慶應義塾大学通信教育部シラバス

科目名
教育社会学
科目設置 文学部専門教育科目 授業形態 テキスト科目
科目種別・類 第1類 単位 2
キャンパス - 共通開講学部 -
設置年度 2022 授業コード T0EA007103

講義要綱

 現代日本社会における教育を主たる対象として、社会的背景と関連させて教育的事象を捉える能力を身につけること、これが本科目の目標です。社会学が対象とする教育(現象)の多様さと広がりを確認した上で、それらは一見個々別々の事象ですが、近代社会という共通土台の上に形成され、成立している社会的事象であることを理解することが重要です。
 加えて、その近代社会が行き着いた先に現代社会があり、近代の完成・成熟としての現代という時代変化への着目も大切です。教育社会学は教育現象を対象とする社会学ですが、教育という社会現象から現代社会の成り立ちを理解する社会学でもあります。よって、制度としての学校教育に対象が限定されず、若者の生き方、就職(学校から仕事への移行)、子育て、階層の再生産、ナショナリズムなどについても教育社会学の対象となるのです。
 序章 教職と教育社会学
 第1章 学校という制度と時間・空間
 第2章 学校で「教える」とは、どのようなことか
 第3章 教師と生徒の関係とは、どのようなものか
 第4章 学校教師とはどのような存在か
 第5章 若者は今をどのように生きているか
 第6章 〈移行〉の教育社会学
 第7章 子育て・教育をめぐる社会空間・エージェントの歴史的変容と今日・未来
 第8章 学校の階級・階層性と格差社会
 第9章 国民国家・ナショナリズムと教育・学校
 第10章 教育改革時代の学校と教師の社会学

テキスト

久冨善之・長谷川裕編『教育社会学(教師教育テキストシリーズ)[第二版]』学文社、2019年

テキストの読み方

テキストは初版(2008年刊)ではなく、第二版(2019年刊)を使用してください。テキストは複数の研究者によって執筆されていて、テーマも多岐にわたっています。しかし、テキストを通じての問題意識は共通しています。社会階級・階層と学歴については、主としてテキスト第8章の中で述べられています。厳密にいうと社会階級と社会階層は異なる概念ですが、テキスト第8章での使い方に倣って、並記して使って構いません。ただし、参考文献と読み比べる際には注意が必要です。

履修上の注意

必修として履修しておくべき科目は指定しませんが、社会学と教育学の基礎知識があるとよい。これら2つの学問に関連する科目をそれぞれ1つ以上履修した上で、本科目を履修することを推奨する。

関連科目

上記の「履修上の注意」を参照。

成績評価方法

科目試験による。

参考文献

1. 日本教育社会学会編『教育社会学事典』丸善出版、2018年
2. 苅谷剛彦・濱名陽子・木村涼子・酒井朗『新版 教育の社会学』有斐閣、2010年(特にPart4「学歴社会」の変貌と「格差」)
3. 吉川徹『学歴分断社会』筑摩書房、2009
4. 橋本健二『新・日本の階級社会』講談社、2018
5. 松岡亮二『教育格差』筑摩書房(ちくま新書)、2019年
6. 竹内治彦編『グローバリゼーションの社会学(第2版)』八千代出版、2001年(特に第3章と第4章)


 6つの参考文献については、次のように利用するとよい。日本教育社会学会編(2018)はレポート課題に関連する、第Ⅲ部第9章「階層と教育」以外にも、テキストで論じられている理論や概念の理解に役立つ。苅谷他(2010)、吉川(2009)、松岡(2019)はデータにもとづいた議論を展開している。教育社会学的視点の特徴を理解するのにも役立つ。橋本(2018)は階層論とは異なる視座をもつ階級論について理解するのに役立つ。竹内編(2001: 3章4章)は本科目担当者による階層論と教育拡大(高学歴化)の社会学的解説である。

レポート作成上の注意

1.課題は3つに分かれていますが、(1)(2)(3)が関連付けられることが求められていますので、一連の課題であると考えてください。また3つは混在させず、個に記述してください。(1)で学んだ教育社会学の理論や概念を(2)で取り上げる問題と関連づけして記述してください。(3)では(1)の理論や概念を使い、(2)で論じた問題に位置付けて、ご自身について振り返ってください。


2.レポート執筆ではテキストの読解を中心に記述することが求められています。テキストを理解したうえで、さらにテキストの理解を深めるために参考文献で議論の補強を行い、また、関係するデータや実例との照らし合わせをしてください。テキスト各章末にある参考文献も活用してください。これらの作業の成果を含めてレポートを執筆してください。