず記載)を逐一示してください。