慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
社会心理学
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EA007003

講義要綱

テキストは大きく2部構成となっている。第1部は「社会を作り、その中で暮らす」をテーマに、配偶と家族、依頼と説得、利他と協力、リスク、キャリア形成、健康といったトピックについて扱っている。第2部は「影響しあい、よりよい社会を目指す」をテーマに、社会的勢力と認知、メディア、世論調査・ランキング、普及・流行、環境配慮、防災といったトピックについて扱っている。どちらかといえば第1部は社会における個人の意識や行動を扱い、第2部は社会からの影響や社会的課題を扱っているが、この2つは相互に関連しあっている。社会における様々な現象や課題を本テキストがすべてカバーしている訳でなく、主なトピックを選んで社会心理学的に解説したものであるが、全体を一通り読むことにより、社会現象の理解や課題の解決について社会心理学からどのようにアプローチしたらよいか学習できるようになっている。また、同じ理論が複数の章で何度も登場することがある。このことから1つの理論が様々な現象の理解に役立つことも理解できる。テキストで扱われているトピックを起点として、各自が日常生活を送る中で関心をもつ様々な出来事(現象)について、テキストで説明されているのと同様に社会心理学の知見を用いて理解・考察することができるようにすることが、本講義の目的である。

テキストの読み方

テキストの序文および目次を読んだ上で、全12章を一通り読んでみること。最初はあまり細部にはこだわらず、関心のある章から読んでいってもよい。全体を読み進めていくと、複数の章の間で同じ理論が出てくるように、各章相互の関連性に気づけるはずである。ページをめくりながらトピック同士のつながりを意識し、社会心理学の理論で説明される様々な現象を各自の日常生活で経験する具体例に置き換えて考えてみてください。この時点で興味をもった参考書も活用し、現実の世界で起きている様々な出来事の原因や課題の解決方法について、先行研究(テキストや参考書で紹介されている理論や考え方)で考察できるようにすることを目指します。理論を単に理論のまま理解しようとするのではなく、常にその理論で現実のどのようなことが説明できるのかを理解するようにしてください。
 各章の内容を一通り学習したら、章末の演習問題を解いてみてください(実際に書いてみてください)。課題の内容は、本文で説明された内容の理解に関すること、本文の内容を現実の社会で起こっていることを通じて理解すること、の2つに大きく分けられます。うまく解答が思い浮かばないのであれば、もう一度、上記のテキストの読み方に従って、再度学習をしてください。

履修上の注意

テキスト以外に社会心理学関係の参考書を少なくとも1冊は選び、読んでみてください。概論的なものでも、興味のある社会心理学の各論のものでも構いません。ただし、巻末に引用・参考文献が掲載されている学術書を選んでください。

関連科目

心理学A、心理学B

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

堀毛一也・竹村和久・小川和美(共著)『社会心理学:人と社会との相互作用の探求』培風館、2017年
池田謙一・唐沢穣・工藤恵理子・村本由紀子(共著)『社会心理学』有斐閣、2010年
山田一成・北村英哉・結城雅樹(編著)『よくわかる社会心理学』ミネルヴァ書房、2007年
北村英哉・大坪庸介(共著)『進化と感情から解き明かす社会心理学』有斐閣、2012年
スミス, J.R.・ハスラム, S.A.(編著)/樋口匡貴・藤島喜嗣(監訳)『社会心理学・再入門─ブレークスルーを生んだ12の研究』新曜社、2017年

レポート作成上の注意

日常生活や社会でみられる様々な課題について、社会心理学によって説明できることを目標とします。したがって、日ごろから対人関係、集団や社会の問題について目をむけ、そうした問題がなぜ生じるのかを考えてみるようにしてください。そうした人々の行動は、とらえ方によって複数の見方ができます。複数の理論やモデル、効果で説明されるというのはある行動が多面的に捉えられるということです。レポートを作成する際は、「取り上げる事例の紹介」と「事例に関する社会心理学的解釈」は明確に区別できるようにしてください。そのために設問は(1)と(2)に分けて設定してあります。それぞれについて、指定された文字数の範囲内で説明してください。
 テキストや参考書の中には、社会心理学の理論によって説明される具体例が掲載されていることもあります。そうした例を使用する際には、必ず引用箇所を明示し、それに類似した自分が経験した事例についても理論的に説明するようにしてください。インターネットで知識を得る場合も同様です。インターネットの活用も大事なことですが、出典を明示した上で引用は最小限にとどめ、必ず自分自身のコメントをつけるなど考察の材料となるようにしてください。この課題を考えるにあたり、社会心理学以外の参考書を用いることもできますが、その場合も社会心理学的な考察を必ず加えてください。中には、現実の社会的問題について、私見を述べるような内容も見受けられますが、私見を述べる場ではありません。あくまで社会心理学の知見を用いて説明することが課題の目的です。
 本文中で文献を引用する場合には,テキスト(例えば,『新・社会心理学』)をオリジナルの研究の紹介として引用するのではなく、テキストにおいてどのように先行研究が引用されているのかを注意深く参照し(例えば,「フェスティンガーによれば(Festinger, 1957)」とか,「山岸(1990)は…」のように),テキスト本文の記載の仕方に倣って本文中で文献を参照してください。引用文献のリストには,テキストのどこを参照したのかを付記した上で,オリジナルの研究を挙げるようにしてください。どんな研究者がいつ行った研究なのか、本文中でオリジナルの研究を参照することでレポートの読み手にとってそれが理解できるような書き方を身につけるようにしてください。


引用文献リストの記載例
Festinger, L.  (1957)  A theory of cognitive dissonance. Row Peterson & Company. (末永俊郎監訳『認知的不協和の理論』誠心書房、1965) (『新・社会心理学』 p.180より)
山岸俊男 (1990) 社会的ジレンマの仕組み-「自分1人ぐらいの心理」の招くもの サイエンス社

※本文中で引用されている研究(上記の例だと、本文中にあるFestinger(1957))を引用したら、各章末にある引用文献のリストでその出典が何であるかを確認し、レポートの末尾にテキストと同じように掲載する。本来ならば、その文献を実際に読むべきところであるが、このレポートでは、それがテキストのどの箇所に説明されているかを示せばよい。