慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
哲学
科目設置 総合教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 3分野科目/人文科学分野 単位 4
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0AA000502

講義要綱

哲学の歴史は学問の中では最も古く、多くの人間が解決に悩んだ問題の歴史です。哲学を学ぶには、「問題」の方に力点をおくやり方と、「歴史」の方に力点をおくやり方があります。どちらのやり方にもそれなりの利点がありますが、この講義では、前者のやり方をとり、哲学的問題とはどのような問題なのか、それを解決するためにはどのように考えればよいのかを、実際の問題を扱いながら考えて行きます。その際に強調したいことは、哲学は科学を中心とする現代の理論的営みと無関係なものではないということです。したがって、この講義が目指すのは、現代に生きる私たちがそれぞれの生活の中で生じる哲学的な問題に直面したとき、それを解決する方法や手懸りを提供することです。

テキストの読み方

テキストをどのように読み進めるかはきわめて重要です。そこでこのテキストの読み方について説明します。このテキストは論証の部分と、歴史的経緯や状況の説明の部分とからなっています。事件や事実を叙述する場合と、その背後のからくりや原因と結果の関係を推理する場合は大きく違っています。叙述の代表は小説や報道記事です。何が何時どのようになったかという報告は、素直に読むだけで事の経緯がわかりますから、考えながら読む必要はありません。映画やテレビドラマが面白いのは筋の展開や心理描写にあり、それらは考えなくてもわかります。一方、論証の代表例は数学の定理の証明です。シャーロック・ホームズの推理も論証の一つです。数学の定理や名探偵の推理はしっかり考えないとわかりません。このテキストはこれら二つの異なる部分、つまり論証部分と叙述部分からなっていることに注意してください。読んでいる部分が論証なのか、叙述なのかをまず確認してください。いずれの部分かによって読み方が違ってきます。論証部分はかつて数学のテキストを読んだときのことを思い出しながら、その時と同じように読んでみてください。時間をかけてゆっくり読まなければなりません。途中でわからなくなったら先に進むのではなく、前に戻らなければなりません。何度も前のページを見返すことが必要になります。一人で読む場合、このような読み方は一方的に辛抱強さを要求しますから、ついいい加減になったり、読み飛ばしたりしてしまいます。辛抱強く、何度も読み返す、わかるまで頑張る、といった根気が求められます。これに対して、叙述の部分は日本語さえわかれば大抵苦労なしに理解できます。正確に理解することを心掛ければまず心配は要りません。用語や人名が不明ならそれを調べる程度で済みます。でも、自分が正しく内容を理解したかどうかの確認は叙述の部分の方が厄介で、誤解しないよういつも注意しなければなりません。論証部分はわからない場合にはわからないという自覚が必ずあり、わからないことがはっきりわかります。さらに、このテキストのもつ特徴は(問)があちこちにあることです。問は必ず解答してください。テキストの内容が理解できたかどうかの目安になります。テキストが二つの異なる部分をもつことを念頭に置きながら丁寧に読み進め、必ず「わかった」、「理解した」という確信がもてるまで何度も読み直してみてください。

関連科目

哲学から個々の学問が生まれていったことを考えれば、すべての科目が哲学に関連していると言っても過言ではありません。テキストの内容に対応する科目は何かを常に意識しながら学ぶと個々の研究を通じて哲学が理解できる筈です。実際に関連の強い科目は論理学と科学哲学です。論理学は推理推論するために知っておかなければならない事柄ですし、科学哲学は哲学の個々の分野の一つです。

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

野矢茂樹『哲学の謎』講談社現代新書、1996年
柴田正良『ロボットの心』講談社現代新書、2001年
戸田山和久『知識の哲学』産業図書、2002年
西脇与作編著『入門 科学哲学』慶應義塾大学出版会、2013年

レポート作成上の注意

特に注意してほしいことは、教科書や参考書に書かれている事柄をまとめるだけのレポートにならないようにすることです。もちろん、教科書や参考書で理解したことを前提としなければなりませんが、その上で、あなた自身はどう考えるのかということを中心に書いてください。他方、教科書や参考書から学んだことをすべて無視して、自分の考えだけを書くという、逆の誤りにおちいることも避けてください。また、自分はこう考えると述べるだけでは、レポートにはなりません。必ず、なぜそう考えるのかという理由や根拠を挙げてください。レポートの書き方については、本書「学習の手順」を参考にしてください。