慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
哲学(専門)
担当教員名
横路 佳幸/石田 隆太
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 夏期スクーリング
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 経済学部、法学部でも開講する。
設置年度 2021 授業コード 52101
開講期間 I期 8/10~8/15 曜日・時間等 3~4限 14:15~18:00

実施形態

オンライン授業(オンデマンド形式)

オンライン授業(リアルタイム形式)

授業科目の内容

 本講義では、哲学の重要な一分野である形而上学において論じられてきた諸問題について考えることで、哲学そのものの理解を深めることを目指す。
 形而上学は、世界・実在の存在やその一般的な特徴を明らかにすることを目標とする。たとえば、「この世界には何が存在するのか」という問いは、形而上学の分野で提起される問題である。形而上学は、哲学を代表する分野であると同時に、ヨーロッパでは古代ギリシア以来長い歴史を持つ分野である。
 石田のパートでは、西洋哲学史を主な題材としながら、伝統的な形而上学において問題とされてきたことの中からトピックを厳選し、毎回異なるテーマを考察する。具体的には、形而上学とは何かという問題から始めて、神の存在証明、魂の不死、人間の自由、偶然性を考察対象とする予定である。
 横路のパートでは、現代形而上学の数あるトピックの中から、変化の問題(the problem of change)を取り上げる。変化の問題とは、「事物が変化する(例:緑色のバナナが黄色に変わる)とはいったいどのようなことか」を問うものである。これは一見するとあまりにも単純で「問題ではない」ように見えるが、変化という事象を適切に説明することは存外難しい。後半のパートでは、これまで考案されてきた様々な見解(性質の指標化説、副詞説など)が変化の問題をどのように解決してきたかを、なるべくわかりやすい仕方で考える。
-------------------------------------------------------------------
【必読】本講義は、前半(第1~6回)と後半(第7~12回)に分けられ、完全に独立した形で行われる。本講義を受講する者は、下記の前半と後半の注意事項をよく参照すること。

【前半:第1~6回(石田担当分)】
①授業形態は、オンデマンドによる資料掲載と、リアルタイムでの映像配信を併用する。なお、リアルタイムでの映像配信は録画され、授業後kcc-trackで視聴可能とする。

②履修者は、kcc-trackにアップロードされる講義資料を熟読すること。資料は事前にアップロード予定である。講義資料としては、いわゆるレジュメ形式ではなくて実際に話す調子に近い書き下ろしの文章を用いる。

③リアルタイムでの映像配信は、割り当てられた授業実施日程における2回目、4回目、6回目に相当する時間帯で実施する。この配信は、履修者による質疑応答を受け付ける時間とし、石田担当分に関する質疑応答はこの時間中にのみ受け付けることとする。講義自体は講義資料による。

④成績の評価方法は、レポート提出とする。レポートの形式・課題・締切などの詳細は改めて知らせることとする。

【後半:第7~12回(横路担当分)】
①授業形態は、オンデマンドによる映像配信及び資料掲載のみとなる。リアルタイムでの映像配信は行わない。

②履修者は、kcc-trackにアップロードされる授業映像を閲覧し、講義資料(pdfファイル)を熟読すること。資料は事前にアップロード予定である。

③質問がある場合は、kcc-track内の「教員/スタッフへの質問」を利用して尋ねること。質問内容は講義資料に関することであればどのようなものでも可。ただし、割り当てられた授業実施日程における第11・12回の時間帯のみに質問を送ること(それ以外は受け付けない)。

④成績の評価方法は、kcc-trackを利用したレポート提出とする。レポートの形式・課題・締切などは、映像配信及び講義資料内で指定する。

第1回講義内容
【形而上学とは何か】ガイダンスの後、哲学史の中で論じられてきた形而上学とはどのような分野なのかを考察する。

第2回講義内容
【神の存在証明①】哲学者たちによる神の存在証明にはどのようなものがあるのかを考察する。特に存在論的証明について。

第3回講義内容
【神の存在証明②】哲学者たちによる神の存在証明にはどのようなものがあるのかを考察する。特に目的論的証明について。

第4回講義内容
【魂の不死】哲学者たちが論じる「魂」について理解を深めるとともに、魂の不死に関する言説の哲学的意義を考察する。

第5回講義内容
【人間の自由】神の存在、魂の不死と並ぶ、形而上学の主要テーマである人間の自由を形而上学の問題として考察する。

第6回講義内容
【偶然性】必然性や可能性と対置されることの多い偶然性について、形而上学ひいては哲学の問題として何が言えるのかを考察する。

第7回講義内容
【変化の問題】現代形而上学のトピックとして、いわゆる「変化の問題」に焦点を当て、それがどのようなパズルであるかを考察する。

第8回講義内容
【問題の解決(1)】変化の問題への解決策として、性質の指標化説を考察する。

第9回講義内容
【問題の解決(2)】変化の問題への解決策として、時間的部分説を考察する。

第10回講義内容
【問題の解決(3)】変化の問題への解決策として、副詞説を考察する。

第11回講義内容
【問題の解決(4)】変化の問題への解決策として、メレオロジカルな本質主義と消去主義を考察する。

第12回講義内容
【まとめ】第6回から第11回の総括

その他の学習内容
  ・質疑応答を講義時間の随時受け付ける。

成績評価方法

レポート

テキスト(教科書)※教科書は変更となる可能性がございます。

プリントを適宜配布する

参考文献

よくわかる哲学・思想/納富 信留・檜垣 立哉・柏端 達也 編著 ミネルヴァ書房 2019
現代存在論講義II——物質的対象・種・虚構/倉田 剛 新曜社 2017
四次元主義の哲学——持続と時間の存在論/セオドア・サイダー 春秋社 2007
近代哲学の精神——西洋形而上学の六つの大テーマと中世の終わり/ハインツ・ハイムゼート 法政大学出版局 1995
形而上学——その概念の批判的概観(増補版)/安藤 孝行 勁草書房 1965

受講上の要望、または受講上の前提条件

予備知識は特に必要としません。